ミニ・レビュー
人気バンドとなったPE'Zの初ライヴ盤。これがジャズだと世間に思われると苦しいが、確かにジャズ風味はある。スタジオ盤同様にアンサンブルが光り、作り物ではない実力を感じさせる。アルバム展開もスリリング。キーボードもなかなか聴かせる。
ガイドコメント
『九月の空』がオリコン初登場10位を獲得したインスト・バンド、PE'Z。彼ら最大の武器であるライヴを収めたアルバムがついに登場。インディー時代の名曲も収録したベスト選曲がうれしい。
収録曲
01HEY!JORDU!
インディ時代のアルバム『PE'Z』の1曲目に収録されている初期の人気ナンバーのライヴ・ヴァージョン。ライヴでは必ず盛り上がるファスト・チューンで、各メンバーの見せどころも多い。楽曲そのものはクリフ・ジョーダンの「JORDU」ともビートルズの「ヘイ・ジュード」とも関係はないらしい。メジャー盤ではこのテイクが初披露となる。
02Akatsuki
彼らの人気を決定付けたヒット曲。キャッチーなメロディや親しみやすい8ビート、斬新で緻密なアレンジなど、彼らがジャズだけでなくブラス・バンドからロックまでの幅広いユーザーから支持を得るゆえんを凝縮したようなナンバー。ライヴではイントロだけでオーディエンスが盛り上がっていることからも、これが彼らの代表作であることがわかる。
03Let it go
1stフル・アルバム『九月の空』に収録されたヒイズミマサユ機作曲のアップ・テンポなナンバー。この曲の魅力のひとつであるタイトなグルーヴ感は、各メンバーの高い演奏能力のもと、ライヴでも見事に再現されている。オリジナルの雰囲気を壊さない程度に自由奔放に繰り広げられるフロント二人のソロの掛け合いにも注目。
04ALPHA
初期の人気ファンキー・ラテン・チューン。ライヴでの聴きどころは、前曲「Let it go」からのノンストップな流れやヒイズミマサユ機の超絶ソロ、観客を大いに盛り上げるヒップホップのようなMCパートなど。オリジナル・ヴァージョンはインディ時代の2ndミニ・アルバム『速人-HAYATO-』に収録されている。
05Boomerang Boogie〜南風堂の叔父さん〜
インディ時代の「NANPU DOU」のリメイク・ヴァージョン。初期のPE'Zらしいストレートなジャズ・ブルースだが、聴き手を飽きさせない秀逸なアレンジが施されている。ライヴではブギウギのゴキゲンなグルーヴとサックスのブロウが聴きどころ。スタジオ録音は、2ndマキシ・シングル「DRY!DRY!DRY!」に収録されている。
06magenta
“侍JAZZ参上!”というキャッチ・コピーでリリースされたインディ時代の2ndアルバム『速人-HAYATO-』に収録されているナンバー。その後のPE'Zにはない比較的ストレートなジャズ・サンバで、ヒイズミマサユ機の軽快なエレピが全編を通して強く印象に残るライヴ・ヴァージョン。ジャズ・バンドらしさが色濃く出た初期の隠れた名曲。
07collective mode
メジャー・デビュー後のPE'Zとはひと味違うツウ好みの高度かつ前衛的なナンバー。エフェクトをふんだんに使ったアグレッシヴなサウンドが魅力で、アップ・テンポなグルーヴと各メンバーの大暴れ具合が痛快なまでにライヴ栄えしている。オリジナル・ヴァージョンはインディ時代の3rd『OKOKOROIRE』に収録。
08Recado Bossa Nova
ハンク・モブレーの名演で知られるジャズのスタンダード・ナンバーで、PE'Zがハード・バップ期のジャズ・ロックに強く影響されていることや、航のリミットを感じさせない奔放なドラムがPE'Zサウンドの核を担っていることがよくわかる。ライヴではボサ・ノヴァというよりはむしろサンバになっているエンディングが実に彼ららしい。
09海に降る雪〜snow in the sea〜
異国情緒に満ちたPE'Z流ラテン・ナンバー。高度で目まぐるしい展開の多いPE'Zの楽曲群の中では比較的シンプルな構成で、南国のような落ち着いた曲調と随所のヒイズミマサユ機による粋な生ピアノがライヴの聴きどころ。中盤のリズム・チェンジやエンディングのベイシー・フレーズなど、彼ららしいスパイスも効いている。
10アンダルシア-Andalucia-
フラメンコを連想させるタイトルだが、どちらかと言うとマンボのようなアフロ・キューバン・テイストのフレーズが印象的なナンバー。物悲しげでキャッチーな旋律とメリハリのある展開がいかにもPE'Zらしい。本テイクが初披露で、スタジオ録音ヴァージョンは2ndマキシ・シングル「DRY!DRY!DRY!」などに収録されている。
11ステレオパンチ-H-
スタジオ録音のオリジナル・アルバムには収録されていない未発表曲。ハード・バップ的なキャッチーなテーマとブロウで大いに観客を盛り上げるKadota“JAW”Kousukeのサックス・ソロがライヴでの聴きどころ。ジャズのハーモニーとタイトな8ビートが違和感なく融合し、オリジナリティあふれるサウンドを作り出している。
12TAXI DRIVER THEME
2002年7月リリースの1stマキシ・シングル「Hale no sola sita〜」にも収録されているナンバーのライヴ・ヴァージョン。マーティン・スコセッシ監督映画のテーマ曲のカヴァーで、リー・モーガンやハンク・モブレーのようなフロント2管のハーモニーが魅力。2分足らずという短い演奏時間を感じさせない巧みな構成も見事。
13SPIRIT
2002年のメジャー・デビュー作『Akatsuki』にも収録されているアップ・テンポなファンキー・チューン。ライヴで盛り上がる人気曲のひとつで、キャッチーなメロディや力強いキメ・フレーズが盛りだくさん。ライヴでは、ヒイズミマサユ機がオリジナル・ヴァージョンのオルガンに代わって生ピアノを使用している点にも注目したい。
14LA YELLOW HEAD
リズム隊が奏でるラグタイムのようなグルーヴで観客を踊らせるゴキゲンな4ビート・チューン。ライヴでは、終盤のテーマからラスト・ナンバーへのドラマティックなつなげ方が聴きどころ。オリジナル・ヴァージョンは2001年10月にリリースされたインディ時代最後のミニ・アルバム『OKOKOROIRE』に収録。
15Hale no sola sita〜LA YELLOW SAMBA〜
やはりライヴのラストを飾るのはこの曲。メジャー・デビュー後のPE'Zの人気を決定付けた代表的ナンバーで、軽快なサンバ・リズムとキャッチーこの上ないメロディなど、彼らの魅力を凝縮したような作品。「ハレノソラシタ〜」の大合唱をはじめ、随所で聴かれるオーディエンスの歓声からもこの曲の人気の高さがうかがい知れる。