ガイドコメント
可憐なルックスと心の琴線を振るわせる歌声で、一躍スターダムに登りつめたシンガー・ソングライター、ジュエル。98年の『スピリット』に続く3rdアルバムが登場。
収録曲
01STANDING STILL
フォーク・ギターのストロークをバックに淡々と美しいメロディを歌い上げる、寂寥感たっぷりのフォーキーなナンバー。切なさや儚さ、焦りにも似た切迫感を歌詞に込めて歌われるヴォーカルからは、強い意志が感じられる。
02JESUS LOVES YOU
天に向かって高らかに歌われる神聖かつ荘厳なメッセージと対照的にバックに流れるのは、どこか土臭いフォーク・ギターのシンプルなコード・ストローク。遠く離れたこのふたつを有機的に結びつける彼女のヴォーカリストとしての力量を十二分に発揮させた1曲だ。
03EVERYBODY NEEDS SOMEONE SOMETIME
シンプルな8ビートのロック・ドラムの上を、ほとんどメロディを廃した投げやりな、怒りをぶつけるような言葉の羅列をたたきつけるように歌う。ヒップホップとは違う、ボブ・ディランに似た雰囲気を感じさせる力強いナンバーだ。
04BREAK ME
心から愛する男性に向けて歌い上げる究極の愛のメッセージ。「♪こんなにステキなのは初めて」は、男性なら一度は言われてみたいセリフだろう。ギターのつま弾きをメインにしたシンプルなアレンジの上で静かに優しくメロディを紡ぐ、バラード・ナンバーだ。
05DO YOU WANT TO PLAY?
ブラック・コンテンポラリーなリズムとビートを意識した、メロディアスなポップ・ソング。リスナーのお腹の中でうねるように聴こえるベース・ラインと透き通るような彼女の歌声のコントラストが何とも絶妙だ。
06TILL WE RUN OUT OF ROAD
淡々と静かに優しく歌い上げるメッセージ・ソング。新たな生活と旅立ちに向けての応援歌でもあり、諦めの気持ちや過去へすがる弱さなど、さまざまな感情が盛り込まれた歌詞が印象的。何度聴いても深みが漂っている。
07SERVE THE EGO
不協和音的に奏でられるギターのコード・ワークが不穏な雰囲気をまきちらす。強い意志を秘めた彼女のヴォーカルもどこか狂気をはらんでいるようにも聴こえる。重々しく、どこか毒々しい、スロー・テンポのヘヴィな1曲だ。
08THIS WAY
2ndアルバム『ディス・ウェイ』のタイトル・チューンにもなっている、爽やかかつ軽快なポップ・ソング。物悲しくどこか切ない情念を、抑えながらもしっかりと伝えていくヴォーカルが魅力。彼女の実力が遺憾なく発揮されたメロディの美しい1曲だ。
09CLEVELAND
カントリー風のギターとリズミックなドラム、R&B風のスライド・ギターが融合した、どこか「アメリカ的」な土臭い雰囲気を持ったメロディアスなナンバー。しかしながら、サウンドの印象を一変させるほどの彼女の美しい歌声によって、清楚な曲へと変貌させているのは見事。
10I WON'T WALK AWAY
不幸を一身に背負ったようなひとりの女性の心情を、アルペジオで淡々と弾き続ける不穏なギターをバックに、感情を抑えたヴォーカル・ワークで表現。メッセージを伝える方法は力の限り歌い上げるだけはないとでもいいたげな、絶妙の加減が特出モノのメッセージ・ソング。
11LOVE ME JUST LEVE ME ALONE
ボトルネックを用いたスライド・ギター・サウンドから幕開け。途中からは荒々しいギター・ストロークをバックに、古き良きアメリカンなブルース・マナーのヴォーカルを聴かせるハードな1曲。嗅覚を刺激するような強い芳香性を持った、クセのあるナンバー。
12THE NEW WILD WEST
まるで西部劇の世界に迷い込んだような歌詞世界がこの曲のキモ。ギターを中心としたヘヴィなアレンジと、言葉を吐き出すかのようなヴォーカルが絡み合い、強い意志を持った開拓者(パイオニア)の気持ちになれるかのような、不思議な魅力を持った1曲。
13GREY MATTER
嫌いと好き、行けと行くな、互いに相反しながらも人間の心は不思議なモノでしっかり同居させてしまう。そんな理屈抜きの感情を静かに淡々と歌い上げている。爪弾くギターだけを頼りに、センシティヴに表現していくナンバー。
14SOMETIMES IT BE THAT WAY
ミクロからマクロへ、神々の世界から1杯のカモミール・ティーへ。現実と虚構を行ったり来たりする壮大な歌詞を、3連符のギター・ストロークに乗せて表現する。歌詞というよりも現代詩に近い物語を、感情を込めて高らかに歌い上げる。
15A LONG SLOW SLIDE
毒々しいヘヴィなコードと彼女の美しい歌声。どちらも正反対に位置するはずなのに、なぜかぴったりマッチング。あるようでない、とらえどころのないメロディに、一回聴いただけでは理解が難しい抽象的な詞を乗せて歌われる、痛烈なメッセージ・ソング。