ミニ・レビュー
ラテン音楽の強靭な生命力が憑依した、突然変異的にパワフルで魅力的なジャズ歌謡。ノスタルジーの要素がとくに強調されるEGO-WRAPPIN'だけど、想い出だけに生きてたらこんなにリアルな肌触りの音楽は生まれるはずはない。いま必要なのはコレじゃない? というメッセージだろう。
ガイドコメント
昭和歌謡ブームを作り出したシングル「〜Midnight Deja−vu〜色彩のブルース」がロング・セラーを記録したEGO−WRAPPIN'の3rdアルバム。ジャジーなポップ・サウンドとネオンのキャバレー感覚の歌心でいっぱいの注目作。
収録曲
01BIG NOISE FROM WINNETKA〜黒アリのマーチングバンド
アルバム『Night Food』のオープニング・チューンは、タイトル通り“マーチング・バンド”っぽい雰囲気を持ったユニークなナンバー。ヴォーカルに入ってからの盛り上がりは、ライヴでの熱い演奏を想像させる。
02くちばしにチェリー
アップ・テンポのジャズ・グルーヴが曲の終わり近づいていくほどフィーバー。スリリングな展開に合わせ、飄々と、時に泥臭さも醸し出す歌唱力に脱帽。TVドラマ『濱マイク』の主題歌として起用され話題に。
03あしながのサルヴァドール
ポエトリー・リーディングからスタートする、4ビートのミディアム・ナンバー。オブリガートで要所を締めるホーン・セクションは、オーサカ=モノレールの武嶋聡を中心としたセットで、ジェントリーな雰囲気を一段と醸し出している。
045月のクローバー
生演奏中心のアルバム『Night Food』の中で、エマーソン北村のオルガンとTR-808(「ヤオヤ」の愛称で知られた伝説のリズム・マシン)でつくられたサウンドが異色に感じるナンバー。歌詞の世界観とも相まって、中休みのような雰囲気。
05チェルシーはうわの空
オールド・スタイルのジャズの雰囲気を持ったポップ・チューン。ルーツ・ミュージックやグッド・タイム・ミュージックの影響と思われる乾いたサウンドのギターが、普通のジャズとは一味違った雰囲気を出している。
06PAPPAYA
アルバム『Night Food』に3曲収録されている英語詞のうちの1曲。4ビートで英語詞というと本場のジャズっぽさを想像するが、やっぱりどことなく昭和歌謡っぽさが漂うのがEGO-WRAPPIN'らしい。
07老いぼれ犬のセレナーデ
イントロのコントラバスは、mama!milkの清水恒輔によるもの。ゲスト・プレーヤーにもソロ・パートをフィーチャーさせてしまうところに、ユニットというより、コンボとしてのサウンド創りをしてきた意識が伝わってくる名バラード。
08WHOLE WORLD HAPPY
アルバム『Night Food』のほとんどは森雅樹が作曲しているが、本作のみ中納良恵が作曲を担当している。センスたっぷりのラグ・タイム・ピアノのようなアコースティックで温かみのあるサウンドで、グッド・タイム・ミュージックというにふさわしい雰囲気を持ったナンバーだ。
09SORA NO LION
森雅樹と、リトル・クリーチャーズの鈴木正人のコントラバス、acoustic dub messengersの菅沼雄太のドラムのギター・トリオによるジェントリーなナンバー。高いノートを歌い上げる中納の感情豊かな歌が響く。