ミニ・レビュー
ブリット・ポップ時代からは随分遠くに来たと思うが、ブラーは着実に深化・進化を遂げている。ダピーな音作りや民族音楽的なエッセンスの咀嚼など、グレアム脱退の穴も感じさせず、21世紀のポップ・ミュージックというテーマも見据えた渾身の力作。★
ガイドコメント
4年ぶりの新作、7枚目のアルバムがついに完成! Gorillazの大成功を経て、気力体力ともに充実したデーモン・アルバーンが存分に暴れる強力な作品。ブラー史上最高の音となりそう。
ガイドコメント
グレアム・コクソン(g)が脱退するも4年ぶりの新作、7枚目のアルバムがついに完成! Gorillazの大成功を経て、気力体力ともに充実したデーモン・アルバーンが存分に暴れる強力な作品。ブラー史上最高の音を聴かせる。
収録曲
01AMBULANCE
「僕には怖いものなんかない」と歌う歌詞が、アフリカン・ビートとともにリフレインし、終わるとも知れないマントラのような効果を生み出している。サックスの音色は、オーネット・コールマンを意識したのだろうか。
02OUT OF TIME
穏やかなメロディに乗せ放たれる、ポリティカルなメッセージ。欧米ジャズ風ギターと、モロッコ人ミュージシャンが奏でる調べとを調和させたチル・アウトな作風は、英米圏と非英米圏の平和的共存を願った暗喩とも考えられる。
03CRAZY BEAT
ファットボーイ・スリムことノーマン・クックが参加した不夜城ダンサブル・ポップ。いかにもノーマンらしいにぎやかなサウンド・プロダクションに、ノイジーなギターがセンスよく絡む。土曜の夜更かしのお供に。
04GOOD SONG
過去に発表した「メロウ・ソング」「スワンプ・ソング」が、タイトル通りの作品だったように、この曲も美しくグッドなメロディのアコースティック・ナンバー。夢幻的なサウンドと終末ムードの落差が何ともシニカル。
05ON THE WAY TO THE CLUB
気だるげなムードのクラブ・トラック。これまでにもゴリラズの作品などに参加しているデーモンのいとこ、ジェイムズ・ドゥリングが共作者にクレジット。後半展開されるキーボード・サウンドの奔流に五感もちりちり。
06BROTHERS AND SISTERS
レイドバック・サウンドによるクールなヒップホップ・ナンバー。ここで“チョイ悪ラップ”を披露しているデーモンは、ヴォコーダーにも挑戦。グレアムに代わって弾くギターともども、イイ味を出しまくっていて新鮮。
07CARAVAN
“月の砂漠をはるばると”旅しているような気分になる、メランコリックなスロー・ナンバー。アレックスが弾く民族楽器風ベース・ラインなど、様々な音色がゆったりと飛び交うさまは、まさに音楽キャラヴァン隊のようである。
08WE'VE GOT A FILE ON YOU
わずか1分で終幕となる短いパンク・ナンバー。過去にもパンク・スタイルでの曲を披露している彼らだが、ここではエキゾチックな味つけも加えた新種のスタイルに挑戦。デーモンのヘタウマすぎるギターが、実にパンク。
09MOROCCAN PEOPLES REVOLUTIONARY BOWLS CLUB
タイトル通りアフリカン・テイストあふれるポップ・ナンバー。民族楽器を使った録音に聴こえるが、使用楽器は普段のブラーと同じだそうだから驚く。各人が工夫を凝らし、それらしい音色に聴こえるよう努力した成果だ。
10SWEET SONG
歌詞を読まねば、非常に聴きやすくスウィートなポップ・ソング。しかし、歌詞を読むと、そこには“元メンバー”グレアム”に向けた親愛のメッセージ。切なく「ビター・スウィート・ソング」へと早変わりだ。
11JETS
デーモンが弾くギター・ループの心地よいゆるさ、芯が太く根を張るようにどっしりとしたリズム隊など、グレアム脱退による思わぬ副産物で構成されたポスト・ロック・ナンバー。最後に意図不明なサックス独奏も聴ける。
12GENE BY GENE
ファットボーイ・スリムことノーマン・クック参加曲。遊び心溢れる音に複雑に絡むリズムなどは、やはりノーマン参加の賜物か。この曲、「GOT TO GET TO KNOW YOU GENE BY GENE」というフレーズが「関係ないチンパンジー」と聴こえる“空耳”ソングとしても有名。
13BATTERY IN YOUR LEG
グレアムが録音に参加した最後のメンバーが揃い踏みして制作された音源。ゆるやかなサウンドの中を、グレアムが弾くコズミックなギターが流れていく美しいナンバー。感傷的な内容の歌詞が、聴き手にグレアム脱退の事実を直視させる。
14THE OUTSIDER
ルーツ・ミュージックとエレクトロ・ミュージックを融合させた序盤から、段々とサウンドが激しさを増し、最後は現代音楽、ポスト・ロック的展開に。すべての音楽はダンス・ミュージックである、とでもいいたげな曲だ。