[Disc 1]
01PRIDE (IN THE NAME OF LOVE)
マーティン・ルーサー・キング牧師を題材にした曲で、エッジが弾く変幻自在のリフが見事。歌詞では師の暗殺に言及しているが、そこに書かれた暗殺時刻の間違いに気づき、昨今のライヴでは歌詞を訂正して歌唱している。全英3位。
02NEW YEAR'S DAY
物悲しいメロディと力強いバンド・サウンドが一体化したナンバーは、バンド初となる全英トップ10入りを記録。エッジのギターとキーボードでの大奮闘に隠れがちだが、その傍らで疾走するアダムのベースもなかなかだ。
03WITH OR WITHOUT YOU
全英4位、全米1位(3週連続)の大ヒットを記録したラブ・ソング。感情的な表現を抑え気味にすることで、逆に感情表現を際立たせてみせた見事な歌唱力&演奏力が素晴らしい。エッジの流麗なギターが、楽曲をよりセンシティヴにしている。
04I STILL HAVEN'T FOUND WHAT I'M LOOKING FOR
全英6位、全米1位を記録したスピリチュアルなナンバー。無神論者にはラブ・ソングに読める歌詞には、ボノの信仰に対する求道的精神が綴られている。ゴスペルのエッセンスを巧みに盛り込んだ傑作ポップ・バラードだ。
05SUNDAY BLOODY SUNDAY
ジョン・レノンの同名異曲同様、北アイルランドの宗教紛争に言及したナンバー。憎しみが生む悲劇の連鎖を嘆き、いつまでこの歌を歌い続けねばならない? と人々に問う彼ら。力強いドラミングは軍歌の響きの暗喩か。
06BAD
“チャイムのような音色”と形容されるエッジのギターが、まさにチャイムのようなアルペジオを繰り広げる美麗なナンバー。押韻重視とも思える語句が並んだ歌詞は、ヘロイン禍で死んだボノの友人について歌ったもの。
07WHERE THE STREETS HAVE NO NAME
前作から二年半も待たせた『ヨシュア・トゥリー』の冒頭を飾った曲。首が伸びきってしまったファンをさらに焦らすつもりか、イントロはじつに1分以上もの長さ。繊細さと大胆さが融合した美しく希望に満ちた曲調だ。
08I WILL FOLLOW
初期U2の代表曲で、ボノが少年時代に経験した母親との死別をテーマしたナンバー。疾走するビート感がパンク・ロックの要素も感じさせ、エッジの鋭いギターが空間を切り刻み、連呼される「I WILL FOLLOW」が幼さの残る痛みを感じさせる。
09THE UNFORGETTABLE FIRE
広島・長崎被爆記録展に触発されたナンバーで、タイトルもその展示会と同名。しかし、歌詞には原爆に直結した表現はなく、ラブ・ソングとも解釈できそうな抽象的な描写に終始。ヨーロッパ的美学をたたえた曲調が美麗。
10SWEETEST THING
シングル「約束の地」カップリング曲の新録版で、ツアー三昧の暮らしに追われるあまり、ついつい愛妻の誕生日を忘れてしまったボノの謝罪と愛情でいっぱいの歌詞には「ごちそうさま」。ボノのファルセット歌唱がかなり新鮮。
11DESIRE
ボ・ディドリーを思わせる力強いジャングル・ビート。そこに同系統のビートであるストゥージズ「1969」の攻撃性を注入した屈強なロックンロール・ナンバーだ。デビュー10周年を目前にして、初めての全英1位を記録。
12WHEN LOVE COMES TO TOWN
御大B.B.キングが参加したゴスペル・ブルース。悪魔=ブルース、神=ゴスペルと仮設定し対比させる歌詞の趣向は、信仰心の厚いボノならでは。それでいて自ら悪魔パートを歌ってみせる茶目っ気ぶりも。全英6位、全米68位。
13ANGEL OF HARLEM
米国音楽巡礼中だった彼らが、聖地メンフィスにて録音し、ビリー・ホリデイに捧げたナンバー。ホーンを配したソウルフルな曲調だが、イントロはボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」風だ。
14ALL I WANT IS YOU
徐々に高ぶる大スケールのサウンドとアレンジは、まさに米国ルーツ・ミュージック巡礼の成果そのもの。抑制の効いた歌唱と演奏を、ヴァン・ダイク・パークスが手がけたストリングスが引き締めている。全英4位、全米83位。
15ONE TREE HILL
不慮の死を遂げたマオリ族出身ローディ、グレッグ・キャロルに捧げられた曲(『ヨシュア・トゥリー』自体も彼に捧げられた作品)。彼の故郷の音楽を模したのか、民族音楽的アプローチが試みられたサウンドが散見している。
