ミニ・レビュー
2002年と2003年にリリースしたインディ盤よりセレクトしたプレ・メジャー・デビュー作。決して洗練された音ではないが、武骨なグルーヴや飾り気のない歌がかえって、このバンドのささやかな心象風景を鮮明にイメージさせる。“和”の雰囲気も心地よい。
ガイドコメント
聴覚と視覚を同時に刺激するライヴで人気の高い彼ら。メジャー第1弾となる本作は、インディーズ時代のミニ・アルバム2枚から7曲を選び、録音し直したもの。「茜色の夕日」は必聴だ。
収録曲
01茜色の夕日
聖歌的なオルガン調のキーボードが曲を優しく包む、ほんのり温かみが宿る郷愁歌。夕日が無責任に駆け巡らせるさまざまな想いは多種多様だが、それらを上手に真空パック。その光と似通ったぼんやりとした語り口には、言葉で表現できない感情があふれていて、思わず心をつかまれる。曲全体のムード作りが素晴らしい名曲だ。
02花屋の娘
男の妄想ムンムンで駆ける恋物語。そのヒロインは、上品で艶かしいフラワー・ドール。小気味良く跳ねる鍵盤と併走するカッティング・ギターが絡み合っての爽快グルーヴは、ちょっぴりダークな味付け。詞の退廃ぶりとマッチして、疾走感はさらに加速して止まらない。ブレイクのきっかけにもなった彼らの代表曲。
03線香花火
タイトルからしんみり系と思いきや、裏腹にファンクなロック・ナンバー。リズミカルでトリッキーなビートを作り出すベースと小突くようにワウを効かせるギターが主役。それでいて胸をかきむしるような節も登場する、奥深い偏屈さ。うつむいたアナタへの励ましとも自分へのメッセージとも取れる、ある意味自分勝手ソング。
04ダンス2000
つまらないプライドを持った現代人に、直撃気味に捧ぐダンス・ナンバー。ベースはクールにラインを辿り、電子狂鍵盤はミラーボールばりにギラついて、ダンスを誘う。足踏みもいいけど、道を切り拓くにはいいかげん振り切って踏み出してみたら? 乱暴な言い方をすれば、そんなメッセージが込められた警鐘歌。
05環状七号線
やるせなさやもどかしさの気持ちを抱えて、環状七号線をひた走る男。その孤独と黄昏れっぷりがやけに生々しくて、つい浸ってしまう。自暴自棄な気持ちが延々と巡る独りの時間の繊細な心模様というのは、人それぞれで非常に滑稽だ。人それぞれであるはずなのに感情移入してしまう魅力にあふれた楽曲だ。
06浮雲
途方に暮れる男のさまを、浮雲にたとえた情緒ある悲恋ソング。繰り出される根深いダウナー・ビートは、絶望感たっぷりに胸に突き刺さってくる。泣きのメロディは、未練がましく惑う感情をつぶさに表現している。自分自身に向けて発せられる、物憂げな叫びがなんとも切なく痛い。孤独が全面に浮き出たような、ムード作りも秀逸だ。
07笑ってサヨナラ
失恋。その後に自責の念にかられた男は悩み、果てしない渦の中をぐるぐると廻る。答えの出ない答えに迷う。そんなもがき苦しむさまを描いた、7分にも及ぶ大作。禅問答のような詞は気持ちがストレートにあらわれていて、わざとらしくない。すさんだ心をいたわるような優しいメロディに、思わず涙腺が緩んでしまう。
仕様
※〈CDエクストラ〉内容:メンバー紹介スクリーンセーバー