ミニ・レビュー
ユーミンというアーティストの真骨頂を見たような気がする。それほど素晴らしいトータル・アルバムだ。リゾートを離れても、日常に戻っても、決して色あせることなく心の奥でそっと鳴り続ける、そんな穏やかな力を持っている。メロディも本当に瑞々しい。★
ガイドコメント
デビュー30周年を迎える2002年冬にリリースされた季節感あふれるオリジナル・アルバム。30年以上のキャリアを持つ彼女によって、丁寧に作られた全7曲を収録。夏と冬の季節感にこだわったアルバムだ。
収録曲
01Bonne annee- BONNE ANNノE -
本格的なボサ・ノヴァを取り入れたオシャレ度100%のナンバー。元々ボサ・ノヴァの要素を持っているのでまったく違和感はなく、むしろ微妙にかすれた声が魅力的に聞こえる。タイトルは仏語で“新年おめでとう”の意。
02Wings of Winter
クリスマス・シーズンを舞台にした失恋ソング。会えなくなって初めて愛していたことを知り、その想いをクリスマス・ベルに託すという切ない歌。親しみやすいメロディとシャレたサックス・ソロなどが聴きどころ。
03Northern Lights
厳しくも悲し気なアコースティック・ギターで始まる壮大なナンバー。極寒の大地を生き抜くような力強さに満ちていて、聴き手にある種の勇気を与える。ストリングスの奏でる雄大で美しいカウンター・ラインも印象深い。
04ただわけもなく
重めのアコースティック・ロック・ナンバー。遠い過去を思い起こすノスタルジックな歌で、当時を象徴する青い空に“きみ”への想いを託す。ささやくように歌うヴォーカルや奥行きのあるコーラスが、実に印象的。
05Rodeo
高音域メロディや単語の羅列など、新しい趣向を打ち出したロック・ナンバー。サーファーの勇気を喚起する勇ましい歌詞やオーソドックスなリズムを極力叩かないドラム、響き重視のヘヴィなギターなどが特徴的。
06雪月花
かつて“冬の女王”としてゲレンデ文化を築いたユーミンが、21世紀を迎えて書くウィンター・バラードは何とも穏やか。誰もいなくなったゲレンデにひっそりと降り積もる雪のように美しいメロディが印象的。
07Painting the sea
アルバム『Wings of winter,shades of summer』のラストを飾った美しいミディアム・バラード。声質や歌い方に刺々しさが消えて、サラリとした切ないヴォーカルが素直に胸に迫る。