ミニ・レビュー
原題は“ティーンエイジ早分かり”。ベスト・アルバムにこういう人を喰ったタイトルをつけること自体、80年代に思春期を送りながら、80年代的な“薄さ”に引導を渡そうとあれやこれやしてきた彼ららしさが出ているのかも。やっぱり華がないのが難だが。
ガイドコメント
ティーンエイジ・ファンクラブの集大成とも言える、ヒット曲満載のグレイテスト・ヒッツ・アルバムが登場。UKロックの過去と現在、そして未来を繋ぐ、ファン必携の1枚と言えるでしょう。
収録曲
01THE CONCEPT
ややグランジ調のジャングリーなギター・ポップ。メランコリックなメロディ、柔和なハーモニー、感傷的ギター・ソロなど、彼らの多面的な個性を凝縮。ステイタス・クォー好きの女の子が登場する歌詞も独創的な名曲。
02AIN'T THAT ENOUGH
クロスビー、スティルス&ナッシュを思わせる、ハモりも柔和なフォーク・ナンバー。太陽の光がある、それで充分だろ、という歌詞のさりげなさに、肩から力も抜けていく。自然体の魅力が発揮された好曲だ。全英17位を記録。
03THE WORLD'LL BE OK
ベスト盤『ヒット大全集』で初登場となった2002年録音曲。サイケデリック期のビートルズ・ナンバーを、ポスト・パンク風のバンド・サウンドで演じているような趣が、かなり独創的。彼らのセンスの特異さが光る意欲作。
04EVERYTHING FLOWS
1,000枚限定でリリースされたデビュー曲。初期の特色であるノイジーにしてメロウなギター・ポップが、いきなり威力も魅力も発揮。『ヒット大全集』に収録された新ミックスでは、冒頭のドラムスのカウントも鮮明に響いている。
05STAR SIGN
「カソリック・エデュケイション」を再演したような長い前奏を経て、ジェラルドの甘美なメロディ・メイカーぶりが発揮されるパワー・ポップ・ナンバー。軽やかに跳ね回るこの曲で、バンド初のヒットとなる全英44位を記録。
06MELLOW DOUBT
行き詰まりを迎えた恋愛関係が歌われる淋しげなナンバー。アコースティック・サウンドを基調とした曲調の陰りが、中盤の口笛とハミングの重奏あたりで最高潮に達し、歌詞中で途方に暮れる主人公の気分にも影を差す。
07I NEED DIRECTION
ギター・ポップ・ファンなら瞬殺されるに違いない、いわゆる“パパパ・コーラス”が炸裂するフォーキーなナンバー。そのコーラスに加え、ドリーミーなハーモニーも存分に駆使。鍵盤もパパパと音を立てる愛嬌たっぷりの曲だ。
08ABOUT YOU
純正ギター・ポップ調のイントロに、早くも“アーアーアー”と聴こえてくるハーモニー。そこにドラムのキックが重なって、まばゆいメロディの楽曲が軽快に動き始める。同じフレーズを繰り返す歌詞は、聴いたその場で歌えちゃう。
09WHAT YOU DO TO ME
わずか4行の歌詞をひたすら繰り返すシンプルなギター・ポップ・ナンバー。どこかユーモラスにさえ感じられるリフレインは、まるでサブリミナル効果のごとくメロディを沁み込ませてくれる。なんとも不思議な魅力がある。
10EMPTY SPACE
ベスト盤『ヒット大全集』で初登場となった2002年録音曲。まるでバーズの一員と化したような温和なヴォーカルで、楽曲そのものにもバーズの面影が散見している。ファズがかったギター、跳ねるドラミングなど魅力的な要素が豊潤に揃っている。
11SPARKY'S DREAM
いつになく直線的なビートや、さりげないハーモニーなど、『クイック・ワン』あたりのザ・フー作品に通じる雰囲気を持ったポップ・ソング。バンド全体がサビを迎えて一体化するあたりの高揚感にも、相通じる爽快さがある。
12I DON'T WANT CONTROL OF YOU
いつになくカントリー・フレイヴァーたっぷりのイントロで始まる哀愁ラブ・ソング。抱きしめ、抱きしめられるうちに込み上げてきた思いが、グラム・パーソンズばりのカントリー・ロック・サウンドに乗せて歌われる。
13HANG ON
イントロは、T.レックス「20センチュリー・ボーイ」のグランジ・ヴァージョン風だが、本編に入るや、歌もメロディもビートルズ風に激変。ノイズ・ギターにストリングスやフルートを絡めた、TFC版「愛こそすべて」!?
14DID I SAY
ベスト盤『ヒット大全集』で初登場となった2002年録音曲。流麗なストリングスとジャングリーなギター・ポップ・サウンドを合致させた美しいラブ・ソングで、ひと息で思いを述べんばかりの、間を廃した歌唱が印象的。
15DON'T LOOK BACK
空しい気持ちを振り返るなと自らに言い聞かせる歌詞が、彼らのルーツである“ビッグ・スター”を思わせる質感の内省的メロディをバックに歌われるナンバー。恋愛模様における焦りや戸惑いや絶望が詰まった青臭い名曲。
16YOUR LOVE IS THE PLACE WHERE I COME FROM
ビートルズにおけるジョージ・ハリスン的存在のレイモンドが、持ち前の作曲能力を発揮したメロウ・ナンバー。起承転結の起だけで作り上げたような地味で平坦なメロディなのに、聴くたび心を奪い去っていく心憎い1曲。
17MEIL JUNG
ニール・ヤングのような曲だからと付けた冗談のような仮題がそのまま曲題に。心の痛みがエモーショナルに歌い上げられる曲で、サビに突入してすぐの一瞬溜めた箇所や、思いのままに弾き倒すソロなど、見せ場もかなりある。
18RADIO
イントロのアコースティック・ギターを断ち切って始まるパワー・ポップ・ナンバー。性急なドラミングとノイジーなギターの影に隠れているが、この曲の疾走感は安定したフレーズを間断なく刻む高速ベースがあってこそ成り立つ。
19DUMB DUMB DUMB
左右のスピーカーから交互に鳴り続ける簡素なギター・リフに、同じリズムを刻むドラミング。いくつかの単純な素材が組み合わさっただけなのに、出来上がるのはキュートでミニマルな個性的ポップ・ソング。これはまさに職人芸。
20PLANETS
共作者としてBMXバンディッツのフランシス・マクドナルドの名がクレジットされたナンバー。旅愁をたたえたフォーキーな曲調に、さながらジミー・ウェッブ作品のようなストリングスを被せてみせたアレンジが個性的。
21MY UPTIGHT LIFE
メロディの甘さをさらに引き出す作者レイモンドの甘い歌唱だが、その分歌詞に人生の苦味が。表面構造は簡潔でも、内部構造は複雑な、レイモンド得意の作風だ。7分近くある大曲は、『ヒット大全集』では短縮して収録。