ガイドコメント
ブライアン・イーノをプロデューサーに迎えて仕上げた、シンプルながらヴァイタリティあふれる注目のアルバム。ニュー・スタイルのアレンジで、これまでとは一味違ったサウンドを披露する。
収録曲
01BEAUTIFUL DAY
何もかも失った主人公がやがて希望を見出すナンバー。シンセを使った幻想的な序盤から、ギターやコーラスをフィーチャーした力強い山場へと流麗に展開。構成力に磨きのかかった王道U2節がここに。全英1位、全米21位。
02STUCK IN A MOMENT YOU CAN'T GET OUT OF
自殺したマイケル・ハッチェンス(インエクセス)にボノが、人生の辛さなんて一瞬のこと、だから自殺なんて……と語りかける鎮魂歌。ブラスや鍵盤を使ったフィリー・ソウル調メロディは、従来のU2作品にはない新味。
03ELEVATION
曲のあちらこちらで強いエフェクトのかかったサウンドが轟くデジタル・ロック・ナンバー。『ポップ』の流れを引き継いだビートは鋭く攻撃的で、意味よりも韻を優先したような抽象的歌詞ともども楽曲に歯切れのよさがある。
04WALK ON
ビルマの民主化運動指導者、アウン・サン・スーチー女史を、ポジティヴな歌詞と力強いサウンドで応援。歌詞に“オール・ザット・ユー・キャント・リーヴ・ビハインド”とあるとおり、同アルバムのテーマ・ソングだ。
05KITE
情感あふれるボノの歌唱と、汽笛風のフレーズも盛り込んだエッジの独創ギターが光る。バンドの魅力の根幹となる要素を大きくフィーチャーした傑作メロウ・ナンバーだ。親離れ、子離れを連想させる歌詞は、ボノとエッジの共作によるもの。
06IN A LITTLE WHILE
彼らの歴史を振り返っても記憶にないほど、リズム隊のたたずまいがR&B調のナンバー。エッジのギターはもちろん、普段どおり歌い上げている風のボノも、ほんのりと黒っぽく新鮮。歌詞は愛妻に向けたボノのラブ・レターにも読める。
07WILD HONEY
ダニエル・ラノワもギターで加わっての直球フォーク・ロック・ナンバー。キャリア20年の彼らが、まだまだ引き出しが空でないことを新機軸で証明。軽やかなアコースティック・サウンド、ハーモニーが格別の心地良さだ。
08PEACE ON EARTH
アイルランドで起きた爆弾テロに触発されたナンバーで、歌詞には犠牲者たちの名も登場。平和を与えてくれぬ神への、敬虔なキリスト教信者ボノからの異議申し立てだ。ピースフルなサウンドには、イーノの実験性も少々あり。
09WHEN I LOOK AT THE WORLD
シンセやサウンド・エフェクトを交えたトリップ・ホップ風アレンジのナンバー。深みのある音空間の果てに、ボノの歌やエッジのギターがまろやかな余韻を残しながら消え行くさまが印象深い。自問含みの歌詞にも深みがある。
10NEW YORK
フランク・シナトラ「ニューヨーク・ニューヨーク」の続編を意図したナンバー。同市の“人種のるつぼ”的魅力を描いた歌詞は、その後の“9.11”により新たな意味が加わる。ややサスペンスフルなサウンドもそれに拍車をかける。
11GRACE
気が滅入るような出来事の絶えない世界に対し、結局のところ我々の拠りどころは愛なのだ、と言い聞かせているような歌詞。派手さを抑えた柔らかいサウンドに、ほんのりと漂うレイドバック・テイストがたまらなく美味なナンバー。
12THE GROUND BENEATH HER FEET