ミニ・レビュー
カナダ人兄弟と日本人2人の編成によるエモーショナルなギター・ロック・バンドの初アルバム。仙台を拠点に活動し、すでに地元では好セールスの実績を打ち立てている。儚げな情感を巧みに描き、英語・日本語織り交ぜてノリよくさまざまな歌を聴かせるヴォーカルが面白い。
ガイドコメント
カナダ人の兄弟が日本語で歌うロック・バンド、Monkey Majik。仙台の1店舗のみで発売して13週連続1位を記録し、1300枚を売り上げた1stアルバムがいよいよ全国流通化。
収録曲
015.30
仙台でヒットした1stアルバム『SPADE』のオープニング曲。寂しげな雰囲気を醸し出すアコギの音色が印象的な落ち着いたナンバー。“コロコロと笑い”や“ペコリとお辞儀”など、オノマトペが味わい深い。
02i like pop
プラント兄弟のツイン・ヴォーカルの魅力が発揮された全編英語詞によるミディアム・チューン。兄弟ならではの息の合ったハーモニーや曲中盤のレゲエにも通じる軽快なラップなど、確かに日本人バンドにはない魅力を持つ。
03wait
どことなく切ないギター・フレーズが印象的なミディアム・ロック。歌詞も楽曲自体も邦楽と洋楽の両方の味わいが出た彼ららしい1曲。サウンドのバランスとアレンジがやや粗いが、それが臨場感という魅力にもなっている。
04すぐちかく
爽やかなアコギで始まるポジティヴな雰囲気のロック・ナンバー。サビ部分のツイン・コーラスが特に印象的。今日のJ-POPにおいて、この曲のように日本語とメロディが違和感なくマッチしている曲は意外に少ない。
05political believer
全編英語詞によるポップ・ロック・ナンバー。コード進行に微妙な違和感があるAメロ部分や、ヴォーカルの入らないサビらしき部分などが特徴的。目立たないながらも、彼らなりの斬新なアイディアが注がれた意欲曲。
06and i
切なさと僅かな爽やかさを兼ね備えた、彼ららしい哀愁ポップ・ナンバー。エレキ・ギターの特性を生かした叙情的なフレーズとどこか頼りないファルセットが特徴的。ポジティヴになり切れない歌詞も実に彼ららしい。
07靴の音
日常のふとした瞬間に感じる過去と未来を結ぶ、大きな時の流れを歌ったナンバー。都会の雑踏を連想させる歌詞と夢心地な雰囲気のサウンドがマッチ。何気ないが、聴き手を飽きさせない秀逸なアレンジが施されている。
08monica
彼らの楽曲の中では比較的自由度の高いナンバー。イントロSE部分のケータイのバイブ音やユーモラスなギター・ソロなどに、彼らの節操ある遊び心が感じられる。息つぎのない流れるようなサビのメロディが特徴的。
09フミダスチカラ
跳ねるリズムにチャレンジした16ビートのポップ・チューン。前進するために一歩を踏み出そうというポジティヴな歌詞やネイティヴならではのスキャットが特徴的。微妙にファンキーになり切れないあたりがチャーミング。
10don't you cry
ギターとヴォーカルのみによる、アルバム『SPADE』中唯一の弾き語りナンバー。コード進行はシンプルだが、表情豊かな歌唱でしっかりと聴かせる。「don't you cry」というフレーズが泣いているようにも聴こえる。
11風来
アルバム『SPADE』のラストを飾るゆったりとしたラブ・ソング。“間”を味わうような静かなAパートとバンド演奏によるサビ部分のコントラストが聴きどころ。3分にも及ぶ長いエンディングも聴きごたえあり。