半年近くの活動停止期間から復帰して発表されたアルバム『Cocoon』のイントロ。柔らかいピアノの音色とささやくようなより子の歌声に、力強くもどこか儚さを持ったアルバム全体のイメージが色濃く反映されている。1分足らずの短い曲だが、活動停止を経てさらにパワー・アップしたことがハッキリと感じ取れるナンバーだ。

ヴァイオリンとピアノの音色が芸術的に絡み合うポップ・ナンバー。耳なじみのよい軽快なメロディ・ラインや、屈折した思いをぶちまけるかのような力強い歌詞が印象に残る。ともすれば説教のように感じられるかもしれないが、共同体になじめずに不登校だった過去の経験などを持つ彼女が歌うからこそ、心に重く響くのだろう。

弾むようなピアノの旋律に“本音でぶつかれないなら やめちまえよ”と厳しい言葉を乗せながらも、その奥に隠れた慈しむような優しさが感じられるポップ・ナンバー。“苦しい時も投げ出さずに頑張ろう”というこの曲のテーマは、ありきたりかもしれないが、小児ガンと闘い勝利したより子ゆえの説得力と力強さがある。

今にも消え入りそうなより子の歌声が強く印象に残る、胸を締め付けるほどに切ないバラード。かつての恋人への思いを赤裸々に綴ったような歌詞は、実際のモデルがいるとのこと。ところどころで挿入されるヴァイオリンの響きが、曲に深みと味わいを加え、どことなく幻想的な雰囲気の楽曲に仕上がっている。

夢を追い続けながらもなかなか結果を出せず挫折しそうな人へ、“自分をダメだと思わないで”と元気づける優しいバラード。より子の優しく包み込むようなヴォーカルが、とうの昔に忘れてしまった熱い気持ちを呼び覚ましてくれる。目標を諦めかけている人、自信を失いかけた人に向けた、最高の応援歌。

労働歌として歌い継がれてきた、波の音と三線の音色で始まるイントロが美しい、かの有名な沖縄民謡のカヴァー。レコーディングはこの歌の発祥の地である竹富島で行なったとのことで、曲に対する深い思い入れが感じられる。目を閉じると青く美しい海が浮かんでくるような、情感のこもった歌声は圧巻の一言だ。

より子が自身の母親に送った、ごく私的な曲。“ずっと今まであなたに支えられてきたから 今度は私があなたを支える”と、母への感謝と愛情をストレートな言葉で表現した、とても明るいポップ・ナンバー。ウキウキと弾むようなより子のヴォーカルが、母への愛情の深さを感じさせ、聴いているこちらも幸せな気分になれる。

ピアノとアコースティック・ギターの音色が美しい、さわやかなポップ・ナンバー。曲が進むにつれて徐々に感情が高ぶっていくようなより子のヴォーカルが象徴するように、愚直なまでに真っ直ぐなイメージの楽曲。“もっと僕に触ってよ それだけで いいから”というストレートな歌詞に、心から勇気づけられる。

レコーディングを行なった教会の雰囲気が伝わってくるような、荘厳な風景を想像させられるスロー・テンポのナンバー。タイトルにある“あなた”はより子がこれまでに生み出してきた曲たちを指すとのこと。彼女が自分の作品に対して（つまりこれまでの自身の人生に対して）慈しむような感情を抱いていることが伝わってくるようだ。

元SIAM SHADEのギタリストのDAITAが参加した、より子にしてはハードな印象のロック・ナンバーで、より子いわく「最高に自分らしい曲」。喜怒哀楽すべての感情をストレートな言葉に乗せて、一気に爆発させたような歌い方は、“自分は変われる”というアルバム全体を通してのテーマが込められている。

傑作アルバム『Cocoon』のラストを飾るにふさわしい、落ち着いた雰囲気の美しい楽曲。より子の頭にふと浮かんだ空想の世界を描いたという詩のようなリリックが、幻想的なメロディに乗ってファンタジーな世界観を打ち出している。ラストで挿入される雨の音を聴くと、胸を締め付けられるような切ない気持ちにさせられるナンバーだ。