ミニ・レビュー
柴田淳のサード・アルバムはシングル曲(3)(5)を含む全11曲。もっと声を張りたいところの少し手前で、抑え気味に唄っているところが逆にドラマ性を高めて聴き手への浸透圧を強めている。粘っこさと乾いた味の微妙なバランスが、この人の最大の魅力ではないか。
ガイドコメント
発売以来ロングセールスを続ける『ため息』から、1年ぶりとなるアルバム。日常の出来事や等身大の恋愛を歌い上げ、優しい詞とメロディが深みを増した音世界に結実している。
収録曲
01少女
3作目のアルバム『ひとり』のオープニング・ナンバー。さらに円熟味を増した柴田淳ならではのミディアム・バラードだ。切ないメロディに力強いヴォーカルは、リスナーの耳を鷲づかみにする力がある。
02虹
しっとりとしたヴォーカルと美しいメロディが特徴の柴田サウンドとは趣を変え、8ビートの力強いロック・サウンドに仕上げた作品。柴田淳のヴォーカルの芯の強さが活かされ、意外にも絶妙なマッチングとなっているのが驚きの、新機軸といえるナンバー。
03未成年
オーソドックスなスロー・バラードながら、「未成年」の心情を綴った詞が印象的。現代社会へ対してグサリと突き刺すようなメッセージ・ソングは、“柴淳”の卓越した歌唱力やハイトーン・ヴォイスによって楽曲に奥行きと広がりを加えている。
04足跡 (Piano Solo)
柴田淳本人によるピアノ・ソロ。非常にスロー・テンポで、しっとりとした音使いがどことなく彼女の歌声に似ているかのよう。この1分半の挿入曲がアルバム『ひとり』の前曲の激しさをクール・ダウンさせ、次曲「かなわない」へとシーンを切り替えていく。
05あなたとの日々
変わらない毎日への倦怠感をしっとりと歌い綴った曲。優しいながらも強さを持ったヴォーカルが、シンプルなバンド・サウンドや心地良いメロディとマッチ。抑え目のAメロに映えるサビが、なんともドラマティック。
06かなわない
小刻みなドラムのビートとそれに絡むジャジィなギターが気持ち良いナンバー。艶やかでフラットな柴田淳の歌声は意外なほどアダルティで、そこに大人の女の色気と苦味という一面を含ませているのが魅力。
07夕日 (Piano Solo)
3rdアルバム『ひとり』には、3曲目の「足跡」の他に、この「夕日」が2曲目のピアノ・ソロとして挿入されており、どちらの曲もシーンを切り替える重要な位置にある。眠りを誘うオルゴールのような温かいメロディが美しい。
08雪の音
淡々としたイン・テンポなドラムのリズムが印象的。力み過ぎない安定感あるロー・ヴォイスが、低音を中心に厚みのあるサウンドと相性良く溶け合い、上手い具合に雪の季節の寒々とした街の情景を描き出している。
09コンビニ
泣きのメロディを奏でるピアノのイントロから、優しく溶け込んでいく柴田淳のヴォーカルが、唯一無二の妖艶さを感じさせる。ピアノとヴォーカルだけで綴られた、汚れなきピュアなラブ・バラードだ。
10今夜、君の声が聞きたい
ファルセット・ヴォイスが非常に効果的に使用され、柴田淳の歌唱力の高さを改めて感じさせるナンバー。ピアノやストリングスにより奏でられる美しい旋律に、彼女のヴォーカルが少しも埋もれることなく存在感を放っている。
11ひとり歩き
上手く伝えられない恋心を描いたナンバー。断片的でシンプルな短い言葉の連続がストレートに伝わって、切なく痛々しい。子守唄のように穏やかな横ノリのリズムやアンプラグド・サウンドが、その切なさを助長していくようだ。