ミニ・レビュー
正統派UKポップの星、アッシュのデビュー10周年を記念した2枚組ベスト盤。1枚目は全シングル19曲の表ベスト、2枚目がファン投票で選ばれたアルバム未収録の裏ベストという構成で、どの曲も甘く切ない永遠の青春を封じ込めたようなメロディの魅力が全開だ。
ガイドコメント
結成10年を記念してリリースされる初のベスト・アルバム。話題の新曲「エンヴィ」を含むベスト盤サイドと、ファンの投票による曲+レア音源などで構成されたサイドとに分かれた2枚組仕様。
収録曲
[Disc 1]〈インターギャラクティック・ソニック・セヴンズ〉
01BURN BABY BERN
キラキラと光るアルペジオのフレーズから大波のように押し寄せる野太いギター・サウンド。疾走感のあるサウンドとキャッチーなフレーズ、そしてティムのクリアな歌声が絶妙な色合いで、最高のパワー・ポップを生み出している。
02ENVY
ギターの重低音とドラムのリズムがハンマーのように叩き落とされるサウンドから一転して、サビでは祝福感満載のハンドクラップが鳴り響く。プライマル・スクリームの名曲「ロックス」をウィーザー風味に料理した、甘くも野蛮なメロディがたまらない。
03GIRL FROM MARS
ファズの効いた爆音ギターとセンチメンタルなメロディが絡み合う、直球のロックンロール・ナンバー。青春期特有の「青さ」がこれでもかと爆発しているのは微笑ましくもあるが、この時期にしか鳴らせない貴重なサウンドだ。
04SHINING LIGHT
全英チャート8位に入り、低迷期からの完全復活を告げたナンバー。メランコリックなフレーズと独特のへヴィなギターが融合したミドル・チューンだが、シンプルでありながらもメロディの美しさは随一。サウンドの力の抜け方も良い感じだ。
05A LIFE LESS ORDINARY
フォーキーなイントロが印象的な疾走感のあるギター・ロック・ナンバー。加速度を高めていくギター・ドライヴとサビでのコーラス・ワークの美しさが、曲の透明度をよりいっそう引き立てている。
06GOLDFINGER
ブリット・ポップ全盛期に産み落とされた名曲。グランジを思わせるへヴィなギター・サウンドとメランコリックなメロディが紡ぎ出す、まさに「泣き」のパワー・ポップ。ところどころにニルヴァーナを彷彿とさせるメロディが見え隠れしている!?
07JESUS SAYS
大ヒットを飛ばしたアルバム『1977』リリース後に制作されたナンバー。ヒット作に続くプレッシャーから低迷期へ突入したため、全体的に内省的でダークなサウンドへと様変わりしたが、独特の疾走感とコーラス・ワークの美しさはやはりこのバンドならでは。
08OH YEAH
オアシスにも匹敵するくらいの激甘メロディが炸裂する極上のバラード・ナンバー。ティムのささやくような歌がこれでもかとハートをくすぐりまくるが、それ以上にストリングスとギターによるメロディの大波が圧倒的。
09JACK NAMES THE PLANETS
17歳という若さでデビューを果たした記念的1stシングル。キレのあるギター・カッティングが生み出すパンキッシュなサウンドと疾走感はこの頃からすでに完成されているが、声がやけに初々しい。少年たちの夢と希望がつまったロックンロール・アンセムだ。
10SOMETIMES
メロディ・メイカーとしての持ち味を最大限に活かしきった、どこを切っても極上のキラー・メロディで形成されたロマンティックなバラード。覚えやすく人懐っこいサウンドは、思わずシンガロングを誘う。
11KUNG FU
武道の英雄ジャッキー・チェンに捧げたパンキッシュなロック・ナンバー。キャッチーなメロディと勢いのあるサウンドにはお家芸を感じさせるが、ハンドクラップや歓声が導入されるなど、随所にパーティ・ソングとしての遊びが見え隠れしている。
12CANDY
メランコリックなサウンドが切なく響くバラード。浮遊感のあるメロディとゴスペルのような美麗なコーラス・ワーク、さらに流れ落ちるようなストリングスは、溜め息が出るほどの美しさ。どこかしらスマッシング・パンプキンズを彷彿とさせる。
13ANGEL INTERCEPTOR
爆音ギター・サウンドと美コーラスが絡み合うイントロから一気に駆け抜けるロック・チューン。アッシュ独特のメロディの甘さは若干息をひそめている感じだが、この骨太サウンドと疾走感は紛れもなく彼らのサウンドだ。
14UNCLE PAT
郷愁感のあるメロディとサウンドが印象的なミドル・チューン。フレーズは若干フォーク的な感じではあるのだが、この独特の物悲しさは、どちらかというと日本の唱歌や童謡の方がニュアンスが近いのかもしれない。
15WILDSURF
グランジ・ミーツ・パワー・ポップともいうべき独自のサウンドが展開されたナンバー。フレーズの一部をわざと外してみたりとオルタナ風味でありながら、メロディだけを抽出してみると、実はもろビートルズだったりするのが面白い。
16WALKING BAREFOOT
ギターの弾き語りでほぼワンフレーズ歌い切った後に一気にドライヴ感満載のバンド・サウンドへとなだれ込むスピーディなロック・チューン。シンプルなフレーズの繰り返しであるのに飽きさせないのは、メロディのキャッチーさによるところが大きい。
17PETROL
アッシュお得意のアクセル全開のギター・ロック・チューン。ファズの効いたリズム・ギターのダイナミックさと色合いを添えるアルペジオのフレーズが、見事なポップ感を創出。歌うことよりもセッションを楽しんでいる感じが伝わってくるナンバーだ。
18THERE'S A STAR
ジョン・ウィリアムスの映画音楽かと思わせるような厳かなストリングスで幕をあけるバラード。ウィーザー直系の激甘メロディとスマパンお得意のストリングス・ワークを足したようなきらびやかなサウンドは、圧倒的なカタルシスを生み出している。
19NUMBSKULL
バンド低迷期に産み落とされた衝撃の問題作。異様なまでにへヴィなギター・サウンドを特化。暴力的で陰鬱なティムの歌声には夢も希望もなく、ただただ絶望的な叫びだけが浮かび上がってくる。
20GET OUT
たった1分半のパンキッシュなナンバー。グランジを思わせる暴力的なギター・フレーズとがなり立てるようなヴォーカルの迫力が、凄まじいまでのインパクトを残して嵐のように過ぎ去っていく。
21CHERRY BOMB
ファズを効かせたへヴィなギター・サウンドとドライヴ感のある甘いメロディの対比が際立つナンバー。この後、ほとんどメタルかと疑うほどにへヴィになったアルバム『メルトダウン』が登場することを考えると、次へのステップといえる曲だ。
[Disc 2]〈コズミック・デブリズ〉
01NO PLACE TO HIDE
02WARMER THAN FIRE
03WHERE IS OUR LOVE GOING?
04TAKEN OUT
0513TH FLOOR
06STORMY WATERS
07MESSAGE FROM OSCAR WILDE AND PATRICK THE BREWER
08WHO YOU DRIVIN' NOW?
09STAY IN LOVE FOREVER
10THE SWEETNESS OF DEATH BY THE OBSIDIAN KNIFE
11MELON FARMER
12NOCTURNE
13GABRIEL
14COASTING
15LOSE CONTROL
16I NEED SOMEBODY
17SNEAKER
18CANTINA BAND
19ASTRAL CONVERSATIONS WITH TOULOUSE LAUTREC
20DAY OF THE TRIFFIDS
21HALLOWEEN
22THINKING ABOUT YOU
23BAD KARMA BLUES