ミニ・レビュー
アメリカで大人気のオクラホマ出身のオール・アメリカン・リジェクツの日本デビュー作。いわゆるエモーショナル・パンク系だが、単にメロディがキャッチーなだけでなく、プログラミングを効果的に使って絶妙の“ポップ・マジック”を演出している。
ガイドコメント
耳馴染みのいいメロディをもつシングル「スウィング・スウィング」がヒット中のエモ/ポップ/ロック・バンドのデビュー・アルバム。ティム・オヘアー・プロデュースの爽やかな若者たちです。おすすめ。
収録曲
01MY PAPER HEART
哀れな愛を捧げる男のいたたまれない心情が、どこか頼りなさげな歌唱からこぼれ落ちてくる。歌詞を読まなくても心の奥にジーンとくる号泣ソングだ。プログラミングを施しつつも甘酸っぱさが多分に香る、洗練されすぎてないところが良い。
02YOUR STAR
耳を捉えるロマンティックなピアノの旋律に加え、ドリーミーなキーボードやドライヴ感満点のハードなギターなど、カラフルな音色が美しくドラマティックな世界を紡いでいく。『オール・アメリカン・リジェクツ』のハイライトと言える名曲。
03SWING, SWING
決して革新的でも斬新でもないが、タイトルどおり腰を揺らして踊りたくなるラジオ・フレンドリーなナンバー。シングルとして大ヒットしたのも納得の、どこまでも自然体でいい意味でのあか抜けなさもウケた理由だろう。
04TIME STANDS STILL
分厚いコーラス・アンサンブルとサビの部分でのファルセットがいつまでも余韻となって残る、切ないラヴ・ソング。電子音控え目のサウンドが醸し出す、なんともノスタルジックな雰囲気が味わい深い。
05ONE MORE SAD SONG
サビでのちょっとセクシーな高音と表情豊かなギター・サウンドが印象的な軽快な楽曲。全体にポップで明るいが、徐々に加速する後半から突如として終わってしまうラストに、彼女を失いかけている時の混乱した心情がうかがえる。
06WHY WORRY
儚く消え去りそうな彼女への想いを綴ったラヴ・ソング。賛美歌のように優しく響きわたる、美しいコーラス・パートと清涼感たっぷりのピュアなサウンドは、聴き手を癒すだけでなく、心の不純物をさっぱり取り除いてくれそうだ。
07DON'T LEAVE ME
打ち込みやドラム・ループを使った小気味よいビートとリズム、加工処理したヴォーカルなど、多彩なアイディアと遊び心いっぱいのダンサブルなナンバー。音楽的知識の豊富さ、ソングライティング力の高さを思い知らされる。
08TOO FAR GONE
力強いバンド・アンサンブルと優美なストリングスが見事に融合した佳曲。大胆なアレンジを施したサウンドがスケールの大きいドラマを展開しており、去っていく彼女への純粋な想いが痛いほど伝わってくる。
09DRIVE AWAY
エモの甘酸っぱさとポップ・パンクの疾走感と親しみやすさをあわせ持った、スピード感とテンポのよいビートが爽快なトラック。ドライヴするハードなギターも魅力的で、彼らがパンク・キッズから支持されたのもよく分る。
10HAPPY ENDINGS
ハッピー・ソングみたいなタイトルだが、実は、幸せな結末への切なる願いを込めた祈りの歌。かなり甘口なサウンドだが、鍵盤とエレクトロの絡みがピリッと効いており、ユニークなタッチの胸キュン・ソングに仕上がっている。
11THE LAST SONG
スペイシーな電子音に導かれ、キラキラと星がきらめく夜空を旅するような浮遊感が味わえるドリーミーな楽曲。パンキッシュなビートで徐々に高揚し、間奏パートのやや大仰なストリングス使いで盛り上がり、クライマックスへと向かう展開がすばらしい。
12THE CIGARETTE SONG
アコギを主体としたメランコリックで大人っぽい雰囲気のナンバー。ひねりの効いたアレンジを得意とする彼らの曲の中ではシンプルだが、ファルセットを多用した繊細な歌唱と起伏のあるギター・サウンドが機微をうがつ。