ミニ・レビュー
2作目。カヴァー(4)やカニエ・ウエスト制作の(5)、自作の(6)(9)などでは血肉となっている70年代ソウルをストレートに表現する一方、ティンバランド制作の(3)、NAS、ラキムと組んだボーナス(16)なども収録。何をやってもむき出しのロウな感情は気高く根性がある。★
ガイドコメント
ニューヨーク出身のR&Bヴォーカリストの2作目。カヴァー曲「ウォーク・オン・バイ」、カニエ・ウエストやディンバランド制作曲のほか、70年代ソウルをストレートに表現した雰囲気のものが並んでいる。
ガイドコメント
グラミー5冠に輝いた傑作『ソングス・イン・Aマイナー』に続くアリシア・キーズ待望の2ndアルバム。今回もヒップホップとソウルとが高いレベルで融合した作品となりそう。先行リリースの通常盤のほか、DVD付き限定盤は12月10日に予定。
収録曲
01HARLEM'S NOCTURNE
ノクターンの名の通り、夜の静けさの中で込み上げる情感を美しいピアノの調べに乗せた、アルバム『ダイアリー・オブ・アリシア・キーズ』のオープニング・インタールード。終盤への畳み掛けるような旋律の波が鼓動を高ぶらせる。
02KARMA
タイトルは梵語で“業”と何やら堅苦しいが、過去に捨てておきながら今さら元に戻りたいと願うかつての恋人へ「自業自得よ」と切って返す内容。きりもみのようなストリングスと、決断した女の強さを描く迫り来るボトムが印象的なミディアム・チューン。
03HEARTBURN
ティンバランドとの共同プロデュースによるファンキー・ソウル・チューン。身体に稲妻が走るような恋の衝撃を、タイトルのごとく熱情的に歌う。物怖じしない腰が据わったタフなヴォーカルが、リスナーをノック・アウトさせること間違いなしだ。
04IF I WAS YOUR WOMAN/WALK ON BY
グラディス・ナイト&ピップス「イフ・アイ・ワー・ユア・ウーマン」の歌詞を替え、アイザック・ヘイズ「ウォーク・オン・バイ」を合わせたラブ・ソング。原点のソウル・クラシックスを衒いなく描いた制作陣には、イージー・モー・ビーとドゥエイン・ウィギンスも参加。
05YOU DON'T KNOW MY NAME
デビュー作でいきなりグラミーを獲得した天才女性R&Bシンガーの2ndアルバム『ダイアリー・オブ・アリシア・キーズ』からの先行シングル曲。ピアノの調べに始まり、空気を切り裂くような美しいヴォーカルが心に響く。
06IF I AIN'T GOT YOU
冒頭の恋の衝動を予感させるような生ピアノの旋律で心を持っていかれるラブ・ソウル・バラード。3拍子で訥々と流れる前半から、“あなた以外は何も要らない”と情熱的なハスキー・ヴォイスで歌い上げるクライマックスへの展開が絶品の、アリシアの代表曲。
07DIARY
クラシカルなピアノの旋律にウーリッツァーとオルガンが絡む、アンニュイな雰囲気が漂うソウル・チューン。バックにはトニー・トニー・トニーをフィーチャー。“489-4608にコールして”の詞にファンからの電話が相次いだという逸話もあるラブ・バラード。
08DRAGON DAYS
恋しい男からの愛情に飢えた、女の火照るような情感を歌ったミディアム・チューン。ピアノのグリッサンドが進むなかで絡んでくる乾いたギターの音色とドラム・プログラミングのアクセントが、人間の悲しい性をチクチクと刺激してくるようだ。
09WAKE UP
悲壮感が募るストリングスから幕を開けるミディアム・バラード。争い合うだけの存在になった恋人同士の苦悩をクラシカルなソウルに乗せて歌う。“状況を把握してお互いに目を覚まさなきゃ”という“ウェイク・アップ”のコーラスが優しく響く。
10SO SIMPLE
心が離れてしまった恋人同士の状況を、出会った頃のようにシンプルに愛し合えたらと嘆くネオ・ソウル風ミディアム・チューン。アリシアの声を早回し加工して作った“リロウ”という別キャラクターをフィーチャーした、趣向を凝らした作品。
11WHEN YOU REALLY LOVE SOMEONE
“どんな時でも愛するのが、真の男であり女なのよ”と歌うミディアムR&Bナンバー。「イフ・アイ・エイント・ガット・ユー」のようなスタンダード・バラードだが、感情の波が押し迫るようなヴォーカルに強い信念が宿る、アグレッシヴな1曲。
12FEELING U, FEELING ME
アルバム『ダイアリー・オブ・アリシア・キーズ』に収録のインタールード。フェンダーローズ・ピアノをフィーチャーした、ライヴ・セッション感を醸し出したブルージィなソウルで、“あなたは私が好き? 私は好きよ”とささやくスウィートなナンバー。
13SLOW DOWN
美しいピアノと重なる“チッチッチッチッ”という秒針のようなビートが印象的なミディアム・ソウル。“一線を越える前に、もう一度じっくりと愛を育みましょう”と、落ち着いたコーラスと艶のあるヴォーカルとのハーモニーで官能的に歌う。
14SAMSONITE MAN
「居場所を捜し求める旅人」のような恋人に、“荷物をまとめて出て行って”と訣別を迫るミディアムR&Bチューン。マイナー調ピアノ・コードとギターが倦怠感を漂わせている。題名は、バッグのブランドで著名な「サムソナイト」からイメージされた造語。
15NOBODY NOT REALLY
サックスとフルートが醸し出すアーバンな雰囲気など、生音を活かしたサウンドが特出した、AOR風ともフュージョン風ともいえるナンバー。“私に共感してくれる人なんていない”という、スターの苦悩を吐露したような詞が、痛烈に突き刺さる。
16STREETS OF NEW YORK
ナズ「NY State Of Mind」を再構築し、ナズとラキムをフィーチャーしたヒップホップ・ソウル。“9.11”以降の惨状や腐りきった街を嘆くも、ニューヨークへの愛と希望を綴る。アリシアのヒップホップ・フィールドへの順応性を感じる作品。