ミニ・レビュー
すっかり静のヴォーカリスト代表といった感のUAだが、本作も極端に起伏の少ない旋律とサウンドで多彩な世界を浮かび上がらせている。フル・アルバムをひとりの人と作る経験がなかった、という彼女が今回選んだのが内橋和久。ナイス・チョイスでした。
ガイドコメント
明るさ、軽やかさ、そしてオーガニックな空気感をトータル・イメージとしたUAの7thアルバム。エレクトロニックとアコースティックが絶妙なバランスをとっているポップ作品に仕上がっている。
収録曲
01The color of empty sky
規則的なエレクトロニカ音と叙情的なアコースティック・サウンドのアンバランスさが心地良い。空の色が変化する時間経過を追うように、サビにむけて盛り上がりをみせる展開も素晴らしく、夜明け時に聴きたい1曲。
02Michi
ゆっくりと呼吸をするように、ひたすらスロー・テンポで起伏の少ない旋律が印象的。オンドマルトノやダクソフォンといった古典楽器のあたたかく懐かしい音色が、幻想的な雰囲気を演出し、全体をやわらかく包み込む。
03Niji
天から降り注ぐような音の応酬に癒される。アフリカの民族音楽を彷彿とさせる打楽器のビートにコミカルなアレンジが加わり、独特の世界観を醸し出しているのも趣き深い。雨の日になぜかワクワクしてしまう気持ちに似ている。
04Moss Stares
エレクトロニック・サウンドを前面に押し出した、オーガニックな空気感漂う楽曲。研ぎ澄まされたウィスパー・ヴォイス、たおやかなアコースティックの音色に耳をすますと、太古からの時の流れを感じられそう。
05Beacon
淡々とした一定のビートと、空中を流れるようなゆったりとしたサウンドのアンサンブルが美しい。思わず口ずさみたくなる日本語のような英語、英語のような日本語、青柳拓次とのツイン・ヴォーカルも新鮮で面白い。
06Tasogare
懐かしさとモダンが同居するUA流ポップ・ソング。歯切れの良いAメロから叙情的なサビ部分までがストーリー性に満ちている。「私は夜だった」にはじまり、昼からたそがれへと変化していく際の情景を描いた歌詞も秀逸。
07Like a soldier ant
葛藤と苦悩、無意識のうちにひとり歩きする恋心を歌ったラブ・ソング。ひたすらに重低音を効かせた重厚なバック・サウンドは、兵隊の行進そのもの。揺れ動く心と平行するようなヴォーカルのハーモニーが美しい。
08Mori
植物や動物たちが共鳴し合うようなアンビエントな作品。序盤に占領していた不穏なエレクトロニック音が消え、オーガニックな雰囲気漂う世界へと展開するさまが興味深い。森に潜む確かな鼓動を感じずにはいられない。