ガイドコメント
UKグルーヴ・ロックのルーツと言える伝説のバンド、ザ・ストーン・ローゼズのベスト盤。デビュー時88年のシルヴァートーンからゲフィンまで、両レーベルにまたがる歴史をここに。
収録曲
01I WANNA BE ADORED
「憧れられたい」と、己の願望を包み隠さず表明した歌詞が印象的。その素直すぎる物言いが、甘美なメロディ、しなやかなグルーヴと有機的に合致した名曲だ。彼らの巧拙を超越したバンド・サウンドによる魔法の賜物といえる。全英20位を記録。
02SHE BANGS THE DRUMS
1960年代メロディと80年代グルーヴを組み合わせた革新的ギター・ポップ・ナンバー。89年に登場したこの斬新な作風も、90年代以降にはすっかり定型化。が、ほどよいスピード感ときらめくような清涼感は今なお新鮮だ。
03TEN STOREY LOVE SONG
ビートルズ「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」の一節を拝借したような、サイケ調のイントロでスタート。『セカンド・カミング』収録曲では、メロディがもっとも1作目の作風に近いカラフルなポップ・ナンバーだ。
04WATERFALL
ジャングリーだったりドラッギーだったり、まるで年代ごとに異なるバーズの音楽性をひとまとめにしたようなギター・ポップ・ナンバー。“滝”つながりだろうか、ベース・ラインにはポール・マッカートニーの面影がやや感じられる。
05MADE OF STONE
“画家”ジョン・スクワイアの作風に大きな影響を与えた異能画家、ジャクソン・ポロックの事故死を歌った曲。往年のマージー・ビートを思わせる哀愁漂うメロディで、とくにサビはしばらく脳裏から離れないほどフックが強力だ。
06LOVE SPREADS
70年代ロックを90年代的解釈で再構築した新型ブルース・ロック。レッド・ツェッペリンそのものと評される作風ではあるが、彼らのグルーヴ感覚ゆえに生まれた独創性も散見。キリストの存在を疑問視する歌詞も印象的だ。
07WHAT THE WORLD IS WAITING FOR
左右に配した電気・非電気ギター・リフが、イアンのおぼつかない歌唱を両脇から支える簡素なメロウ・ナンバー。当初はA面で発表される予定が、カップリングの「フールズ・ゴールド」の出来が良すぎてB面曲へと降格した。
08SALLY CINNAMON
甘酸っぱいギター・フレーズと力強く跳ねるリズム隊。その後、より強固な形で提示される“60年代メロディ×80年代ムード”の新世代サウンドがここに見え隠れしている。87年の時点で90年代ロックにひとつの方向性を示した甘美なる名曲。
09FOOLS GOLD
ファンカデリックの影響が色濃いファンク・ナンバー。ジェイムス・ブラウン「ファンキー・ドラマー」を引用したセンスがRUN D.M.C.を驚かせ、後にサンプリング使用までさせた、ローゼズのジャンルレスな魅力の象徴ともいえる1曲だ。
10BEGGING YOU
太く重厚なビートのダンサブル・ナンバー。飛び跳ねてシェイクする強烈なグルーヴに、眠れる衝動もすぐさま覚醒。ビートの基礎土台には、パブリック・エナミー「Fear of a Black Planet」のエッセンスが。
11ELEPHANT STONE
ロックとダンスを一体化した甘美なメロディや忘我のリズムなど、彼らの革新性が集約された鮮やかな1曲だ。ジョンのキレ味たっぷりのギター・カッティングが、太く跳ね回るリズム隊とともに楽曲をぐいぐいと牽引する。
12BREAKING INTO HEAVEN
もう出ないとさえ思われた2作目『セカンド・カミング』のオープニングを飾る、全長11分超の大曲。前半4分は川の音や動物の鳴き声が鳴り響く擬似ジャングル探検。残る後半は、新基軸となるポリリズミックなブルース・ロックへと突入する。
13ONE LOVE
2作目『セカンド・カミング』への伏線となったグルーヴィなシングル曲。「フールズ・ゴールド」をさらにギター・ファンク化したような音世界が展開されており、ジョンのギターもジミ・ヘンドリックスばりに歌っている。
14THIS IS THE ONE
なかなかサビまで到達せず、じわじわともったいつけながらテンションを上昇させてみせるナンバー。焦らした分だけサビでの解放感も増量するドラマティックな曲構成の芸風は、オアシスら以降のバンドへと継承された。
15I AM THE RESURRECTION
前半は、ドラム、ベース、ギターが思い思いに跳ね飛ぶ、コーラスのまばゆいリリカルなギター・ポップ。3分台後半からはジャム・セッションへと場面転換。バンドの太いグルーヴが一気に放出する怒涛のプレイが展開される。