ミニ・レビュー
単純なタテ乗り8ビートにはない音楽的な快感を、母国の植民地政策の置き土産でもある“スカ”に見いだしたコヴェントリーのパンク小僧はエラかった。演奏こそつたなくとも、後続の世代に与えた影響は絶大。“白黒混成”を地でいくジャケットもいい。★
ガイドコメント
2トーン・スカの立役者だったスペシャルズ。エルヴィス・コステロのプロデュースで79年にリリースされた洋楽史上の名盤を新装復刻。初のリマスタリングに加え、映像2曲もプラスした。
収録曲
01A MESSAGE TO YOU RUDY
ジャマイカ出身のレゲエ・ヒーロー、ダンディ・リヴィングストンの1967年作品をカヴァー。あっけらかんとしたビートに乗せてRudy(街の不良)たちへ真摯なメッセージを放った本曲は、“社会派”というスタンスの彼ららしい選曲。
02DO THE DOG
R&Bの巨匠、ルーファス・トーマスをスカ調に料理した究極の逸品。鬱屈した若者たちを怒涛のビートで挑発しまくるパンキッシュなダンス・ナンバーは、スペシャルズらしい陽気な空気を保ちつつも、腐った英国社会をバッサリと斬る。
03IT'S UP TO YOU
60'sモッズとジャマイカン・レゲエが融合した、2トーンならではのセンスが際立つ秀作。ゆるいビートながらもそこには、“俺たちは、我が道行くぜ”という確固たるメッセージが据えられ、彼らの力強い意思表明の歌でもある。
04NITE KLUB
「俺、このままでいいのかな〜」という、失業中の若者の悶々とした心持ちを綴った痛快スカ・パンク。英国社会への辛辣な視線を陽気なジャマイカン・リズムに乗せてあっけらかんと放つ、まさにスペシャルズの作風の醍醐味がここにある。
05DOESN'T MAKE IT ALRIGHT
「肌の色が違うというだけで、俺達は争うべきじゃない」。ピースフルなカリビアン・ビートに乗せて放つは、まさに“2トーン”のコンセプトそのもの。黒人と白人が同居するスペシャルズならではの、真摯なメッセージを含んだ重要作。
06CONCRETE JUNGLE
“コンクリート・ジャングル”に生きる都会のギャングの綱渡りな生き様を描く、痛快パンク・チューン。スカを基調としつつも、つんざくようなギター・リフと怒涛のビートには、初期のクラッシュに通じる王道のパンク・エナジーがみなぎる。
07TOO HOT
キング・オブ・スカとも称されるジャマイカの雄、プリンス・バスターをカヴァーした、まさに王道を行くロックステディ。生きるか死ぬかの切羽詰まった人生を、かくも緩いビートでクールに描くとは。粋なルード・ボーイの真髄を聴け!
08MONKEY MAN
アイアイア〜イ♪とくれば「お猿さんだよ」と続きたくなるのが我ら日本人であるが、本作はスカのカリスマ、トゥーツ&ザ・メイタルズをカヴァーした由緒正しきジャマイカン・ナンバー。血も沸くスカ・ビートをとくとご堪能アレ。
09(DAWNING OF A) NEW ERA
パンク野郎が求めるのは、いつだって“現状打破”。ワーキング・クラスの鬱屈した日常と、それを打ち壊そうとするポジティヴィティ。両者のせめぎあいが、パンクとレゲエの激突という形で見事に表現された、初期の秀逸なオリジナル・ナンバー。
10BLANK EXPRESSION
かわいこちゃんに冷たくされて、トボトボとバーを後にする青年の情けない呟きを、緩〜いカリビアン・ビートに乗せたトホホなロック・ステディ。どこをとってもヨレヨレな味わいが、なんだかとっても切なくて、いとおしい。
11STUPID MARRIAGE
陽気なロック・ステディに乗せて離婚裁判の実況中継をしていく、ブラック・ユーモアたっぷりな作品。ラフネックなる裁判長に扮するMCネヴィルの役者ぶりはかなり面白いが、そこには男と女の愚かしさが鋭く描かれていて、思わず苦笑い。
12TOO MUCH TOO YOUNG
“人口増加に対し、社会福祉が追いつかない”といった趣旨のことを、かなりお下品な表現を用いて世に叩きつけるダマーズ節の真骨頂。ユーモアとシニカルさのギリギリのバランスがいかにもスペシャルズな、社会派ロック・ステディ。
13LITTLE BITCH
「One,two!」の掛け声がパンク魂に火を点ける、怒涛のスカ・ナンバー。モッズ・テイストの洗練されたアレンジと、とめどない日常描写の裏に込めた社会への疑問符。サウンド、リリック、両者において初期の傑作といえよう。
14YOU'RE WONDERING NOW
ジャマイカのデュオ、Andy&Joeyのヒット曲をカヴァー。全編テリーとネヴィルのハーモニーで聴かせる、シンプルゆえにその美学が際立つ極上スカ。締め括りのアカペラは、物静かな中にもアフロ・スピリットがにじむ、感動的な響き。
仕様
※〈CDエクストラ〉内容:ギャングスターズトゥ・マッチ・トゥ・ヤング・ビデオ