収録曲
01PLEASURE IS ALL MINE
厳かで静かな歌い出しから、緻密で壮大なヴォイス・オーケストレーションが広がっていく。なおアルバム『メダラ』の作品は、ほぼすべてが人間の声で構成されているが、本曲のドラはその中でも数少ない本当の楽器である。
02SHOW ME FORGIVENESS
1分5秒という短い曲の中で、一切ごまかしのないア・カペラの歌声がこだまする。コーラスもプログラミングも装飾と呼べるものはほとんど何もないからこそ、ビョークという歌手の魅力があらわれている一曲。
03WHERE IS THE LINE
まず耳を引くのは元ザ・ルーツのラゼールのヒューマン・ビートボックス。単なるプログラミング・ビートをしのぐほどの豊かな音楽性を醸し出している。フェイス・ノー・モアのマイク・パットンのヘヴィな歌声との相性も抜群だ。
04vo:kuro- VヨKURモ -
アルバム『ヴェスパタイン』のツアーにも同行したIcelandic Choirをバックに、ビョークが独特の響きを持ったアイスランド語で歌いあげる荘厳なナンバー。常に自分自身のルーツを忘れない彼女らしい趣向だ。
05o:ll birtan- ヨLL BIRTAN -
アイスランド語で歌う、ミニマル・ミュージックのようにカットアップされたビョークの声がリフレインし、重層的にリズムを構成していく曲。とはいえ、聴後感は難解な感じではなく、むしろポップに感じられるのが、いかにもビョークらしい。
06WHO IS IT (CARRY MY JOY ON THE LEFT, CARRY MY PAIN ON THE RIGHT)
イヌイットのシンガーTagaqの歌声が電子音のように配置され、ラゼールのヒューマン・ビートが精緻に奏でられた、良質なエレクトロニカ・トラック。これがすべて人間の声だとは信じられないほどの完成度に感服。
07SUBMARINE
元ソフト・マシーンのロバート・ワイアットの声がどことなくフォーキーで、唯一無二の雰囲気を漂わせたナンバー。これほど独特な歌唱をする歌手と絡み、シンプルかつ良質なトラックを完成させられるのは、ビョークだけに違いないと思わせる。
08DESIRED CONSTELLATION
デジタルに加工された声が背後でエレクトロニカ的なメロディを奏でるなかで、ビョークの力強い歌声が四方八方に響いていく。新機軸満載のアルバム『メダラ』のなかでは、以前のアルバムまでの作風に近い一曲。
09OCEANIA
2004年のアテネ・オリンピックで披露されたナンバー。London Choirの凄まじいまでの高音部のキレ味と厳かなShlomoのヒューマン・ビートが織りなす世界観は、アルバム『メダラ』を象徴するかのようにディープかつ静謐だ。
10SONNETS/UNREALITIES 11
E.E.カミングスの心を揺さぶるような愛の詩が印象的。聖歌隊を思わせるコーラスと空間の広がりを感じさせるビョークの歌声が、神々しい雰囲気を創りあげている。曲構造はシンプルだが、それゆえに力強く美しい一曲。
11ANCESTORS
アルバム『メダラ』では珍しく、ピアノという声以外の楽器が使われている。この曲で改めて気付かされるのは、人間の声とピアノという楽器の親和性。性急さを持って繰り返される歌声と静かなピアノとの落差が美しいナンバー。
12MOUTH'S CRADLE
カット・アップ感の強いバック・トラックにIcelandic Choirの美しい歌声や動物的なTagaqの歌声が乗り、ラゼールのビートが全体を引き締めている佳曲。しかし、常にその中心で圧倒的な存在感を誇っているのはビョークのヴォーカルだ。
13MIDVIKUDAGS
アイスランド語で歌いあげる本曲は、同一のフレーズのリフレインからドローン感を生んでいく、ややミニマル・カラーのあるナンバー。短いながらも、聴いた後にしばらく頭から離れなくなるような中毒性がある。
14TRIUMPH OF A HEART
DOKAKAのヴォイス・パーカッションはコミカルで妖精のように、グレゴリー・パーンハーゲンのヒューマン・トロンボーンはおもちゃの兵隊のように、そしてビョークは女王のように力強く歌い上げる。ファンタジーのような雰囲気を醸し出しているユニークなナンバー。
15KOMID
多重・多方向から聴こえるビョークの声が、あたかも深い森に迷い込んだように聴く者の方向感覚を失わせる。日本版ボーナス・トラックだが、もともとオリジナルの『メダラ』に収録されていても何の不思議もないほど、全体の構成に調和している。