ミニ・レビュー
2MC+1DJのヒップホップ・ユニット、HOME MADE 家族のファースト・アルバム。個性あふれる2MCはもちろん、ヒップホップの枠にとらわれないブレイクビーツが気持ちEッ! ドキャッチーな曲の連続。インディ時代の人気曲(15)もニュー・ヴァージョンで収録。
ガイドコメント
待望の1stアルバム。MICRO、KURO、DJ U-ICHIという3人の個性が生み出す、これぞ“HOME MADE 家族サウンド”といった感じの最高の仕上がりで、まさに彼らの今が詰まった渾身の1枚といえる。
収録曲
01It's da 大・中・SHOW!!!
バスドラがドンドン響いてくる底抜けに明るい準備体操。どうすればフロアを熱くできるのか? その問いに対しての答えのような曲。いくつものフロアを沸かせてきたHOME MADE 家族ならではの、アルバム『ROCK THE WORLD』のオープニング・チューン。
02HOME PARTY
パーティ・ラップの真髄。力強いライムでもHOME MADE 家族のあおりはやさしく明るい。家族が催すパーティは老若男女、誰でも楽しめる「HOME PARTY」なんだ!! という思いがガンガン伝わってくるナンバーだ。
03ON THE RUN
思わず体が動いてしまうリズムの出典は、シェリル・リンの「GOT TO BE REAL」。キレイに韻を踏んでいくフロウが、「日本語はラップに合わない&リズム感が悪い日本人」という概念をふっ飛ばしてくれるナンバー。
04アイコトバ
こいつらいい奴! そう絶叫したくなる、ラヴ&ピース精神全開のハッピー・ファンク・チューン。横ノリ必至の激ヤバトラックに乗せて紡がれるポジティヴなメッセージは、この地球上64億人の皆さんに聴いていただきたいほど。
05あすなろの木
フュージョン・ファンもポップス・ファンも小躍りしてしまうようなトラックの使い方に脱帽のナンバー。粒立ちの良いエレピのフレーズは、クロスオーヴァー・ブームを支えたデイヴ・グルーシンの「DUO CREATICS」だ。
06くうねるあそぶ
「くうねるあそぶ!!」のリズムに溶け込んだメロディが耳にまとわりつく、テンポの速い16ビート。サウンドの主は伝説のバンド、ビブラストーンを経て、日本のヨコノリ文化を支える渡辺貴浩。彼のグルーヴがHOME MADE 家族をあおっているナンバー。
07Oooh!家〜! (Extended Ver.)
HOME MADE 家族のMCって5人ぐらいいたっけ? と思わせてしまうような、MICROとKUROの多彩な声の工夫が楽しいファンク・チューン。ファンクの定番ギター・カッティングの後ろで鳴る2人のスキャットは、もうリズムそのものだ。
08恋のデシベル
音楽のキラー・コンテンツといえる「恋愛」に頼らないHOME MADE 家族にしては珍しいラブ・ソング。心地よい夏のフュージョン・サウンドと無垢なリリックは、猥雑なフロアも健全なものに変えてしまうだろう。
09サンキュー!!
大中小のヒップホップ・トリオが日頃のご愛顧に感謝して贈る、あったかラプソディ。持ち味であるダンサブルなビートとアット・ホームなラップを前面に出しつつ、バックにコンサバ・ライクなアコギを効かせる洗練された仕上がり。
10もちろん (持ち論)
珍しく「関係ねぇし」のようなべらんめえ口調で、家族のアイデンティティが語られているナンバー。ただ、日本のヒップホップにありがちなポジティヴを押し売りするような内容ではなく、ステイするリズムが聴き手に考える余地を与えているところがイイ。
11LIVE ON DIRECT pt.3
クラブ・シーンから飛び出したHOME MADE 家族が、フロアの盛り上げ方を実演している曲。細かく変わるビートからはクリス・クロスの「ジャンプ」のフレーズも飛び出す。曲間を楽しませる秀逸な演出の1分41秒。
12Mr.タフガイ
RUN DMCのようにラップの後ろでハード・ロックが鳴っているタフなトラック・ナンバー。HOME MADE 家族の“4人目の家族”ともいえるMASAO“SWING”OKAMOTOのギターとベースが、16ビートを疾走させていく。
13SUMMER TIME MAGIC
シルヴァーズの「ハート・リペア・マン」をサンプリングした、トロピカルな夏を演出するコースト・サウンド風ヒップホップ。ユルめのバカンス感とダンサブルでファンキーなベース・ラインで腰を揺らせるカリブ仕様ナンバー。
14ホメられると伸びるタイプ
アンニュイなトラックにのって「もっと人を褒めろ!!」と啓蒙する、ユーモアにあふれたダブ・チューン。いつまでもKUROとMICROがお互いを褒めあう内容だが、「人の短所は目につきやすい」というフレーズにはドキッとしてしまう。
15HOME SWEET HOME (Reborn)
70年代ソウルの定番リズムにのって、故郷への愛が歌われるインディーズ時代のリテイク・ヴァージョン。ベース・ラインが盆踊り風で、日本人の琴線に触れること間違いなし。「地元」が繰り返される内容も、日本人コンシャスだ。
16Life goes on&on
ブラック・コンテンポラリーのリズムと日本人好みの情緒漂うメロディの融合。ワイヨリカあたりから始まった2000年代の潮流になっているサウンドで、日本のジャーメイン・デュプリともいえる、YANAGIMANプロデュースの美しい作品。