ミニ・レビュー
トリオ編成のロック系バンドのフル・アルバム。ディレイやダビングを駆使した厚みのあるギターの音が支配的だが、それを支えるトランシーなベースと小ワザの利いたドラムが本当の聴きどころかも。渋々としたループ的な曲構成はロックよりむしろクラブ寄りか。
ガイドコメント
シングル「equal e.p.」に続くアルバム。“あらゆる色の生命をイコールで繋ぐ”という壮大なテーマを表現した力作だ。携帯電話の着うたにも使用されたリード曲「イコール」を収録。
収録曲
010=ALL
無音状態から、透明感のあるキラキラしたギター、小刻みに叩かれるドラムが徐々に厚みを増し、加速していく。それはまるで一つの点からビックバンが起こり、宇宙が誕生したかのようだ。始まりの予感に胸が高鳴るインスト・ナンバー。
02FREAK OUT
勢いよく始まる轟音ギターとドラムが核となってテンポ良く進んでいく。詞にちりばめられた韻を踏んだ言葉たちが、静かなヴォーカルのバックで激しくうごめくサウンドとともに、その加速度を増幅させるようだ。
03降る秋
大人びた落ち着きのあるギターが奏でるサウンドが上品な雰囲気が漂わせるのもつかの間に、咆哮が始まる。夕日の情景が目に浮かぶような切ないコード進行の上で、どうしようもない苛立ちを抑えきれず、空へと叫びたくなるような絶望感を示したナンバー。
04イコール
2ndアルバム『equal』からの先行マキシ・シングル(トリプルA面)。トリオという最小限の編成で骨太なロックを聴かせてくれる。ヴォーカリスト・大木伸夫の掻き鳴らすリッケンバッカーのギターの響きが心に刺さる。
05水写
トリプルA面シングル「水写」のオープニングを飾る一曲。轟音の中に秘めた焦燥感と、強いロックへの衝動を感じる一曲。外資系レコード店でチャート1位を記録、バンドの存在感をアピールした。
06彩-SAI- (前編)
静寂な夜の景色を想起させる耽美なギター・フレーズのループから、ドラムが変拍子風の複雑なリズムに変わる展開がドラマティック。速打ちドラム、透明感のあるギター、丸みを帯びたベース音、その絶妙な絡み具合が神秘的なインストゥルメンタル・ナンバー。
07彩-SAI- (後編)
艶っぽいヴォーカルと繰り返し奏でるリバーブがかかったギターの重なりが、まるで川を漂っているようで漂流感を覚える。「彩-SAI-(前編)」のギター・フレーズとリンクさせ、2部作としての壮大な物語を意識させているナンバー。
08暁を残して
「創造の果て」で握り締めていた「暁」は、栄光、希望もしくは胸に秘めた闘志なのか。サビでの叫ぶようなヴォーカルや、かきむしるように演奏されるサウンドが、胸を締めつけてやまない。ライヴで聴いたら、たまらず拳を上げたくなりそうなナンバーだ。
09colors of the wind
ギターとヴォーカルのみで始まり、リズム隊も控えめに……と思った瞬間に、3人の楽器が激しく鳴らされ、彼ららしいロック・ナンバーへと変貌する。アラン・メンケン作曲、ディズニー映画『ポカホンタス』劇中歌のカヴァー。
10migration 1064
チッチッと始まるドラムのシンバルの音や、キラキラしたギターの音がまるで宇宙のようだ。それに漂うヴォーカルと柔らかなベースが絡んで、歌詞からも宇宙と生命の神秘を感じさせる、6分を超える壮大なナンバーだ。
11cps
淡々としたドラムと空間を浮遊しているようなギター・リフによるシンプルな演奏が、寂れた街の風景を想起させるインストゥルメンタル・ナンバー。アルバム『equal』の壮大なイメージを掲げた、エンディングへ向けての1分半のイントロダクション。
12廻る、巡る、その核へ
輪廻、転生などの壮大な世界観をゆったりと歌う大作。後半から響く轟音ギターと激しく叩かれるドラムは、まるで眠れる魂が「現生」を求めて、再び「命」を得るため胎内から新たに宿っていく瞬間のように、神秘的で活力みなぎるサウンドを形作っている。