ミニ・レビュー
小僧然としたルックスとは裏腹に、ビターな声や小粋なアレンジ、絶妙なストリングスで、若年寄ぶりを発揮していたメジャー・デビュー作。本盤は映画『ブリジッド・ジョーンズの日記』主題歌(15)などのボーナス・トラックを加えたスペシャル・エディション。
ガイドコメント
UKジャズ/ロック界期待の星ジェイミー・カラム。彼のデビュー盤に映画『ブリジット・ジョーンズの日記〜きれそうなわたしの12ヶ月』主題歌「エヴァーラスティング・ラヴ」、各国盤のボーナス曲を収録した豪華盤。
収録曲
01WHAT A DIFFERENCE A DAY MADE
“ブルースの女王”といわれたダイナ・ワシントンの最大のヒット曲をカヴァー。記念すべきメジャー・デビュー・アルバムの1曲目に、あえてこの曲を持ってきたのは、本作のリリースがジェイミー・カラムの人生を大きく変えたことを記念してだとか。
02THESE ARE THE DAYS
4歳年上の兄、ベン・カラムのペンになるオリジナル。どこかビリー・ジョエルを思わす渋い歌声とメロディ。ブルージィな雰囲気を漂わせる、いかにも新世代ジャズ・ミュージシャンのジェイミー・カラムらしい1曲といえそうだ。
03SINGIN' IN THE RAIN
ジーン・ケリー主演による傑作ミュージカルの表題曲としておなじみのナンバーを、現代ロック・バラード風のモダンなアレンジで料理。このあたりは、ジャズだけでなくさまざまな音楽から影響を受けているジェイミー・カラムならではの仕上がりといえよう。
04TWENTYSOMETHING
20代になっても世の中の現実を把握できずに、人生にもがいている男を描いた、ジェイミー・カラムのオリジナル。この曲を聴けば、彼がいかに有能で、ジャズの範疇にとらわれないセンスを持ったソングライターであるかが判るだろう。
05BUT FOR NOW
同じピアニスト兼ヴォーカリストということでは、ジェイミー・カラムの大先輩でもあるボブ・ドロウの1966年作品をカヴァー。場末のジャズ・クラブの片隅で爪弾いているような雰囲気の、渋いピアノ・バラードといった感じだ。
06OLD DEVIL MOON
ベティ・カーターやカーメン・マクレー、チェット・ベイカーほかで知られる人気曲。弦楽器による厳かな導入部から一転、スウィンギーなリズムに乗り、カッコよく歌われるナンバーだ。情熱的なエンディングにも注目。
07I COULD HAVE DANCED ALL NIGHT
ジェイミー・カラムが、ほかのジャズ・ミュージシャンと一線を画しているのは、こんな曲を演るからだろう。クラブ・ミュージック風にしたくて、ハービー・ハンコックの『ヘッド・ハンターズ』みたいなグルーヴを取り入れたという。ベース・ラインがとにかくカッコイイ。
08BLAME IT ON MY YOUTH
このうえなくムーディなバラードで、チェット・ベイカーの珠玉の名盤『チェット・ベイカー・シングス』を思わすようなナイーヴな手触りのヴォーカルが何より魅力的だ。加えて、繊細なタッチのピアノもバツグン。
09I GET A KICK OUT OF YOU
ビリー・ホリデイやクリス・コナーなどの名唱で知られるコール・ポーターの名曲を、いかにもジェイミー・カラムらしい情熱的なヴォーカルで熱く歌い上げている。間奏での見事なピアノ・ソロも聴きどころだ。
10ALL AT SEA
ジェイミー・カラム自身が書いたオリジナル。彼はデビュー前に、ピアノ弾きとしてクルーズ船に乗船した経験があるそうだが、この曲は、タイトルそのままに海上で書かれたという。ピアノのタッチも、まるで波の上を漂っているかのように優雅だ。
11WIND CRIES MARY
こんな曲を取り上げるあたりが、新世代ジャズ・ミュージシャンのジェイミー・カラムらしい。オリジナルはジミ・ヘンドリックスで、ジェイミーが13歳の誕生日に手にしたエレキ・ギターで繰り返し演奏した、彼にとってのスタンダード・ナンバー。
12LOVER, YOU SHOULD HAVE COME OVER
アルバム『ジェイミー・カラム』のなかでも、最も異色の部類に入る作品といえるだろう。個性派シンガー・ソングライターで、97年に若くしてこの世を去ったジェフ・バックリィの名盤『グレース』に収められていた曲で、歌詞がとにかく素晴らしい。
13IT'S ABOUT TIME
兄、ベン・カラムのペンになるオリジナル。とてもジャズ・アーティストの作品とは思えない良質のシンガー・ソングライター作品といった感じの曲調やサウンドだ。渋い歌声がメロディをより引き立てている。
14NEXT YEAR, BABY
ジェイミー・カラム自身のペンになるオリジナル。これは男性から女性へ向けたプロポーズの唄だろうか? 曲の中盤で転調し、前半部の穏やかな雰囲気から一変、パーカッション類が加わっての賑やかなムードになるところが洒落ている。
15EVERLASTING LOVE
1968年にラヴ・アフェアというバンドがヒットさせた曲のカヴァー。映画『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』の主題歌としておなじみだったこのヴァージョンを聴いて、ジェイミー・カラムのファンになった人も多いだろう。
16FRONTIN'
ヒップホップではネプチューンズが好きだと語るジェイミー・カラムだが、まさか彼らの曲までカヴァーするとは! この曲は、ネプチューンズに縁のあるアーティストが集結したアルバム『Clones』の中でJAY-Z、ファレルをフィーチャーしていたナンバー。
17CAN'T WE BE FRIENDS?
これも非常にカヴァーの多いジャズ・スタンダード。いかにもジャズっぽい旋律にあふれたこの曲を聴くと、ジャズ・シンガー/ピアニストとしてのジェイミー・カラムの確かな実力のほどを再確認してしまうに違いない。
18HIGH & DRY
いうまでもなく、レディオヘッドの傑作2ndアルバム『ザ・ベンズ』に収められていた曲のカヴァーだが、ジェイミー・カラムは、まるで自分のオリジナルのように見事に演奏している。静かな熱気が伝わってくるようなライヴ・ヴァージョン。
演奏
ジェイミー・カラム(VO,P) ジオフ・ガスコイン(B) セバスチャン・デ・クロム(DS) マルコム・マクファレン(G) ジョン・ホア(TP) ベン・キャッスル(TS) バーナビー・ディッキンソン(TB) 他