ガイドコメント
ビル・ブルフォードとジョン・ウェットンを迎えてロバート・フリップのワンマン・バンド的性格が強く出た73年のアルバム5作目。エスニック風メロディと音の錬金術的手法が味わえる名盤だ。
収録曲
01太陽と戦慄パート1
民族音楽を思わせる玄妙な序盤がじわじわと不穏さを増し、怒涛のアンサンブルへと突入。新加入のミューアとクロスは、早くもパーカッションとヴァイオリンで大活躍。奇抜で目まぐるしい曲展開が、行き先不明で刺激的だ。
02土曜日の本
ジョン・ウェットンの歌声が映える美しいバラード・ナンバー。ギターとヴァイオリンがメロディアスなフレーズを紡いでいるが、ときおり被さってくるサウンド・エフェクトにより、楽曲のところどころに奇妙な味わいが出ている。
03放浪者
リリカルではあるが、同時に荒涼としたムードも備えている奥深いナンバー。ウェットンの歌い上げるような歌唱の人気が高いが、歌唱終了後の終盤で弾かれるフリップのギター・ソロもなかなか魅力的だ。
04イージー・マネー
フリップの物質批判が込められたナンバー。変拍子が多用された超個性的な楽曲で、ミューアが繰り出す多彩すぎる打楽器プレイが、楽曲の実験性、独創性を最大限まで高めている。残響を抑え気味にした録音も好結果につながっている。
05トーキング・ドラム
緊張感が増幅する静謐な序盤。反復に徹したベース・プレイを横目に、ヴァイオリンとギターはインタープレイの応酬を開始。各パートの熱量急上昇にともない、楽曲の緊張も早々と臨界点へ。最後の最後までスリリングな展開をみせている。
06太陽と戦慄パート2
変拍子フレーズ全開のギターを先頭に、全パートが鋭利な攻撃性を発揮し、同時にきめ細かで繊細な芸術性も発揮してみせる圧巻のナンバー。この曲の変拍子リフは、映画『エマニエル夫人』の音楽に無断で引用されたことでも有名だ。