ミニ・レビュー
95年のメジャー・デビュー作から2003年の『THEATRE BROOK』までの曲をメンバー自身がセレクトしたベスト盤。ニューヨークでリマスタリングされており、オール・カラー52ページの豪華ブックレット付きだから全CDを持っているファンも必携だろう。
収録曲
[Disc 1]
01ドレッドライダー
強力なグルーヴを体感できる16ビート・ファンク。全編にわたって躍動するアンサンブルが展開されるが、特に終盤の“強く”の連呼から粋なギター・ソロへの展開は鳥肌モノ。本曲でファンになった人も多い人気の高いナンバー。
02Bring Some Water
アコギの弾き語りで始まるミディアム・ファンク・ロック。次第にエモーショナル度を増していく佐藤タイジのヴォーカルが魅力で、後半クライマックスではライヴのような臨場感さえ醸し出す。歌詞は枯渇した愛がテーマ。
03ありったけの愛
ファン人気の高いグルーヴィなラテン風ナンバー。ベースとのユニゾンからバック・コーラス、終盤のスキャットまで、金子マリを大々的にフィーチャー。歌詞は生命を育む太陽をモチーフにしていて、スケールが大きい。
04捨てちまえ
ライヴ映えするファンキーな骨太ロック。沸々とこみ上げるロック・スピリットをダミ声を交えて吐き出す佐藤タイジのヴォーカルと、それを支えるタイトなバッキング演奏のバランスが絶妙。時折顔を出すムーグ・シンセもいい味を出している。
05立ち止まって一服しよう
打ち込みトラックと美しいアコギが淡々と響きわたるミディアム・スロー・ナンバー。都会の喧騒から一歩退いて、人生をふと見つめ直すといった味わいの歌。スクラッチやスライド風ギターなどの隠し味も実にセンスが良い。
06野蛮なローソク
スタイリッシュさ際立つアダルト・コンテンポラリー・ナンバー。洒落たエレピと粘り気のあるベースがスムーズな雰囲気を演出するなか、微妙に左右を行き来する不思議なエフェクトのかかったヴォーカルが展開される。
07心臓の目覚める時
情熱的な愛を綴ったスパニッシュ/ラテン・ファンク。聴きどころはサビを繰り返す終盤の力強いヴォーカルで、佐藤タイジの深い愛に根ざした男のロマンティシズムが感じ取れる。ギター・ソロ中はサンバ風味にシフトするところも興味深い。
08TEPID RAIN
ライヴでもしばしば披露されるグルーヴィなミディアム・ファンク・ロック。ダミ声からファルセットまで、初期レニー・クラヴィッツを彷彿とさせる奔放かつ熱いスキャットが聴きどころ。タイトルは“生ぬるい雨”の意。
09夢のアキレス腱
落ち着きのある16ビートが心地よいポップ・ファンク。佐藤タイジの少し力の抜けたソフトな歌いまわしはポップなメロディと相性バツグン。またサウンドにもソロ・スペースが多いので、彼のギタリストとしての魅力も発揮されている。
10ノックしつづける男
“キミ”を諦めないという強い想いをストレートに歌った疾走ロック。アンビエントなイントロからコーラスとドラムだけのポップな間奏まで、骨組みはシンプルながらも多様な展開を見せる。演奏も臨場感たっぷりだ。
11五反田ディレイセンター
ダンサブルなインスト曲。甲高いスネアを交えた4つ打ちビートを基調に、やや抽象的なギターとスペーシーなシンセが繰り広げられる。タイトルにある“ディレイ”エフェクトは主に左チャンネルのギターに使用されている。
12純粋無垢
エレクトロニカやAORなどの要素を嫌味なく採り入れたミディアム・バラード。過去や未来に思いを馳せながらも、“今”という瞬間の大事さを認識する美しくも切ない歌。佐藤タイジの声のサンプルの使い方が絶妙。
[Disc 2]
01TYPHOON SHELTER (Short Version)
TVドラマ用に書かれたサントラのメイン・タイトル曲。ブルージィなギターを中心としたインストよりの楽曲で、元コーザ・ノストラの鈴木桃子が歌う物憂げな旋律が、曲全体に倦怠感のような空気を漂わせている。
02オレタチフューチャー
5thアルバム『THEATRE BROOK』から先行リリースされたダンサブルなエレクトロニカ。彼らにしては極めてキャッチーかつポップなナンバーで、歌詞も未来永劫の愛を願う純粋でわかりやすい内容だ。
03まばたき
コンテンポラリーなソウル・ファンク。サビの“ドアを開け一歩踏み出せ”に象徴されるように、人生のさまざまなシーンでそっと背中を押してくれるような勇気注入ソング。シングル・リリースもされた人気ナンバーだ。
04あふれ出すばかり
リリース当時、全国のFM局を中心に話題となった初期の代表曲。“涙”“舐めて”を情感たっぷりに連呼するサビが印象的。ファンキーなカッティングからノイジーなソロまで、ギターが楽曲のカラーを決定づけている。
05乾き過ぎた風
シャッフル基調の重いブルース・ロック。絶叫も交え、ふり絞るように歌い上げる佐藤タイジのヴォーカルには、彼の奥底にある強い生命力が感じられる。後半に展開される土臭さ全開のギター・ソロも聴きどころだ。
06One Fine Morning
カナダの大所帯ファンク・ロック・バンド“ライトハウス”の代表曲のカヴァー。中條卓のうねるベースを軸にしたグルーヴィな16ビートを土台に、鈴木桃子をヴォーカルに迎えての伸びやかなロング・トーンが爽快に響きわたる。
07直射日光
シンプルなギター・フレーズのくり返しが特徴的な重めのロック・ナンバー。ロー・ファイなエフェクト処理を施したAメロからスケール感のあるサビへの展開と、恐怖心に悶える赤裸々な恋愛感情を綴った歌詞が絶妙にマッチ。
08約束の虹
ファルセットを交えた華やかなイントロで幕を開けるファンク・ロック・チューン。中條卓のスラッピング・ベースや吉澤昭広のスクラッチ、雨上がりの虹をイメージさせるシンセなど、細部にわたる緻密なアレンジが光る。
09先生どうしてキスの仕方まで教えてくれなかったんだ
遊び心あふれる賑やかなハード・ロック・ナンバー。微妙に音を外しているようにも聴こえるAメロや、なかなか終わらないエンディングなど、アイディアが満載。歌詞はタイトル以上のことにはあまり触れていない。
10俺の手にはギター
スタイリッシュなファンク・ポップ。リヴァーブを深くかけた奥行きのあるヴォーカルが、歌詞の舞台である冬の朝焼けを、温度を伴ったイメージとして脳裏に浮かび上がらせる不思議な1曲。生楽器と打ち込みのバランスも見事。
11無実の子
浜辺の波のようなSEで始まる静かなナンバー。アコギとタブラ(打楽器の一種)を主体とした温もりのあるバッキング演奏が情感豊かな歌だけでなく、“タスケテ”や“最後の逃げ道だった”といったキツめの言葉も際立たせている。