ミニ・レビュー
変化と成長のアルバムだ。繊細なヴォーカルはそのままだが、女性シンガー・ソングライター然としていた以前と異なり、ダンス、ロック、ポップのビートを大胆に取り入れた、多彩な内容に驚かされる。2001年の『ディス・ウェイ』に続く、強烈な通算5枚目。
ガイドコメント
『ディス・ウェイ』から1年半ぶりの新作。プロデューサー/共作のソングライターとしてレスター・メンデスを迎え、アコースティック主体のサウンドからさらに一歩前進したヴォーカル、ソングライティングが味わえそうな1枚に。
ガイドコメント
スケールの大きさを示した『ディス・ウェイ』から1年半ぶりのニュー・アルバム。全米屈指の表現者である彼女が、その才能をいかんなく発揮。心ふるわせるヴォーカルをじっくりと味わいたい。
収録曲
01STAND
ヘヴィなリズム・トラックから始まる重々しいR&Bナンバー。美しい高音で歌い上げながらも、決していきり立つような感じはみせない冷徹ともいえるヴォーカル・スタイルが印象的。これまでの清楚なイメージを一変させた、彼女にとってエポック・メイキングな1曲。
02RUN 2 U
つま弾かれるアコースティック・ギターのアルペジオに導かれて、疾走感たっぷりなアレンジが展開する、爽やかでメロディアスなポップ・ナンバー。軽快に刻まれるハイハットとセンスたっぷりのベース・ラインも何とも魅力的。UKポップ・ロックを思わせるキャッチーなナンバーだ。
03INTUITION
ジプシー・ミュージックを思い起こさせる、アコーディオンのイントロが印象的なR&Bナンバー。美しいメロディもサビで出てくるが、それまではどちらかというとヒップホップに近い。最先端のサウンドと伝統的な楽器のコントラストがアイディアものの1曲。
04LEAVE THE LIGHTS ON
地獄の底からはい出てくる感じの重々しいベース・ラインに導かれたサウンドに、天から舞い降り細く糸を引くようなヴォーカルが印象的。ジャジィなトランペットの効果的なアクセントとなった、メロウでダンサブルなR&Bナンバー。
052 FIND U
囁くように、呟くように歌われるのは、抱えきれない不安と切なる願い。歌姫と呼ばれる彼女の本領発揮の1曲だ。途中までの伏し目がちのメロディがサビに入るや一転、明るい希望に満ちていく。このギャップが魅力。
06FRAGILE HEART
ア・タッチ・オブ・ジャズのアンソニー・ベルとのコラボレーションが実現した、魅惑のポップ・ナンバー。とはいっても、ヒップホップ・マナーとしてのアプローチよりも、彼女の魅力を全面に表現した美しいメロディが聴きどころの曲に仕上がっている。口笛の音色がとにかく美しい。
07DOIN' FINE
晴れやかで爽やかな、疾走感たっぷりのポップ・ナンバー。日本人好みのメロディ、センスあふれるベース・ライン、高い歌唱力、まさにヒットするために生まれてきたかのような1曲。夏のドライブ、ビーチ、花火といったシチュエーションにはビッタリ。
082 BECOME 1
イギリスの人気ソングライター、ガイ・チェンバースとの共作曲。胸をかきむしられるかのような泣きのメロディ・ラインと、それに丁寧に添うような切々としたヴォーカル。彼女のヴォーカリストとしての懐の深さが堪能できるバラード・ナンバー。
09HAUNTED
作詞した彼女自身が「ストーカーの視点から書いた曲」と話す重厚なナンバー。じっとりと寝汗をかいてしまいそうな重苦しい雰囲気にアンビエントなアレンジ。そこにかぶさる彼女の狂気が見え隠れするような歌声がハマる、まさに“ホーンテッド”な作品だ。
10SWEET TEMPTATION
UKポップ・ロック的なキャッチーかつポップな雰囲気が魅力の1曲。爽やかなギターを中心としたアレンジと伸びやかなヴォーカル、メロディアスでありながらどこかミステリアスなメロディがあいまって、彼女の新たな魅力が感じられるポップ・ソングに仕上がっている。
11YES U CAN
イケイケ、ゴーゴー、ノリノリな、ハードでアッパーなロック・チューン。「フィメール・ロック」王道まっしぐらのメロディとアレンジは、これまでの彼女の雰囲気を一変させるほど。しかしながら、彼女のヴォーカルに意外とフィットしていると感じるのは、やはり歌唱力の高さに起因しているのだろう。
12U & ME = LOVE
バブル真っ盛りの80年代を思い起こさせるようなポップ・ナンバー。80年代アイドル路線をひた走る、ゴージャスでキラキラしたサウンドがなんともバブリー。ウィスパー・ヴォイスで聴かせるセクシーなAメロとキュートでキャッチーなサビ、彼女のウラとオモテが楽しめる1曲。
13AMERICA
全盛期のマドンナを彷彿とさせる、どこか懐かしい気分が漂う、80年代風エレ・ポップ・ナンバー。“9.11”以降のアメリカに対して、ユーモアを含めながらも辛辣な歌詞を、あくまでも冷静さを失わずに綴っていく。
14BECOMING
打ち込みのデジタル・リズム・トラックに乗せて、美しいアルペジオを聴かせるアコースティック・ギター。その上を透明感あふれるヴォーカルと美しいメロディが漂っていく。16ビートの細かいリズムが気持ちいい、ミディアム・テンポのポップ・ナンバーだ。
15INTUITION
ピコピコとなるシンセサイザーと4つ打ちのバスドラを前面に押し出した、ユーロビート風デジタル・リミックス。TKサウンドを彷彿とさせるシンセ・リードによるキメキメのフレーズが、90年代の日本を想起させる。バブリー感あふれるダンス・チューン。