ガイドコメント
前作『UMBRA』から約1年半ぶりとなる通算3作目のアルバム。ブレイクビーツやダブの要素がますます洗練を増し、かつて聴いたことのないほど“自由”なサウンド満載の会心作だ。
収録曲
01INCEPTION
アルバム『PHOTON』の幕を切って落とす、オープニング・ナンバー。断続的に響くビートと、ゆらりとたゆたう電子音が、つかず離れずの距離感で囁くように奏で合い、何かが始まりそうな予感をリスナーに与えてくれる。
02LIGHT MY FIRE
円を描くようにはじけるドラムと、それとまったく逆方向にうねるベース・ライン。反発し合う逆方向のリズムの渦が絡まり合い、猛烈な吸引力を伴って爆発を起こす。カオティックでセクシーな、悩殺ビート革命曲。
03BELUGA
フリー・インプロヴィゼーションと鋭角的なビートが生み出すトランシーなサウンド・スケープがとにかく壮絶な一曲。かなり前衛的なスタイルだが、ポップ・ミュージックとしての体裁もしっかり保っているあたりが彼ららしい。
04DRESS LIKE AN ANGEL
デジタル・ノイズ、爆裂ビート、サックス&トランペットのフリー・インプロヴィゼーションが織りなす悪夢のようなサウンドの向こうから、川島の鋭利なヴォーカルがこちらを斬りつけてくるダークな一曲。ディープ故に恐ろしくドラッギーで、ハマる。
05PIPER
前衛的な音作りが目立つ、アルバム『PHOTON』のなかでは珍しく正攻法な一曲。ゴスペル調のサウンドを背景に、ダークなヴォーカルとビートの反復が、徐々に高揚感を煽っていく。分かりやすい激しさはないが、実にサディスティック。
0640-FORTY-
つばぜり合いのようにせめぎ合う音と音の粒子が、静かにさえずり、緩やかな放物線を描いて盛り上がっていくミドル・ナンバー。派手さはないが、その広大なサウンドスケープにただただ圧倒されるばかりだ。
07BLINK
『PHOTON』からの先行シングル・カット曲。ファズのかかった凶悪なギター・ノイズとビートという名の暴走マシンの蜜月関係が生み出す、爆走ロックンロール。ブンブンサテライツの真骨頂とも言うべきダイナミックさだ。
08AMBER
ジャジィな音のセッションで構成された一曲。極限まで洗練された巧みの音が、ダンス・ミュージックと融合し、新たな側面を覗かせいてくさまは、鳥肌が立つほどの美しさを放っている。電化マイルス・ファンにもお勧め。
09LET IT LIFT
冒頭のギターが奏でるイントロから雪崩れ込む怒濤のメロディの世界。ロックのミドル・チューンとしても十分胸を打つ強度を持っているが、「踊れる」ダンス・ミュージックとしても十分な仕上がり。歌って泣けて踊れる音楽だ。
10I.A.I.T. (INTERCITY DUB)
アルバム『PHOTON』の幕を閉じる、エピローグ的作品。浮遊するパルス音とコラージュ的なビート、さらに日常的なサウンド・エフェクトが、無限の世界を投げかけて作品の世界は終結する。なぜか耳に残る不思議な味わいがある一曲だ。