ミニ・レビュー
英NMEが大プッシュしていたシドニー出身のニルヴァーナ・チルドレン、ヴァインズのファースト。わずか94秒のタイトル曲(1)や2分の(6)といった曲を聴けばその影響は明白だが、それだけに終わらない清冽なポップ・チューンなど、技ありのメロディが魅力だ。
ガイドコメント
オーストラリア出身の4人組ギター・ロック・バンド、ザ・ヴァインズのデビュー・アルバムを日本先行発売。“ニルヴァーナ+ビートルズ”と絶賛される彼ら。あふれる若さはまばゆいばかり。
収録曲
01HIGHLY EVOLVED
イントロがなく突如始まるこの曲は、1stアルバムから1枚目のシングル・カット曲。サビに入るとともにニルヴァーナからの影響を感じさせるノイジーなギターと抑制された歌のバックで聴こえる絶叫が、曲をディープに響かせる。
02AUTUMN SHADE
アコースティック・ギターのストロークとともにビートルズを思わせる優しい歌い方とメロディ・ラインを響かせ、歌詞にあるように「秋の日陰に滑り込む」という表現にふさわしい曲。中盤に聴こえるピアノの旋律も美しい。
03OUTTATHAWAY
出だしや曲の随所で炸裂するギター・ノイズとクリーンなトーンのギター・バッキング。けだるそうなヴォーカルの後に続く狂気を帯びた叫び。人間の二面性を表現したような1stアルバムからの3枚目のシングル曲。
04SUNSHININ
ノイジーなギターに絡んでくるシンプルなベース・ラインに、80年代のニューウェイヴ〜ブリット・ポップの匂いを感じるダンサブルなナンバー。曲中で炸裂する狂気を帯びた叫びは、ライヴならば一気にテンション上がること間違いなし。
05HOMESICK
ピアノのイントロに導かれて全体に緩やかな空気が広がっていくバラード。全編を通してビートルズの影響を色濃く感じさせるアルバムからの4枚目のシングル・カットとなったこの曲は、ビートルズに匹敵するほどの完成度を誇る出来栄え。
06GET FREE
ハードなギター・サウンドと破裂しそうな叫び声が絡み、ニルヴァーナを彷彿とさせる破壊力満点のロックンロール・チューン。こうした曲であってもメロディ・ラインがしっかりとしているところは、このバンドの持つ底力だ。
07COUNTRY YARD
緩やかな曲調に身を委ねて目を閉じると広大な田園地帯を歩いている……、そんな気持ちにさせてくれる。サビのメロディではビートルズ、ブリティッシュ・ポップ好きにはたまらない王道サウンドも垣間見られるナンバーだ。
08FACTORY
スカ調のギターをバックに、明るく、ヒネリも効いたメロディ・ライン。ビートルズやニルヴァーナからの影響が強いことで有名なこのバンドだが、この曲ではキンクス的な要素が強く出ている。何よりメロディの良さが際立つ曲。
09IN THE JUNGLE
力強いハードな演奏から始まり、中盤で突如テンポを落として怪しい雰囲気に持っていく展開が秀逸なナンバー。しかし、メロディ・ラインの良さと隠し味的に入るハンド・クラップの効果か、全体にポップな空気が漂う。
10MARY JANE
イントロと間奏で響く浮遊したギターのアルペジオ、歌に絡むアコースティック・ギターとピアノのサウンドが曲に柔らかさを添えるバラード。曲中に奏でられる歪んだギターの裏メロさえも優しさを感じさせる。
11AIN'T NO ROOM
アップ・テンポでポップながらも、パンクぽさを強く感じさせる曲。“何も心配せず、時を過ごそう”と歌いながらも、曲が終わるにつれて次第にその声を荒げていく展開が、この曲の中で特に心を揺さぶられるところといえる。
121969
イントロはハードに、歌のバックに回るとクリーンにかき鳴らされるギターは、ヴォーカルのクレイグの絶叫とともに爆発。そのサウンドはやがて、空の果てへと飛翔するようにエンディングを迎える。緩急が活かされたダイナミズムが溢れる曲。
13SUN CHILD
日本盤のボーナス・トラックとして収録されたバラード・ナンバー。メロディと前向きな歌詞の内容の合わさり具合が絶妙な1曲。デモ音源ということで音質は悪いが、ヴォーカルとコーラスの部分の美しさが耳に残り、癒される。