ガイドコメント
65年に発表され、諸般の事情で日本CD化が見送られていた名1stアルバムが、ついにデラックス・エディションで登場! ボーナス・トラックを追加した2枚組のボリュームでファンは狂喜です。
収録曲
[Disc 1]
01OUT IN THE STREET
ピートのフラメンコ風ギターのイントロから始まるアグレッシヴなロックンロール。変則的なリズム・パターンに乗って、ロジャーが攻撃的なヴォーカルで聴き手を挑発する。ザ・フーならではの唯一無二の個性はがすでに鮮明になりつつあることがうかがえる。
02I DON'T MIND
ソウルの帝王ジェイムス・ブラウンのバラードのカヴァー。ゆったりとしたリズムをバックに、ロジャーが本家J.B.ばりの泣き節を披露する。ピートのギター・ソロも本格的。他のバンドとはひと味違うぜ、というニュアンスもある、ややマニアックなカヴァー。
03THE GOOD'S GONE
キンクスの「シー・マイ・フレンド」に触発されたというギター・リフが先導する、ピートのオリジナル曲。ロジャーが低い声で淡々とクールに歌う暗く悲しげな曲だが、その後のザ・フーを予感させるドラマティックな要素を秘めている。
04LA-LA-LA LIES
初期のレパートリーの中ではポップな曲のひとつ。ロジャーの柔らかく優しげなヴォーカルが珍しい。ピートのギターは控えめで、ニッキー・ホプキンスのピアノがフィーチャーされている。タムを多用したキースの変則的なリズム・パターンも光る。
05MUCH TOO MUCH
ザ・フーらしい男臭いコーラスから始まる曲。キースのドラミングが最初から快調に飛ばし、ニッキー・ホプキンスの饒舌なピアノがそれに絡む。ロジャーのヴォーカルはいつも通りクールだが、この曲ではボブ・ディラン風のフェイクを披露している。
06MY GENERATION
60年代半ばの英国の若者文化を象徴するモッズ讃歌。ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムスがそれぞれに強烈な自己主張を撒き散らしながら展開するそのサウンドは、まさに画期的。ロックの未来を垣間見せた先駆的な傑作。全英チャート2位のヒットを記録。
07THE KIDS ARE ALRIGHT
「マイ・ジェネレーション」と並ぶモッズ讃歌。ビートルズの影響を感じさせるキャッチーなメロディとザ・フーならではの暴力的なサウンドを合体させた強力なポップ・ソング。米国盤ではカットされてしまった間奏のノイジーなギター・サウンドが圧巻。
08PLEASE, PLEASE, PLEASE
ソウルの帝王ジェイムス・ブラウンのヒット曲をカヴァー。クールなコーラスとブルージィなサウンドをバックに、ロジャーが本家J.B.にも匹敵するエモーショナルな泣き節を披露する。ピアノが効果的に使われているが、ピートのギター・ソロも良い。
09IT'S NOT TRUE
60年代半ばの典型的なビート・バンドの曲調だが、暴力的なリズム・セクションがザ・フーらしい個性を強調している。キースにしては比較的スクエアなドラミングだが、旋風のようなフィルインがこの曲を演奏しているのが誰なのかを教えてくれる。
10I'M A MAN
当時の英国のビート・バンドにとっては“通行証”のようなものだったボ・ディドリーの曲。ライヴの熱気をそのままスタジオに持ち込んだような、ノイズの嵐のごときサウンドは他のバンドの追随を許さない。ニッキー・ホプキンスのピアノも効果的。
11A LEGAL MATTER
キャッチーなポップ・ソングだが、離婚を題材にした歌詞は当時としては斬新。ロジャーの私的な問題に触発されて書かれた歌詞らしいが、作者のピートが自分で歌っているのもそのせいか。曲名でもある「法的問題」という表現もピートらしい。
12THE OX
キースのドラミングから始まるインストゥルメンタル曲。キースのドラムスとニッキー・ホプキンスのピアノが狂騒的に走りまわり、ピートのギターがノイジィなサウンドを撒き散らす。曲名はジョンのニックネームだが、ここでの彼はあまり目立っていない。
13CIRCLES
シングル「恋のピンチ・ヒッター」のB面に収録されていた曲。比較的おとなしい曲調だが、キースのドラミングは相変わらず大騒ぎ。1966年の作品らしくサイケデリックな要素もあり、エンディング前にはジョンのフレンチホルンが少しだけ聴ける。
14I CAN'T EXPLAIN
1965年1月に発表された1stシングルのステレオ・ヴァージョン。ピートのギターは控えめだが、キースのドラミングやコーラスなど、初期のザ・フーらしさを詰め込んだ曲。「言いたいことが上手く言えない」という歌詞も当時としては斬新。全英8位のヒットを記録。
15BALD HEADED WOMAN
シングル「アイ・キャント・エクスプレイン」のB面収録曲。プロデューサーのシェル・タルミーが作曲者としてクレジットされている。ジョンのヴォーカルとロジャーのマウスハープをフィーチャーした曲で、ジミー・ペイジがリード・ギターを弾いている。
