ミニ・レビュー
ちょっともったいぶった冒頭からしてバンドの勢いを感じさせる。ギターや声を幾重にも重ねたカラフルなサウンドや疾走するビートもいいが、最大の魅力はどんなサウンドにも負けないヴォーカルの強さ、そして、聴く者の胸に確実にドラマを届けてくれる歌詞だ。★
ガイドコメント
北欧神話において、世界の中心にある樹と言われる“ユグドラシル”をタイトルに掲げた、BUMP OF CHICKENのニュー・アルバム。オリコン・チャートで1位を獲得した「オンリー ロンリー グローリー」など傑作揃い。
収録曲
01asgard
02オンリー ロンリー グローリー
風切るギター・ストロークに4つ打ちバスドラと8分で刻むベースを絡め、確かな意思を持ったヴォーカルが言葉数多く喰らいつく。凛々しいシンセ音が新境地を示した、バンプまさかのダンス・チューン。
03乗車権
人生をひた走る満員バスに飛び乗る、という緊迫感に縁取られたナンバー。不安に曇るマイナー調のトラックが心の暗部をさらけ出し、細かく刻むカッティングをも飲む込む黒いグルーヴが既存のイメージを打ち破る。
04ギルド
05embrace
夏フェスで披露されるも、アルバム『ユグドラシル』に収録されるまで長い間暖め続けられた曲。それだけに人肌の温もりを宿し、なめらかなコードに身を任せのびのびと歌われるメロディが、聴き手をそっと包み込む。
06sailing day
冒険心の逸るまま大海原に飛び出した、パワー・ロック・ナンバー。運命という名の荒波を一丸となって越えてゆく4人のバンド・マジックが、主題歌に抜擢されたアニメ『ONE PIECE』のイメージにしっくりはまった。
07同じドアをくぐれたら
08車輪の唄
軽快なリズムにのった陽気なマンドリンと2分でルートを押さえるベースが浮き彫りにするのは、別れを迎えたふたりの情景。クールなくせにエモーショナルなストーリをはらみ転がる、バンプの泣き笑いラヴ・ソング。
09スノースマイル
失った君との想い出を、アコギで優しく弾き語る名バラード。徐々に楽器が加わり、フィードバックで広がるサビ。吐く息も白くふわり舞い降りる幻想的なコーラスが、枯れた落ち葉の上に一面の雪景色を描き出す。
10レム
11fire sign
ビック・アーティスト然にゆったり構える大らかな旋律と、歌中心に作られたミドル・ナンバー。かつては奇をてらったコード展開も、シンプルに歌声を際立たせることに徹し、歩んだ道を振り返る余裕すらみなぎる。
12太陽
13ロストマン
クリーン・トーンのアルペジオで理性的に幕を開け、ドラムがもたらす高揚感とともに緩やかに迫るドラマティック・バラード。4人の色褪せない情熱が、果てしないランドスケープを描き出す。
14midgard