ガイドコメント
90年代のみならず、ロック名盤の1枚といえる91年発表、メジャーのゲフィンからのデビュー作(2nd)。ガービッジのブッチ・ヴィグとバンドのプロデュースで、グランジの代名詞的必聴作。
収録曲
01スメルズ・ライク・ティーン・スピリット
全世界にその名を知らしめた、ニルヴァーナの代表曲。鬱屈したティーンの現状を歌ったエモーショナルなカート・コバーンの歌声、炸裂するギター、勢いよく打ち鳴らされるドラム、繊細で美しいメロディ。すべてが時代と符合した。
02イン・ブルーム
チャド・チャニング時代の楽曲を、デイヴ加入後の91年に再録。デイヴの高音コーラスが印象的な、キャッチーでパワフルな曲調が曲調が魅力。歌詞の意味も知らずに歌う男を揶揄した歌詞が、ライヴでの大合唱を呼んだ皮肉めいた一曲だ。
03カム・アズ・ユー・アー
エフェクター“スモール・クローン”をフル活用し、クリアな音色を折り重ねた幽玄な音世界を構築したナンバー。幾重にも重なったベースも深い余韻を醸し出す。“銃は持っていない”と歌う一節も、今では別の意味合いを持つ。
04ブリード
キャッチーでパンキッシュな小気味よいナンバー。粗めのサウンドの中で際立つベースの歪み具合が絶妙。カートのギターは左右のチャンネルを移動し、不意打ちを狙う。当初のタイトル「Imodium」は、著作権を考慮し変更。
05リチウム
静から動へと転じるおなじみの曲調だが、あくまで速度の維持に固執した演奏が独自性を放っている。そこから生まれるグルーヴにも、他のニルヴァーナ作品にはない新たな旨味がある。歌詞に描かれたカートの宗教観も興味深い。
06ポーリー
14歳の少女がレイプ・殺害された実際の事件を新聞で読んだカートが、淡々と歌うアコースティック・ナンバー。ソングライターとしての冒険心が犯人視点での歌詞を書かせたが、良識派からはレイプ肯定だと非難を浴びた。
07テリトリアル・ピッシングズ
ニルヴァーナの全曲中、最高速を誇るエモ・パンク・ナンバー。冒頭ではクリスが、ヤングブラッズの全米ヒット「ゲット・トゥゲザー」(69年)を楽しげに歌っている。簡潔で短い歌詞の中にも、カートのフェミニスト的視点は満載。
08ドレイン・ユー
ストレートなラブ・ソングを装った二重三重に深読み可能な歌詞を、ハード・ポップなメロディに乗せた好曲。シンプルな曲調が急変するのは1分30秒近辺。おもちゃの人形を鳴らすなど、自由度の高いパートが挿入されている。
09ラウンジ・アクト
カートがかつての恋人トビー・ヴェイル(ビキニ・キル)を歌ったクールなナンバーで、クリスのメロディアスなベース・プレイが最後まで魅力を放ち続ける。歌詞は、“生涯インディ・バンド宣言”とも解釈できて興味深い。
10ステイ・アウェイ
オムニバス『DGC Rarities Vol.1』で聴ける、「Pay To Play」の歌詞変更再録ヴァージョン。ギター・リフを筆頭に血気盛んなバンド・サウンドが展開される攻撃的ナンバーで、“神はゲイだ”と歌う一説も。かなり挑発的だ。
11オン・ア・プレイン
何の構想も持たないまま作詞に励む自分の姿を、孤独な少年時代の情景に織りまぜたメタ文学的作品。キャッチーなフックを数珠つなぎしたメロディに、ドキュメンタリー性あふれる斬新な歌詞が魅力。どちらも興趣に富んでいる。
12サムシング・イン・ザ・ウェイ
これ以上は無理だろうと思われるほど抑えられたドラミングなど、歌も演奏も静謐紙一重のナンバー。息詰まるサウンドの一体感が、沈鬱な雰囲気を演出している。曲終了から約10分すると、ノイジィな隠しトラック「Endless Nameless」が登場。