ミニ・レビュー
あー、71分一気に聴かされてしまった。前作『グランツーリズモ』はアッパー系だったが、今度のはとびっきり極上のダウナー系だ。圧倒するんじゃなくて、甘いくちづけでこちらの言葉を奪ってしまう手だれのプレイボーイみたいに肉体を芯からとろけさせる音楽。★
ガイドコメント
各方面で話題騒然の“CKB”ことクレイジーケンバンドのニュー・アルバム。ロックにパンクに歌謡曲、抜群のごった煮センスで、前作『グランツーリズモ』を上回る傑作誕生!
ガイドコメント
2003年発表の5thアルバム。ニューソウルからサイケなヒップホップ、ポップンロール、ゴージャスなムード歌謡など、抜群のごった煮センスが発揮された痛快なサウンドが満載!
収録曲
017時77分
チューニング音から始まるイントロは、アルバム『777』の幕開けにふさわしい演出。メンバー間の意志の疎通の瞬間を一発録りで封じ込めたような曲。ほとんど音の加工はなく、ナマモノのおいしさをナマでいただけるトラック。
02BRAND NEW HONDA
アフター・ビートのドラムが軽快なリズムをたたき出す、自動車メーカー讃歌。やはり車は男だけの道楽なのか? それをコーラスで脇を固める菅原愛子が「安全運転でね」とやさしく戒める。彼女のツヤがCKBの加速を程良い速度にする。
03I LIKE SUSHI
リズム・ギターと同じ符割りのベース・ラインが珍しい、ボサ・ノヴァ・チューン。後半、16ビートのシャッフルにリズム・チェンジしてからの歌詞は、ロサンゼルスのリトル・トーキョーで連発される訳の分からない日本語たちと思われる。
04爆発!ナナハン娘
ミック・ジャガーばりのマラカスが陽気なモーターサイクル・ロックンロール。男心をくすぐるバイク娘への憧憬が歌われる内容で、スピードスター・小野瀬雅生のギターが必死に追走するが、どうにもこの爆走娘には追いつきそうもなさそう。
05赤と黒
和製マーヴィン・ゲイ、横山剣の正統派スウィート・ソウル。ソウルと歌謡曲は紙一重、それでもきっちりとブラックしている。ルーツを冒涜しないCKBが、J-POPにジャンル分けされない理由がこの曲からも感じられる。
06eye catch/世界にひとつのCKB
清涼飲料のコマーシャルにぴったり? なさわやかメロディのインタールードだ。尺の短さから、もっと聴きたいのに……とリスナーを欲求不満にさせる演出に、誰もがしっかり“eye catch”されてしまうだろう。
07夜のヴィブラート
デスティニーズ・チャイルドが好むと思しきトラックにのせての歌謡ヒップホップ。ライムスターのタイプの違った2人がタイミングよく登場。もう少し言葉を詰めれば、リル・ジョンとルダクリスのような絡みになる。
08夜のヴィブラートKQ仕様
ライムスターに感謝の意? を表わして、横山剣のラップが炸裂。あまり騒がれないが言葉遊びの達人・横山剣のラップは優秀、もっと評価されていい。あふれ出てくる言葉がなんとも頼もしい高速ラップは、VERBALよりもウワテだ。
09私立探偵マヒマヒ
CKBのギター侍・小野瀬雅生が大活躍のTOTOを彷佛とさせる爽快アメリカン・ロック。少し切ないメロディが肝心の80'sロックを忠実によみがえらせている。『ベストヒットUSA』世代とアメリカ人が大喜びすること間違いなし。
10美人
小野瀬雅生のヴォーカルが唸るカヴァー・ソング。ジミヘンのようなこのサウンドが1969年に韓国で既にヒットしていたとは……。日本は10年遅れていたといえよう。内容がジミヘンの「フォクシー・レディ」とかぶるのも時代を感じる。
11eye catch/あなたとわたしのCKB
ボサ・ノヴァと歌謡曲の華麗な融合が切ないインタールード。「あなたとわたし」、男と女がそろって、初めてCKBを楽しむ環境が整う。男だけで楽しむ、女だけで楽しむ、両方NGだといわんばかりの箸休めだ。
12真夜中のストレンジャー
ピアノとギターが艶っぽいCKBお得意の夜の街ソング。よそ者が女を求め、夜の街を徘徊する内容。夜の街はそんなに甘くなく、「見えない明日が俺を急かす夜」の歌詞はかっこいいが、思いは成就されないまま夜がふけていく。
13涙のイタリアン・ツイスト
聴き手によってそれぞれのノスタルジーが去来するだろう。サウンドはイタリアン・ポップス、グループ・サウンズ、Aメロ導入部はアメリカン・50'sポップス……。ジャンル分けなんていいかげんなもの、という気概を感じる、別の次元で勝負している曲だ。
14Surf Side 69
この曲のリード・ヴォーカルはベーシストの洞口信也で、彼のバリトン・ウィスパー・ヴォイスが猥雑な光景をいっそう強烈にする。エロは彼の声のように腰が座っていないと味が出ない、適材適所の配剤が大成功のサーフ・サウンド。
15パナールの島
コモエスタ八重樫プロデュースのトロピカル・チューン。横山剣のソロ的な曲だが、CKBの特色を消化した上でのプロデュース・ワークになっている。それでいて激しく主張する八重樫イズム、それぞれの個性がうまく調和した作品だ。
16金龍酒家 (チンロンジュウジャ)
16ビートのお手本のようなベース・ラインにのったヒーリング・ソウル。トリオ・ザ・ドッグ・ホーンズのホーンが南国のチャイナ・タウンを浮かび上がらせる。最後は男も女も悲しくなってしまうオチに胸がざわめくだろう。
17eye catch/The Sound of Yokohama Yokosuka
ベースの音色がかっこいい4ビートにのって「ヨコハマ・ヨコスカ・CKB」と一節。好きなものを3つ挙げなさいと言われたら、心ある人はこの3点セットを答えるべし。間違っても「巨人・大鵬・卵焼き」などと言わないように。
18横顔
シタールが美しい正統派ソウル。そういえばCKBってベタなバラードがないな、と感じて欲しい曲。バラードにしなくたってスウィート・ソングは作れるんだ、と教えてくれる。安易な演出にくみしない横山剣のインテリジェンスだ。
19ボサボサノヴァノヴァ
CKBのロック・サウンドを支えるギタリスト、新宮虎児の自作自演作。曲としての体(テイ)はなしていない未完成作品の本曲だが、いずれCKBの完成品として世に出るであろう。「ボサ・ノヴァ、ボサボサ」のつぶやきに髪を整えたくなる。
20eye catch/Let's Go CKB
アルバム『777』最後の最後でファイト一発のインタールード。通常、アルバムの20曲目にもなれば、店じまいを意味するものが多いが、CKBはここで気合いを入れなおす。リスナーも思わず襟を正さずにはいられない根性曲だ。
21あ、やるときゃやらなきゃダメなのよ。 (Sunaga t Experience's du bop remix)
“レコード番長”須永辰緒のプロデュースで、CKBの交友関係の広さを曲が物語っている。演奏陣はCKBのメンバーではなく、シングル・ヴァージョンとは違った生演奏が聴ける。アルバム『777』の最後にふさわしい強力なプレゼントだ。