ミニ・レビュー
アヴリル・ラヴィーンの2005年3月の武道館公演の前座に登場したUK新人のファースト。ロバート・プラントの本国での前座も決まっているそうだが、2003年に結成されたばかりとは思えぬほど渋いブルージィなロックンロールを聴かせる。かつてのリーフっぽい。
ガイドコメント
ロンドン出身の4人組バンド、ルースター。タイトなリフと弾力性に富んだリズムを駆使したハードでストレートなスタジアム・ロック・サウンドに、UKらしいメロディックさを兼ね備えた期待のデビュー作だ。
収録曲
01JOYRIDE
迷いのないギターと感動的に盛り上がっていく曲の展開は、まるでアメリカン・ロックのようなストレートさ。どうしてもひねくれた視点から物事を捉えがちなUKロック勢の中で、こういった真っ直ぐさは貴重ともいえる。
02COME GET SOME
UKチャートで7位を獲得したシングル曲。シンプルなギターのリフが中心となって生み出していくグルーヴは、古き良きロックンロールを踏襲しつつも、先進的なアレンジで古くささを感じさせない仕上がりとなっている。
03STANDING IN LINE
ソリッドなカッティングからキラキラと輝くアルペジオと多彩なギターが見せる鋭角的なサウンドのロックンロールは、どことなくローリング・ストーンズを彷彿とさせる。セクシーで退廃的で、カリスマ性に満ちあふれている。
04STARING AT THE SUN
UKチャートで5位を獲得した珠玉のバラード曲。ライヴでシンガロングできるほどキャッチーなメロディとドラマチックな展開は、オアシスを凌駕するほどの完成度。メロディ・メイカーとしての才能を見せつけた一曲だ。
05TO DIE FOR
アコースティック・ギターのクリーンなサウンドを主体に、弾き語り風に聴かせつつも、サビでガッツリ盛り上げて泣かせてくれるのは流石の手腕。激しい雨のように打ちつけるメロディに、涙腺を刺激される。
06YOU'RE SO RIGHT FOR ME
ギュンギュンうなるギターとルーズなリズムが、ゆっくりでありながら確実に練り上げていく音の渦の吸引力は相当なもの。レッド・ツェッペリンなどの70年代ハード・ロックが持つドス黒さに満ちた一曲だ。
07PLATINUM BLIND
パワフルなギター・リフによるゴリゴリとしたサウンドとハイトーンなシャウトは、80年代ハード・ロックを思い起こさせる。下手をするとギャグかネタになりかねないが、彼らの真っ直ぐさゆえにルースターの曲として成立するから不思議なものだ。
08DEEP AND MEANINGLESS
ピアノの音をフィーチャーしたバラード曲。メロディの良さや泣かせどころ満載の良心的な作りは、もはやいうまでもないが、ピアノを導入することでより繊細さが際立った印象。美メロにひたすら酔いしれられる一曲だ。
09ON THE ROAD
ヘヴィなギターが炸裂する、これでもかというほどハード・ロッキンな一曲であるが、ハード・ロックが持つ特有のベタさも含めてパフォーマンスの一部に組み込んでしまう思い切りの良さが、かえって心地良い。
10SHE DON'T MAKE ME FEEL
ストーンズ直系のギター・リフを採り入れつつも、抜けの良いサビで自分たちの味をしっかり聴かせるあたりが何ともニクい。ルーツ・ミュージックに敬意を払いつつも、オリジナルを同居させる構成力の高さに感服だ。
11ANGELS CALLING
どちらかというとアメリカ的なストレートな音楽を聴かせる彼らだが、この曲では実にUKらしいメランコリックなサウンドを展開。陰影のあるメロディと繊細なギターの音がズシンと重く響くが、胸に温かい何かを残してくれる。
12DRAG THE SUNRISE DOWN
彼らには珍しくデジタル・サウンドを導入し、ドラッギーなテイストの曲を展開。ただしサウンド・メイキングにとらわれることなく、あくまでも“メロディを聴かせる”という自分たちのスタイルは崩していない。聴き応えのあるヘヴィな一曲だ。