ミニ・レビュー
キャメオ、ピンク・フロイドといきなりのカヴァーの2連発には驚かされたが、その後は時代を遡りながら“横綱”の10年が刻まれている。また、2003年のCBGBライヴの模様を収めたボーナスDVDも凄まじい。格の違い、貫禄を改めて実感したが、次の一手も気になる。
ガイドコメント
90年代のオルタナティブ・へヴィ・ロックの雛形を作ったカリスマのベスト・アルバム。弟分であるリンキン・パークのヴォーカルのチェスターも1曲参加。
収録曲
[Disc 1]
01WORD UP!
ファンク界の大御所、キャメオの80年代のヒット曲のカヴァー。意外なセレクトに思われるが、以前からライヴ時のサウンド・チェックで使用されていた楽曲で、弾けるファンクネスが彼ららしくクールにきまっている。
02ANOTHER BRICK IN THE WALL (PARTS1, 2, 3)
メンバー全員がファンであるピンク・フロイドの『ザ・ウォール』からのナンバーを大胆にアレンジした大曲。3部に分かれた原曲を一つにまとめて再現したアイディアが面白い。料理するのが難しい素材を自己流のアートとして見事に完成させている。
03Y'ALL WANT A SINGLE
ヒット曲を大量生産し、使い捨てするポップ・ミュージック界を糾弾するアンチ・ソング。その主張どおり、クセが強く万人受けは望めない(かもしれない)ナンバーながら、シングル・カットされ、過激なPVとともに業界を挑発し話題となった。
04RIGHT NOW
サビはキャッチーであるが、怒りと憎悪の念がとぐろを巻く、激重ヘイト・ソング。中間で、つぶやきが絶叫へと変わり、ヘヴィな鳴りと一丸となって爆発する展開は何度聴いてもゾクゾクする。いかにもKORNらしいゴリゴリした感触のナンバー。
05DID MY TIME
映画『トゥームレイダー2』のテーマとなったミドル・テンポのナンバー。エフェクトをかましたヴォーカルをはじめ、全体に浮遊感が漂う非常にメロウなサウンドはあっさりしていて聴きやすいが、ファンの間では物足りないとの声もあった。
06ALONE I BREAK
「すべてから逃げてしまいたい」と、暗闇で一人もがく孤独な心を表現したダークなナンバー。電子音を使用したサウンドは、ナイン・インチ・ネイルズに通じる耽美的な雰囲気と閉塞感を漂わせている。新境地を切り拓いた1曲。
07HERE TO STAY
大胆に方向転換した『アンタッチャブルズ』の中でも数少ない従来路線の激重ナンバー。虐待などアメリカの少年たちが抱える問題点を怒れる歌と破壊力抜群のサウンドで表現しており、見事にグラミー賞を受賞した。
08TRASH
沈み込む暗さと退廃的な空気がねっとりとまとわりついてくるヘヴィなトラック。暗闇の中で光を探してさまよっているかのような寂しげなヴォーカルは、控え目ではあるが、嗚咽や咆哮と同等の衝撃があり、ジョナサンの表現者としての成長がうかがえる。
09SOMEBODY SOMEONE
静と動を巧みに使い分けたスケールの大きいサウンドが加速。最後にはこれ以上ないほどの激重音へなだれ込み、聴き手を底なしの暗黒世界へと引きずり込む。なんとも捉えどころのない不安感も含め、これぞKORNの真骨頂といえるナンバー。
10MAKE ME BAD
サウンドはシンプルで控え目だが、狂おしいほどの情念を搾り出すように歌うスピリチュアルなヴォーカルがあまりにも衝撃的な楽曲。フェイド・アウトの物悲しい余韻がいつまでも胸に残る。
11FALLING AWAY FROM ME
これぞKORN節といえるへヴィ・チューンであるが、情念と激情の吐き出し方がそれまでとは明らかに違う。衝動だけではなくどこか醒めた感覚を保ったヴォーカルは、一撃必殺の殺傷力はなくとも心のひだに絡みつくような妖しさを放っている。
12GOT THE LIFE
一度聴いたら耳から離れない印象的なイントロにテンションがあがる。バッキバキのスラップ・ベースをフィーチャーしたサウンドは、ある意味ダンサブル。歌メロもキャッチーな、シンガロングしながら踊れるノリのよいナンバー。
13FREAK ON A LEASH
TV-CFにも使用された、最もポピュラーな代表曲。歪んだヴォーカルと浮遊感のあるサウンドが、音楽業界に辟易した心情を表わしているかのようだ。聴き取り困難なスキャットが炸裂し、攻撃性を増す間奏から後半にかけての展開は鳥肌もの。
14TWIST
発表当時“宇宙語”とも呼ばれた、誰にも真似できない歌詞を度外視した奇妙なスキャットがのたうちまわるキラー・チューン。ジョナサンの抱えていたルサンチマンを原動力とする、短かいながら異様なインパクトを与える初期KORNの代表曲。
15A. D. I. D. A. S.
フリーキーなギターやトリッキーなベース、独自のリズムが融合した、エキセントリックでグロテスクな感触の初期KORNサウンドを象徴する楽曲。タイトルになっているブランドの3本ライン・ジャージをジョナサンが着用し、ファンの間でそのファッションが流行した。
16CLOWN
『KORN』の中では印象が薄めだが、ベスト・アルバムにセレクトしたということは、本人たちにとっては思い入れが深いのだろう。地べたを這いずりまわるようなグルーヴと心の膿を吐き出す病んだ歌が残す後味は、なんともうす気味悪い。
17SHOOTS AND LADDERS
バグ・パイプが響くイントロで知られるナンバー。『マザーグース』など幼い頃に読み聞かされた童謡のフレーズを挟みこみ、ファンタジックで楽しげな雰囲気を作っているが、中盤から顔を出すトラウマ爆発のクレイジーな雄叫びは苦痛に満ちている。
18BLIND
冒頭の「アー・ユー・レディ?」という叫びでKORNの時代は始まった。憤怒をまきちらす歌唱、7弦ギター、5弦ベースをダウン・チューニングした重すぎる音が奏でる不協和音。すべてが斬新でそれまでのヘヴィネスの概念をぶち壊した。
19FREAK ON A LEASH
シングルにカップリングとして収録されていた既発のリミックス・ヴァージョン。ダンサブルに生まれ変わった曲の表情はクールなフロア仕様であるが、原曲の切ないムードは失われていない。彼らの数あるリミックスの中でも良質な作品。
[Disc 2]〈DVD〉〈LIVE AT CBGB〉
01ライト・ナウ
02ヒア・トゥ・ステイ
03ディドゥ・マイ・タイム
04ガット・ザ・ライフ
05フリーク・オン・ア・リーシュ
06フォーリング・アウェイ・フロム・ミー
07ブラインド