収録曲
[Disc 1]
01記憶喪失
地を這うようなベース・ラインの上をゆらりゆらりとメロディが漂い続けるダークなナンバー。それほど盛り上がる展開の曲ではないにも関わらず、ひりひりとした演奏と詩的な言葉からは大きなカタルシスを得ることが出来る。
02泥棒
4thアルバム『泥棒』のタイトル・トラック。ブルージィな香りに満ち、楽器の音色と呼応するかのようなUAの真骨頂ともいえる“歌”が聴きどころ。これまでになくダークな世界観が漂う一曲。
03TORO
スウィングなメロディとブラスのフレーズが曲の世界を鮮やかに彩るジャジィな一曲。緊張感あふれるセッションに負けない存在感を放つUAの歌は流石の強さ。ジャズ・ヴォーカリストとしての存在感をはっきりと示している。
04ロマンス
ラテン調のビートを基盤にしながら、ドラマティックな展開で聴かせる爽やかなバラード・ナンバー。雄大で色彩あふれる詩の内容と、緩やかに広がっていくメロディが見せる風景は、涙が出そうなほどの美しさを放っている。
05夜の風
アート・リンゼイが作曲に参加。ブラジリアン・ビートの心地よいサウンドの上を、波に乗るかのように軽やかに滑り落ちていくUAの歌声は、まさに夜風のように涼やか。時折聴こえる波の音にも癒される。
06数え足りない夜の足音
朝本浩文プロデュースで制作されたシングル曲。トライバルなリズムを前面に押し出した即効性の高いダンサブルなサウンドと情熱的でセクシャルなUAの歌声のエロさが絶妙にマッチした、聴くほどに昂る一曲だ。
07男と女
空間を切り裂くノイズとドス黒いグルーヴの固まりがすべてを飲み込んでいく。その中心で歌を放つUAの存在はまさに漆黒の女神そのもの。アヴァンギャルドで淫媚な音に彩られた、暗黒舞踏のごとき美しさを感じさせる。
08青い鳥はいつも不満気
インプロによる各楽器のセッションが、UAの歌とともに従い、止むと同時に再び奔放に放たれる。彼女を中心において繰り返される秩序と混沌のせめぎ合いの凄みを十分に堪能できる極限のライヴ・パフォーマンスだ。
09瞬間
ポエトリー・リーディングで聴かせるダウナーな前半部と、ジャズで聴かせるアッパーな後半部で構成された壮大なナンバー。陰と陽、内と外、躁と鬱というまったく逆のベクトルの間を行き来しながらも、絶妙なバランスで聴かせるのは流石の手腕。
10空耳ばかり
退廃的で甘美な歌声がアンダーグラウンドなジャズ・バーの歌姫を思わせる。待ち人を待ち続ける女の、孤独な夜の物語を立体的に描き出す詞とメロディは、実に情感豊かで色っぽい。
[Disc 2]
01スカートの砂
朝本浩文プロデュースによるレゲエ・フレイヴァーなシングル曲。スティール・ドラムをメインに置いたオーガニック風味の乾いたサウンドが、海風のように吹き抜けていく。LITTLE TEMPOの佐々木育真がギターで参加。
02ブエノスアイレス
ミニマルなメロディのループと淡々と語り紡がれる詞の世界。反復しながら少しずつ絡まり合うメロディがとてつもない高揚感を引き起こす。8分に及ぶ超大作だが、それを感じさせないのは完成された世界観ゆえだろう。
03ドア
気まぐれに跳ねるベースやギターの音色は一見不協和なようだが、それらがやがてルーズなメロディを練り上げていき、ドラマティックなストリングスが曲全体を盛り上げていく。アヴァンギャルドなようでいて実はしっかりポップだ。
04世界
ループするリズムとサウンド、淡々とした歌が徐々に絡まり合い、生み出されていく立体的なサウンドは、まさに「世界」を構築。鳥がさえずるようなノイズ音も挿入されており、イマジネーションも刺激される。
05ミルクティー
06彼方
荒涼とした音の世界観をジャジィなサウンドで聴かせる濃密な一曲。気だるくもひりひりとした皮膚感覚が、恐ろしいまでの緊張感を伴って、聴くものの心に迫る。前衛的でありつつもしっかりポップネスを維持したUAらしい楽曲だ。
07青空
エレクトロニカ風のルーズなビートとストリングス、ピアノというシンプルなサウンドで聴かせる一曲。音数が少ない故にそれだけUAの歌の世界がクローズアップされ、ディープな部分まで浸ることができる一曲だ。
08閃光