ミニ・レビュー
ロンドンから登場した最高に活きのいいロックンロール・バンド、リバティーンズのデビュー作。パンクのビート&スピード感とビートルズ、Tレックスが登場したときのような鮮烈さ、粗削りな初期衝動が詰まった傑作。どの曲も信じ難いほどメロディがイイ。
ガイドコメント
元クラッシュのミック・ジョーンズがプロデュースし、全英でピストルズ以来の衝撃となっているパンク・バンド、ザ・リバティーンズのデビュー・アルバム。デビュー・シングル追加にて日本発売。
収録曲
01VERTIGO
前のめりのビートとエッジの効いたギターが生み出す直球のロンドン・パンク。ギミックのないストレートなスタイルと、ピートとカールのヴォーカルの絡み合いが生み出すポップなメロディが瑞々しい。
02DEATH ON THE STAIRS
無骨なギター・リフとは裏腹に、紡ぎ出させれるメロディはどこか切なさが漂う。そのギャップがなんともいえない青春の甘酸っぱさを感じさせる。やさぐれたピートと、優男風のカールのヴォーカルの対比も面白い。
03HORRORSHOW
ファズの効いた切れ味の鋭いギター・カッティングが勢い良く突っ走っていくモッズ・ナンバー。早口でまくしたてるような扇情的なヴォーカルが、ティーンエイジャー特有の反骨精神をこれでもかと見せつけている。
04TIME FOR HEROES
パンクの要素は若干息を潜め、UKギター・ロック的な味わいが前面に押し出されたナンバー。ギラギラしたサウンドが押さえられた分、持ち味であるスウィートなメロディが際立っており、鮮烈なまでの青さが爽やかな疾走感とともに駆け抜けていく。
05BOYS IN THE BAND
金属的なギター・カッティングとグルーヴィなリズムが周囲を切り刻むかのごとく前進していくパンキッシュなナンバー。クラッシュとニューウェイヴが融合したような独特の切れ味は、リバティーンズの唯一無二のサウンドといえるだろう。
06RADIO AMERICA
たゆたうようなビートの上に乗る物悲しげなギター。そこに陰鬱なヴォーカルが加わり、なんともいえない退廃的な世界を作り出している。落ち込んでいるというよりもただただ無気力といった様子は、下手にラウドなサウンドよりも遥かに荒れている。
07UP THE BRACKET
ピートの絶叫から雪崩れ込むクラッシュ直系のロンドン・パンク。鮮烈なサウンドとティーンエイジャーのリアルな日常を切り取った生々しい歌詞が、英国に一気に火をつけたシングル・ナンバーだ。
08TELL THE KING
冒頭の鋭いギターのカッティングから一気にメロウな曲調へと変化。そのコントラストが、繊細さと暴力が背中合わせである若者の心情を非常に上手く表現している。丁寧に紡がれていくアルペジオと歌声がひたすら美しい。
09THE BOY LOOKED AT JOHNNY
図太いギターとビートが弾丸のように加速していくガレージ・パンクな一曲。がなり立てるヴォーカルがサビで一気にシンガロング可能なポップなメロディに変化するなど、フロアとの一体感も十分考慮されているキラー・チューンだ。
10BEGGING
ゴツゴツしたサウンドが炸裂するガレージ・ロック。憂いを秘めたピートの歌声はカリスマ性に満ちあふれている。サウンドもヴォーカルもストロークスに近いものを感じさせられるが、こちらの方がより野卑といったところか。
11THE GOOD OLD DAYS
冒頭にマージー・ビートを取り入れた緩やかなナンバー。目立った激しさはないが、怒りや悲しさといったさまざまな感情を詰め込んだサウンドは混沌としており、マグマのような熱さと憤りでこちらに迫ってくる。
12I GET ALONG
ハッとするほど切れ味が鋭く、図太いギター・カッティングで走り抜けるモッズ&パンキッシュなナンバー。感情を爆発させたような激しいサウンドにさらに拍車をかけるのが、がなり立てるピートのヴォーカル。すでにロック・スターとしての風格を漂わせている。
13WHAT A WASTER
下層階級の若者の日常を4分間に凝縮したロックンロール・ナンバー。ゴツゴツしたギターと疾走感のあるビートに乗せて語られる陰惨な風景は、ドキュメントのようなリアリティを持っている。
14MOCKING BIRD
アコースティック・ギターを主体としたアコースティックなセッションで聴かせるカントリー調のナンバー。どこか下卑た感じの歌詞と、一発録りと思われる荒々しいセッションは、場末のバーを思わせる雰囲気を持っている。