ミニ・レビュー
9枚目だからと『9』と名付けられた、シンプルなアルバム。彼らも9枚目のアルバムをリリースするほどのキャリアを身につけたわけだが、今も変わらず活きのいい、勢いのある作品を生み出し続けている。元気いっぱいのアルバムだ。
ガイドコメント
ジョン・B・チョッパーが復活してから2枚目、通算では9枚目となるアルバム。デビュー以来の持ち味である彼ららしい人柄の良さと温もりが詰まった楽曲が魅力。タイアップ曲3曲を含むJ-POPの王道を行く楽曲が満載。
収録曲
01バカサバイバー
ファンキーなディスコ調のビートに、大阪人気質丸出しのおバカな歌詞が笑わせてくれる一曲。“B”“A”“K”“A”と叫んでも、ビシっと決まるアーティストはなかなかいない。
02ゼンシン・イン・ザ・ストリート
AAP(アホ・アホ・パワー)で前進、前進! 「ウルフルズのテーマ」とサブ・タイトルをつけたくなるような、彼らのポジティヴィティを凝縮した直球勝負のロック・ナンバー。軽快かつ力強いリズムとトータスの底抜けに明るいヴォーカルが、「今日カイシャ行きたくないな〜」「ガッコ行きたくないな〜」なんて朝に、効果てき面!
03歌
歌! 歌! 歌! トータスの魂揺さぶるシャウトに、「歌」へのほとばしる想いが炸裂。筋金入りのバンドマンならではの音楽へのラヴ・ソング。フォーク・ロックとハード・ロックを交差させたドラマティックな構成の中で聴かせる、気迫の演奏に思わず身震い。コミカルさを削いだ真剣勝負のウルフルズに、老若男女惚れ直すこと必至!
04おまえのことさ
振り回されてもあきれても、なんだかんだ言ってアイ・ラブ・ユー……トータスらしい人間味あふれる恋愛劇を描いたコミカルなラヴ・ソング。オーソドックスなロック・サウンドとやっつけ的なメロディが、中期以降のRCサクセションを彷彿とさせる。間の抜けたコーラスと手拍子が良く似合う、なんとも朗らかな仕上がりだ。
05ニャーホホ
50年代の王道ロックンロールそのまんま! 往年の名曲たちに負けず劣らずのメロウな演奏に加え、「ロックの夜明け」当時の質感を再現した入念なサウンドがニクイ。とはいっても、お気楽なリリックと骨抜きの「ニャーホホ」なコーラスは他でもないウルフルズ。模倣の中にもその個性が炸裂する、脅威のナンバーなのだ。
06テラセ!
ダイナマイトな歌唱が、若き日の和田アキ子の迫力を思わせる、シンプルながらも強烈なソウル・ナンバー。軽快なビートに並行するリズミカルなリリックには、ウルフルズらしいユーモアがたっぷり。中間部の歌とも語りともつかぬ、流れるような「関西弁ソウル」は、トータスにしかできない聴かせどころ。
07ブキー
極太のベース・ラインに、トム・ジョーンズばりのメキメキ&セクシーなヴォーカルが映える、王道ファンク・チューン。J-POP離れしたあまりの本格サウンド、でもAAP(アホ・アホ・パワー)炸裂……、これぞウルフルズである。ファンク然とした力強い語感を、遊び心満点の日本語で再現するリリック・センスに脱帽。
08ほら急げ
「ほら急げ! ほらっ!」って、トータスの猛烈シャウトで急かしまくる、しびれっぱなしの疾走ロック。飾らないやけっぱちのサウンドに、80年代の日本のロック・シーンが蘇る。バンド・サウンドの醍醐味である「挑発合戦」的演奏の中で、トータスのヴォーカルをはるかにしのいでハジけてるのは、ケイスケさんの職人技ギター!
09まいどハッピー
「なんも考えへんと行こうやHey」というお気楽なリリックの中に、「トータス的人生哲学」が凝縮した、ハッピーかつ奥深い青空ロック。軽やかに歌うピアノにナチュラル・トーンのエレキがなんとものどか。トータス扮する“歯竹強(はだけつよし)”なる政治家キャラで話題となった、江崎グリコ「ポスカム」CMタイアップでおなじみのナンバー。
10暴れだす (full version)
淡々としたオープニングからサビにかけて、本能的に反応してしまうであろう泣きメロが随所にしこまれ秒殺必至。「大丈夫」との両A面でリリースされた本作は、楽天的な「大丈夫」とは反対に心情を吐露した、雄叫びソング。
11大丈夫
“大丈夫”のワン・フレーズでニコりとさせてくれるウルフルズらしい一曲。奥田民生の楽曲ように肩の力が程好く抜けたミドル・チューンで、思わず一緒に歌いたくなってしまう。2005年リリース。