ミニ・レビュー
聴けば聴くほど味が出る、とはまさにコレ。88年から2001年までに発表されたシングル曲を年代順にセレクトし、再構築した企画盤だけに、彼らの深い歴史とその触れ幅の広さを体感させる仕上がりだ。哀愁の[2](2)、激情の[2](9)、宮本の歌声はやっぱりイイ!
ガイドコメント
ニュー・アルバムの発表を控えてリリースされるベスト盤。88年の1stシングル「デーデ」から2001年「孤独な太陽」まで、全24曲を収めた2枚組。アルバム初収録の5曲がうれしい。
収録曲
[Disc 1]
01デーデ
記念すべきデビュー・シングル曲となった、“お金”をテーマにした軽快なロックンロール・チューン。“友達も頭脳も要らない、金があればいい”と一貫して歌い上げているが、真のメッセージはまったくその逆のことだと考えられる。
02ふわふわ
タイトルとは裏腹に毒気に満ちたロック・ナンバー。“うるせぇ だまれ ボケなす”から“金”や“ウソ”の連呼まで、徹底的に悪態をつく歌詞と宮本浩次の説得力ある絶叫が魅力。あざけ笑うような“ハハ”が実におかしい。
03おはよう こんにちは
歌い出しから大絶叫を繰り広げるミディアム・スローのロック・チューン。重めのリズムとさらに重たい粘り気のある宮本浩次のヴォーカルが魅力。ステレオをふっ飛ばしそうなほどの破壊的スクリームでストレスを発散させてくれる。
04浮雲男
89年8月リリースの4thシングル。タバコを吸う男をテーマにしたのどかなナンバーで、破裂音と巻舌が心地よい“ぷかり〜”の繰り返しと最後の1フレーズだけ絶叫するサビが聴きどころ。よく聴くと楽曲はほとんど演歌に近い。
05男は行く
グルーヴィなファンク・ロック・チューン。宮本浩次の絞り出すような絶叫をはじめ、ノイジーなギター・ソロやそこに割って入るラフなスキャットなどが特徴的。「男よ行け!」と高らかに叫ぶエレカシ流応援ソング。
06曙光
8分の6拍子基調の重いロック。歌いはじめの“あ〜”から圧倒的な存在感を発揮し、次第に絶叫の割合が増えていく宮本浩次のヴォーカルを満喫できる7分強の大作。一人暮らしの男性の共感を得そうな熱い歌詞も魅力的。
07奴隷天国
ドラムのみのイントロで始まる軽快なロック。リスナー全員を敵にまわすかのように徹底的に罵倒し倒す極めて攻撃的な歌。最後の“何笑ってんだよ”“そこのおめえだよ”は楽曲を聴いている1人1人に吐き捨てているようだ。
08極楽大将生活賛歌
アップ・テンポのロックンロール・ナンバー。「はい、いってみよー」や「ワン・トゥー、さん、ハイ」などの掛け声など、どこまでマジメでどこからふざけているかが明確でない点が味わいどころ。「スーダラ節」を彷彿とさせる能天気さがいい。
09この世は最高!
アグレッシヴなギター・リフで始まる軽快なナンバー。自暴自棄とも受け取れる人生の讃歌で、バンド全体のキメ・フレーズをバックにしたギター・ソロなどが特徴的。7thアルバム『東京の空』のオープニング曲。
10悲しみの果て
96年10月発表のシングルより。「悲しみの果てに素晴らしい日々を送っていこう」というささやかで前向きなメッセージを、飾り気のない至極シンプルな歌詞で歌うエレカシの新境地。
11孤独な旅人
大きく方向転換したポニー・キャニオン移籍後第2弾となるシングル曲。落ち着いたテンポの心地よいポップ・ロック・ナンバーで、叙情的な言葉の並ぶ歌詞からは宮本浩次の高い感受性と文学的才能が垣間見られる。
12明日に向かって走れ
9枚目のアルバム・タイトルとなったミディアム・ナンバー。弱い部分も見せる正直な男の心情を綴った歌詞と哀愁を感じさせる美しいメロディが魅力。初期の毒気に満ちた攻撃的な男っぽさとはまったく異なる味わいだ。
[Disc 2]
01戦う男
97年3月発表のシングルで、ハードなギターとリズムによるロック・チューン。男たちへの硬派なメッセージをロマンティックにうたい、かつ雄叫びをあげてさらに加速してゆく。
02今宵の月のように
ドラマ主題歌に採用され、97年に大ヒットを記録し、メロディアスな弾き語りにぴったりのナンバー。ラフなフォーク調で、明日への希望をぶっきらぼうに歌ってみせる風情が魅力的だ。
03風に吹かれて
哀愁漂うミディアム・ロック・ナンバー。卒業や上京、恋人との別れなど、さまざまなシチュエーションに当てはまる懐の深い歌詞が魅力。エンディングのドラム・フレーズが“見慣れたいつもの町”を過ぎる列車を連想させる。
04はじまりは今
98年5月発表の16枚目のシングルは、冒頭から切ないメロディが繰り広げられる哀愁系ロック・チューン。ほとんどビブラートをかけない宮本浩次の真っすぐなヴォーカルや、なにげなく楽曲に厚みを与えるオルガンなどが印象的。
05夢のかけら
印象に強いキャッチーなサビ・フレーズで始まるミディアム・ロック。宮本浩次の若干かすれる高音域の歌声が魅力的だ。今は醒めてしまった恋人との関係を振り返った詞の「君の笑顔だけ胸に抱き働いている」というフレーズが感動的。
06ヒトコイシクテ、アイヲモトメテ
マイナー基調のミディアム・ロック。素朴だが芯のあるAメロから味わい深い高音が魅力のBメロ〜サビまで、宮本浩次のヴォーカルを堪能できる1曲。歌謡曲的要素の入った耳なじみの良いアレンジも好印象。
07愛の夢をくれ
99年1月リリースの通算19枚目のシングル曲。グループ・サウンズを彷彿とさせるシンプルなギター・フレーズで始まるマイナー・ロックで、宮本浩次ならではのストレートな言葉と人間臭いヴォーカルが魅力だ。
08真夜中のヒーロー
99年4月リリースの通算20枚目のシングル曲は、重厚なギター・リフで始まるロック・ナンバー。控えめな宮本浩次のヴォーカルや楽曲全体に漂う怪し気な雰囲気、スネア・ドラム4発のブレイクなどが特徴的。
09ガストロンジャー
バリアフリー移籍第1弾シングルとなった渾身のヘヴィ・ナンバー。当時、放送禁止という噂すら流れた話題作で、言いたいことを徹底的に怒鳴り散らす反骨精神全開の歌詞と初期にも勝る圧倒的な迫力のヴォーカルが魅力。
10so many people
メジャーとマイナーを交互に繰り返すAメロが特徴的なロック・チューン。圧倒的な存在感のヴォーカルをはじめ、極めてポジティヴな印象のサビや軽快なグルーヴを醸し出すスリリングなベースなど、聴きどころが満載。
11コール アンド レスポンス
アルバム『good morning』からシングル・カットされたロック・ナンバー。“死刑宣告”という強烈なフレーズと宮本浩次のJ-POP屈指の美しい絶叫が魅力。ラストの“楽しもうぜ”にすべてが集約されている。
12孤独な太陽
涙腺を刺激する美しいメロディと男のセンチメンタリズムが込められた歌詞が印象的なナンバー。つぶやくように歌う姿がそんな男の心情を巧みに表現している。2001年3月発表。