ガイドコメント
新世代R&Bシーンにまたひとり期待の女性シンガーが登場。弱冠20歳ながら、作曲、演奏、プロデュースとマルチな才能を発揮している。ジャーメイン・デュプリが参加。
収録曲
01PIANO & I
アルバム『ソングス・イン・Aマイナー』の冒頭を飾るのは、静かに流れるベートーヴェン「月光」のピアノの調べで、アリシア本人の演奏によるもの。厳かなコーラスにヒップホップ調のポエトリー・リーディングが加味された次曲「ガールフレンド」への橋渡し的な小品。
02GIRLFRIEND
オル・ダーティ・バスタード「Brooklyn Zoo」をネタに使用した、ジャーメイン・デュプリのヒップホップ的アプローチが絶妙のさじ加減のソウル・チューン。彼の女友達に嫉妬する不安な心模様を、アリシアは深みあるヴォーカルで見事に表現している。
03HOW COME YOU DON'T CALL ME
ケリー“クルーシャル”ブラザーズとの共同プロデュースによる、ジャジィでセッション風なソウル・ナンバーで、オリジナルはプリンス。“なぜ電話をくれないのかしら”と別れを嘆く女性の心情を歌うが、曲調は極めてオーソドックスなソウル・マナーを踏襲している。
04FALLIN'
セルフ・プロデュースによるシングルは、恋焦がれて心乱されていくさまを、アリシアの情感あふれるヴォーカルが描き出したソウルフル・チューン。ソウル・クラシックス・マナーをしっかりと携えた、表現力と記名性の豊かなヴォーカルが素晴らしい。
05TROUBLES
美しくも憂鬱にさえ感じるマイナーなメロディ・ラインが重苦しくのしかかるような、R&B調のミディアム・チューン。“悩んだってなるようにしかならない”と歌うコーラスに、中盤で鳴るサイレン風の効果音が儚く切なく響く。
06ROCK WIT U
ストリングスとフルートのアレンジにローズ・ピアノの演奏と、アイザック・ヘイズが八面六臂に活躍するクラシカル・ソウル・チューン。グルーヴィなギター、性急なストリングスやピアノにソウル・マナーをたたえたヴォーカルが絡むさまは、スリリングの一言。
07A WOMAN'S WORTH
スペクタクル・ムービーのような壮大なイントロから“本物の男は本物の女の価値を否定する訳がない”と歌い上げるミディアム・ソウル・チューン。女性の価値を高らかに宣言し、男の胸元に突きつけるような詞とヴォーカルには、凄みさえ感じる迫力がある。
08JANE DOE
元エクスケイプのキャンディとの共作曲。メアリー・J.ブライジ風のヒップホップ調サウンドにヴォーカルが走る作風だが、ソウル気質が伝わるのは彼女の存在感ゆえ。彼との仲を壊そうとするジェーン・ドゥ(訴訟当事者に用いる仮名)について歌うシリアスなR&Bチューン。
09GOODBYE
最愛の人に別れを告げられ、たじろぎ、落胆するさまを歌ったR&Bチューン。ブライアン・マクナイトをプロデューサーに迎えた、美しく繊細なピアノの旋律に儚さが漂うミディアム・バラードで、フェイド・アウトのすがるようなヴォーカルがやるせない。
10THE LIFE
エキゾティックなアレンジが印象的なミディアム・チューン。“生きることは闘い、生きるために努力する”と人生への絶望を感じながらも、愛する人を求めるという希望を見出そうとする心境が綴られている、民族風のミステリアスなナンバーだ。
11MR.MAN
プロデュース&アレンジのジミー・コージエをデュエット・シンガーにフィーチャーしたR&Bチューン。Mr.マンを出し抜くことはできないと思いながら、互いに惹かれ合っていく男女の機微を、クラシカルなストリングスをバックにしっとりと歌う。
12NEVER FELT THIS WAY
ブライアン・マクナイトのオリジナルを、アリシアのピアノ弾き語りスタイルでカヴァーしたインタールード・トラック。哀愁あるピアノの旋律に物思いにふけるヴォーカルが映え、“必要なのはあなただけ”と寄り添うように歌うラブ・ソングだ。
13BUTTERFLYZ
アリシアが奏でる透水度の高いピアノの旋律と、その音色に寄り添うスパニッシュ風ギターが、あふれだす感情を高ぶらせる。“天にも昇る気持ちを抑えきれない”と喜びをくれる運命の人への舞い上がる想いを切々と歌ったラブ・バラード。
14WHY DO I FEEL SO SAD
友達同士であったはずの二人に立ちはだかる別離に困惑する心境を、自らを諭すように噛み締めて歌うスロー・バラード。焦る心とは裏腹に時の経過を告げるドラムや、胸を締めつけるような哀愁漂うギターの音色に絡む物憂げなヴォーカルが秀逸。
15CAGED BIRD
ケリー“クルーシャル”ブラザーズとの共同プロデュースによるスロー・チューン。籠の中の「見せ物」の小鳥を一躍スターとなった彼女に対する周囲の目と重ねたような詞が意味深だ。優しいタッチの飾らないシンプルなピアノが、かえって苦悩を吐露しているよう。
16LOVIN' U
素敵な恋人へ贈る、南部風の陽気さが感じられるラブ・バラード。冒頭の微笑む声やオルガン、ストリングス、コーラスの上を自由に泳ぐヴォーカルから、リラックスした感じが受け取れる。アルバム『ソングス・イン・A・マイナー』収録のシークレット・トラック。
17REAR VIEW MIRROR
別の男に乱心していた過ちをバックミラー越しに遠のいていく景色のように見やって、これからの恋人との愛を貫く決意を歌う。80年代風のアタッキング・ビートや低音のボトムを従えて、ノスタルジックなアクセントを施した疾走感あふれるダンサブル・チューン。