16DADDY ROLLING STONE
シングル「エニウェイ・エニハウ・エニウェア」のB面収録曲。オーティス・ブラックウェルのR&B曲をデレク・マーティンのヴァージョンからカヴァー。キースのドラミングと張り合うようなロジャーの熱いヴォーカルが印象的。ピートのお気に入りの1曲でもある。
[Disc 2]
01LEAVING HERE
ホランド=ドジャー=ホランドの曲をカヴァー。モッズ御用達のモータウン製の名曲だが、ザ・フーはアイズレー・ブラザーズばりの演奏を聴かせてくれる。ザ・フーらしさを詰め込みながらも、オリジナルに匹敵するくらいのクオリティの高さが、当時のザ・フーを物語っている。
02LUBIE (COME BACK HOME)
1stアルバムのアウト・テイク。ポール・リヴィア&ザ・レイダーズのヒット曲をカヴァー。バッキング・トラックはザ・フーにしては大人しいが、ロジャーの不遜な歌声は彼らしい。修行時代のザ・フーについて知りたい聴き手にとっては貴重な記録。
03SHOUT AND SHIMMY
シングル「マイ・ジェネレイション」B面収録曲。ジェイムス・ブラウンのヒット曲のカヴァーだが、キースのドラミングがバンドを先導し、ロジャーのソウルフルなヴォーカルとも絶妙の絡みを披露する。「ヤングマン・ブルース」の原型とも言えないことはない。
04(LOVE IS LIKE A) HEAT WAVE
1stアルバムのアウト・テイク。2ndアルバムでリメイクされるマーサ&ザ・ヴァンデラスのヒット曲の最初のカヴァー。初期のザ・フーのキャッチコピーだった“Maximum R&B”を象徴するような演奏だが、2ndアルバム版と比較すると、やや粗削りな仕上がり。
05MOTORING
1stアルバムのアウト・テイク。マーサ&ザ・ヴァンデラスのヒット曲のカヴァー。モッズ御用達のモータウン・ソングだが、当時のザ・フーの演奏としては標準的なヴァージョン。ただし、キースのドラミングだけは破格の存在感を見せつけている。
06ANYTIME YOU WANT ME
米国盤のシングル「エニウェイ・エニハウ・エニウェア」B面収録曲。ガーネット・ミムズのR&Bバラードをカヴァーしたもので、初期のビートルズとも共通するようなR&B調のサウンドが聴ける。ザ・フーらしさは希薄だが、ロジャーの歌声はジョン・レノンばり。
07ANYHOW ANYWHERE ANYWAY
2ndシングル「エニウェイ・エニハウ・エニウェア」の別ヴァージョン。フランス盤EPに収録されていたもので、歌詞が異なるため、デラックス・エディションではタイトルも差し替えている。珍品ではあるが、ファンならチェックしておきたいレア・トラック。
08INSTANT PARTY MIXTURE
ドゥー・ワップ風のコーラスをフィーチャーした曲。ディオンのヒット曲「浮気なスー」などを戯画化したようなパーティ・ソング。フェイド・アウト前にはエンディングを迎え、「ジョニー・B・グッド」ばりのロックンロール・チューンのイントロが始まる。
09I DON'T MIND
1stアルバム収録曲の長尺ヴァージョン。アルバム版よりも1分以上も長い。本家ジェイムス・ブラウンばりのロジャーのソウルフルな泣き節とピートのクールなギター・ソロをたっぷりと堪能できる。初期のザ・フーのライヴを想像しながら聴きたい。
10THE GOOD'S GONE
1stアルバム収録曲の長尺ヴァージョン。アルバム版よりも30秒近く長い。ロジャーが低い声で淡々と歌う暗く悲しげな曲だが、サイケデリックな要素もあるから、長尺版の方がこの曲の特徴は理解しやすい。エンディングもフェイド・アウトではない。
11MY GENERATION
名曲「マイ・ジェネレイション」のインストゥルメンタル・ヴァージョン。ヴォーカルとコーラスが入っていないから、演奏の細部が非常に聴き取りやすい。特にジョンのベースの個性的なフレージングが堪能できるのがうれしい。カラオケにもなる。
12ANYTIME YOU WANT ME
ガーネット・ミムズのR&Bバラードのア・カペラ・ヴァージョン。純粋なヴォーカルの世界が広がるこの曲で、ロジャーのジョン・レノンばりのヴォーカルをたっぷりと堪能できる。よく似ているなあ、と改めて感心。
13A LEGAL MATTER
ピートが歌うシングル曲「ア・リーガル・マター」のモノ・ヴァージョン。ギターがオーヴァーダブされているが、ステレオ版とどちらがベターかは良悪の問題。キャッチーなポップ・ソングだが、離婚を題材にした歌詞は当時としては斬新なもの。
14MY GENERATION
60年代半ばの英国の若者文化を象徴するモッズ讃歌「マイ・ジェネレイション」のモノ・ヴァージョン。この時代のロックはモノ・ヴァージョンの方が……というマニアも少なくないが、この曲でもモノ版のほうが当時の彼らの勢いが伝わってくるようだ。