[Disc 2]
01THE THREE SUNRISES
シングル「焔(ほのお)」のカップリング。緊密なヴォーカル・ハーモニーが印象的な、ゆったりとした雰囲気のポップ・ナンバー。エッジの硬軟を弾き分ける自在のギター・プレイなど、なかなか聴きどころが多い佳曲。
02SPANISH EYES
シングル「終わりなき旅」のカップリング。マイナー調のサウンドを主体にした熱っぽいナンバーで、アレンジの練り込みに物足りなさを感じさせるもののクオリティはじつに高い。アルバム未収録だったのが不思議な一曲。
03SWEETEST THING
シングル「約束の地」のカップリング曲。愛妻の誕生日を忘れてしまったボノの謝罪と愛情が込められたファルセット歌唱が印象的なソウルフル・ナンバー。のちの新録版に比べ、いくらかモヤがかかったようなサウンドだ。
04LOVE COMES TUMBLING
シングル「焔(ほのお)」のカップリング。作品が内包するヨーロピアン・テイストを強め、フレンチ・ポップ風に転がしてみせたりした意欲作。ボノのねっとりとしたヴォーカルなど、彼らの数年後を予期したような作風だ。
05BASS TRAP
シングル「焔(ほのお)」のカップリング。タイトルはベースだが、内容はギター・インスト。プロデュースを手がけたイーノの趣味だろうか、仕上がりはかなりアンビエントなものに。エッジのリラックスしたプレイに心も休まる。
06DANCING BAREFOOT
シングル「ラヴ・カムズ・トゥ・タウン」のカップリング。パティ・スミス『ウェイヴ』(1979年)収録曲のカヴァーで、エッジが繰り広げるノイジーなギターが、二ール・ヤングの芸風に似ていて愉快。個性的なカヴァーだ。
07EVERLASTING LOVE
シングル「オール・アイ・ウォント・イズ・ユー」のカップリング。ラヴ・アフェアーが1969年に全英1位を記録したポップ・ナンバーを軽やかにカヴァー。序盤のシンプルな展開を凝った局面へと転じさせる構成が鮮やか。
08UNCHAINED MELODY
シングル「オール・アイ・ウォント・イズ・ユー」のカップリング。1965年にライチャス・ブラザーズがカヴァー・ヒットさせた有名曲を幽玄で劇的なU2サウンドで料理。曲の世界に前のめりで没入したボノの歌唱が絶品だ。
09WALK TO THE WATER
シングル「ウィズ・オア・ウィズ・アウト・ユー」のカップリング。ボノが愛妻へと捧げた内省的な曲で、エッジのアルペジオが作り出すノスタルジックで浮遊感のある空間を、語るようなボノのヴォーカルが流れ去っていく。
10LUMINOUS
シングル「ウィズ・オア・ウィズ・アウト・ユー」のカップリング。ボノの愛妻に対する深い愛情が吐露されており、その告白が熱を帯びるのに比例し、演奏の熱気も微増。テンションを見事に抑制した完成度の高い作品。
11HALLELUJAH HERE SHE COMES
シングル「デザイヤー」のカップリング。ゲストのビリー・プレストンがハモンド・オルガンを弾く、音/歌ともにゴスペル色の強いナンバー。アコースティック・ギターをフィーチャーした土臭いサウンドが新鮮。
12SILVER AND GOLD
ボノがキース・リチャーズ、ロン・ウッドと共演したアパルトヘイト抗議アルバム『サン・シティ』提供曲のU2版。ノリ一発の雰囲気が魅力だった原曲に対し、こちらは熱っぽいバンド・サウンドによる生真面目さが魅力。
13ENDLESS DEEP
シングル「トゥ・ハーツ・ビート・アズ・ワン」のカップリング。腰の据わったベース・ラインがエコーの効いた空間に響くクールなインスト。“共同プロデュース:聖フランシスコ・ザビエル”は彼らなりのジョークか!?
14A ROOM AT THE HEARTBREAK HOTEL
シングル「エンジェル・オブ・ハーレム」のカップリング。曲題でそれとなく示唆してあるとおり、エルヴィス・プレスリーに捧げられたナンバー。エッジのルーズなギター・プレイも聴けるゴスペル調のロックンロール。
15TRASH, TRAMPOLINE AND THE PARTY GIRL
シングル「A Celebration」のカップリングで、『ブラッド・レッド・スカイ』収録曲「パーティ・ガール」のオリジナル版。テクノ・ポップがかったシンセの使い方など、不似合いすぎる軽やかさに戸惑わされる異色作。