ガイドコメント
UKの新星から一躍世界的なスターへと彼らを押し上げた大ヒット・アルバム。代表曲「イン・マイ・プレイス」や「クロックス」をはじめ、繊細で感傷的な曲が並ぶ。ファルセットを多用したヴォーカルが特徴的だ。
収録曲
01POLITIK
激しく叩きつけられるビートから一転、メランコリックなピアノとヴォーカル・ラインが響き渡るオープニング・ナンバー。この曲には、しかし、単に憂鬱のなかに埋もれているだけではない力強さが備わっている。サビの部分で何度も繰り返される「Open up your eyes」というフレーズは、そのことを端的にあらわしているといえるだろう。
02IN MY PLACE
アルバム『静寂の世界』発売に先駆け、全世界で一斉オンエアされた傑作ロック・バラード。イントロからアウトロまで静かに、そして紆余曲折に高揚するメロディが、悲しみや途方に暮れる人に希望をもたらす。
03GOD PUT A SMILE UPON YOUR FACE
繊細なコード・チェンジを繰り返しながら、独特のグルーヴ感を生み出していくギター・リフが素晴らしいナンバー。圧倒的な高揚感を持つメロディ、パワフルなビートもバランスも良く、彼らのセンスのよさが感じられる。
04THE SCIENTIST
シンプルなピアノのバッキングのなかで、別れた彼女に対して「やり直そう」と告げる男性の心情を綴ったラヴ・ソング。楽曲の構成自体はオーソドックスだが、あまりにも美しいメロディがこの曲に決して消えることのない魅力を与えている。また、切ないエモーションをまっすぐに伝えるヴォーカルも文句なく素晴らしい。
05CLOCKS
終始、印象的に鳴り続けるピアノの音色が頭から離れなくなるポップなラヴ・ソング。歌詞で歌われる複雑な愛情&心情を、ピアノとベースとドラムスが押し引きしあう凝ったアレンジで表現。
06DAYLIGHT
ギター・オーケストレーションとでもいうべきアンサンブル、簡素で力強いリズム・ワーク、徐々に熱を帯びてくるメロディ、“暗闇を抜け、光のなかを突き進む”というイメージをもたらす歌詞。心と身体を浄化してくれるような、コールドプレイ流のダンス・チューン。どこまでも高みに登っていくような高揚感がたまらない。
07GREEN EYES
ブルース/フォークの影響を感じさせる、オーガニックな雰囲気のナンバー。ザックリかき鳴らされるアコースティック・ギターを軸にしたきわめてシンプルな楽曲なのだが、こういう曲にしっかり説得力を持たせられるところに、このバンドの底力を感じてしまう。切ないブルースをたたえたヴォーカルをじっくりと味わってほしい。
08WARNING SIGN
低音部を強調したストリングスと地に足のついたバンド・サウンドがどっしりと融合。抜群の安定感をもったサウンドのなかで、クリスのヴォーカルが自由に舞う……それもまた、コールドプレイの音楽的特徴のひとつだろう。“君が恋しい”という気持ちがズシンと伝わってくるリリックもストレートで力強く、グッとくる。
09A WHISPER
ギザギザに歪んだエレクトリック・ギターと猥雑な空気を持つビートが印象的なロック・チューン。狂気と正気、ギリギリのところで立っているような雰囲気は、ドアーズやヴェルヴェット・アンダーグラウンドを想起させる。サイケデリックな音像からは、ちょっと意外な側面も。ただし、旋律はどこまでも美しい。
10A RUSH OF BLOOD TO THE HEAD
ポエトリー・リーディング風にスタートするこの曲は、ドラムが加わった瞬間にふわりと宙に舞い、独特のサイケデリアを生み出しはじめる。空中をゆったりとたゆたうようなサウンド・イメージのなかで綴られるのは、“頭に血が上っていたせいで”暴力的衝動に身を任せようとする“僕”の姿。恐怖と美しさを内包したナンバー。
11AMSTERDAM
ピアノとヴォーカルによって静かに始まり、ときに印象的なコーラスを交えつつ少しずつスケールをアップしていく、ドラマティックなバラード・ナンバー。バンドが加わった瞬間、一気にダイナミックになり、人間の精神を大らかに解放してくれるような幸福なイメージを感じさせる。これはもはや、ゴスペルだろう。