ミニ・レビュー
振り幅の多様さと、巧みなメロディ・センス。ヒップホップからロック、そして王道J-POPまでを上手く融合させており、実に退屈しないノリでもっていける感じが素晴らしい。彼らのアルバムを聴いていると、「音楽なんてシンプルに楽しめばいいじゃん」と言われているよう。
ガイドコメント
「花」などメガヒット・シングル4曲を含む、オレンジレンジの2ndアルバム。前作『1stCONTACT』を上回るヴァラエティに富んだ内容で、彼らのパワーと勢いを余すことなく詰め込んでいる。
収録曲
01KA・RI・SU・MA
ある年齢から上の世代の脳裏に“お立ち台”なる遺物を思い出させてくれるサイバー・トランスなインスト曲。1分にも満たない短い曲ながら、聴き手の居場所を瞬時に六本木ヴェルファーレへと変えてくれる疑似体験効果も。
02チェスト
稀代の軽薄脳天気ソング「ロコローション」のヒットを受けて発表された重厚ラウド・チューン。“牛殺し”で知られる空手家・大山倍達が発する気合い「チェスト」を引用することで、持ち前の脳天気さに攻撃性が加わっている。
03ロコローション
賛否両論を呼んだとは言え、21世紀の今になってシャンプーの「トラブル」をネタに引用するセンスがやはり尋常ではない大ヒット曲。平成軽薄体全開の突き抜けた脳天気サマー・チューンは、「馬鹿になれ」の猪木イズムも内包。
04以心電信
国語の試験で誤って「以心電信」と書いてしまうファンもいそうな、軽妙でキャッチーなテクノ・ポップ。タイトルがYMOの名曲「以心電信」と同じなのは、じつはテクノが好きに違いない某メンバーなりのオマージュなのかも。
05ZUNG ZUNG FUNKY MUSIC
ドリフターズ(はたまた氷川きよし)の「ズンドコ節」をミクスチャー・ロックとして再構築した、その発想力と行動力に恐れ入るオキナワン・ファンク。ときおり挿入される奇声「アーオ!!」の脳天気さも含めて、彼ららしい一曲。
06パディ ボン マヘ
『素晴らしき世界旅行』でしか目にしたことのないようなどこかの部族の儀式、あるいは『ジャングル黒べえ』を思い出させる謎のインスト曲。遠くから聞こえてくる動物の声が、イヤでも聴き手の“火あぶり”感を助長する。
07シティボーイ
雑誌『LEON』発の流行語“乳間”の魅力・効力を盛り込んだディスコ・ナンバー。ディスコ全盛の70年代を、メンバーが“想像して”作品化したようなこの曲には、内田裕也からゲイ・ディスコまでさまざまな隠し味が仕込まれている。
08謝謝
竹上良成の吹くサックスが楽曲全体をアーバン・ジャズな香りで包んでみせる一曲。彼らのパブリック・イメージであろう脳天気なイメージとはまるで正反対な思索的で物憂い歌詞が、アダルティなサウンドとスタイリッシュに絡まる。
09男子ing session
立川談志一門のイベント名「談志ingオールナイト」にも負けない脱力級タイトルの不夜城ディスコ・ファンク。“イッキ”に“ピロピロ”と、いにしえの呑み会文化も取り込んだ平成「酒飲み音頭」。頭の中を空っぽにして聴かれよ。
10Beat Ball
大半が変化球攻めで構成されている彼らの楽曲の中でも最上級にヘンな構築美を誇っているのがこの曲。歌詞でも歌われているとおりの、“タララン”としたリズムに付き合っているうちに虜に。そんなファンの姿も目に浮かぶ妙な曲。
11ミチシルベ〜a road home〜
この曲を耳にしたことが、迷う進路を決めるきっかけになった中高生も多かろう決断後押し、前向き系バラード。彼らにしては珍しく正攻法なトラックで挑んだレンジ初のバラード曲には、後続曲「花」にも通じる平易な魅力がある。
12花
“「花」=喜納昌吉 ”のお株を奪ったであろう大ヒット曲。デビュー以来、変化球シングル連発だった彼らが、「ミチシルベ」路線をさらに深化させて歌った真っ正直な恋愛歌。バックに流れるストリングスがズルいくらいに感情を揺さぶる。
13FULL THROTTLE
文字どおりアクセル全開で奔り抜ける2分弱のハードコア・チューン。日本列島まだまだ騒ぎ足りないと、爆音で皆の衆を煽りまくる一方で、「指差すと噛まれる」と、ハブへの注意を沖縄方言でうながす小ネタも忘れない。
14祭男爵
大太鼓の音、和風なサウンドと合いの手。とにかく祭りへの高揚感が熱く伝わり愉快な気分にさせられる、男の祭りの歌。曲の展開が実に細かくてユニークな仕上がりとなっている。
15papa
日本音楽史上で初めて“マレーシアン・ジョーク”が使われた変化球ソング。“うっかり八兵衛”ならぬ“すっかりハチベエ”に「戻ってこい」と呼びかけるサビ含め、全編がシュール。仕事が忙しくてわが子に逢えないお父さん必聴。
16HUB☆STAR
ロック的要素が強いミクスチャー・ナンバー。誰も追いつけないリズムで走るビートが、まっすぐ曲へと盛り込んだ感じ。どんどん加速していく様子は、オレンジレンジのヒストリーをそのままを歌っているようだ。
17Oh!Yeah
下校時の十人十色なたそがれ感を、次々と曲調が変化するミクスチャー感覚いっぱいのサウンドで表現したファンク・ポップ。「Oh! Yeah」と掛け声だけは力強いが、実際には擦れ違うだけで声も掛けられない気弱な主人公。純愛だ。
18SP Thanx
自分がどう成長していくのか。親や友達、自然に見守られて考えをめぐらせている様子を、バラードにしてやさしく歌った。人はみなそれぞれの夢を求めていくべきという、希望あふれるメッセージ・ソング。
19ジパング2ジパング
アルバム『musiQ』の最後を締めくくっている悠久和風テクノ。ゆるやかになだらかに起伏した旋律は、彼らのファンよりも、むしろアンビエントな楽曲を好んで聴く人にこそウケそう。琉球のワビサビとヨーロッパ文化の融合だ。