ミニ・レビュー
イイ意味で図太さの感じられる6作目。過度なアレンジに頼ることなく、楽曲の強さのみで勝負したパワフルな作品だ。ノエルが積極的に作曲に参加したことで、ギャラガー兄弟間の均衡がバランス良く保てた一枚。デビュー10周年を飾るに相応しい快作といえるだろう。
ガイドコメント
2002年にリリースした『ヒーザン・ケミストリー』以来、3年ぶり通算6作目。リアムがヴォーカルを取るポップな曲調の先行シングル「Lyla(ライラ)」を含む、メンバーの自信作だ。
収録曲
01TURN UP THE SUN
アルバム『ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース』の幕開けを飾る、アンディ・ベル作のナンバー。ソフトなギターの音が醸すオアシスらしからぬムードから、じっくりとオアシス節へと移行する展開が技アリ。アウトロも秀逸。
02MACKY FINGERS
淡々と同じビートが刻まれる、オアシス新機軸のローファイ・ナンバー。が、聴く人が聴けば、元ネタがヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「僕は待ち人」であることにすぐ気づく。ノエルのソウルフルな歌唱が新鮮。
03LYLA
爽やかなメロディとリアムの男臭い歌唱との絶妙なミスマッチが生む、オアシス得意のシンガロング・ナンバー。ザック・スターキーが叩くメリハリある8ビートがもたらす躍動感は、それまでのオアシスの曲にはない新味だ。
04LOVE LIKE A BOMB
リアム・ギャラガーとゲム・アーチャーの共作曲。アコースティック・ギター主体の牧歌的なムードから晴れ晴れとしたメロディへと高揚する構成の妙は、“作曲家”リアムの才能が開花間近である証。開放的な好曲だ。
05THE IMPORTANCE OF BEING IDLE
ついに「水戸黄門」まで引用!? と驚かされるイントロだが、憂いあるメロディにはキンクスとラーズの曲を合挽きしたような妙味が。「明日は明日の風が吹く」的歌詞をノエルがファルセット・ヴォイスで歌い上げている。
06THE MEANING OF SOUL
ヨーイ、ドンッ!! で一直線に駆け抜ける2コード・ナンバー。リアムのオレ様キャラ全開の歌詞が、小細工皆無の真っ直ぐなメロディともども痛快。50'sロックンロール風のドラム・サウンドが楽曲のアクセントに。
07GUESS GOD THINKS I'M ABEL
自身の兄弟関係を聖書に登場するケインとアベルの関係になぞらえてみせた歌詞。これには「あのリアムがそんな気の利いた歌詞を!?」と驚かされるはず。終始トラッド・フォーク風の雰囲気だが、最後の最後で一変する。
08PART OF THE QUEUE
ノエルが得意とするアコースティック・ギター主体の熱っぽい曲。が、そこにシャッフル・ビートでアクセントを付けるあたりに成長の跡が。聴くうちにストラングラーズの「ゴールデン・ブラウン」が脳内でシンクロ。
09KEEP THE DREAM ALIVE
夢を追い続けられないまま人生の岐路に向かう男を描いた、ほんのりサイケデリックで、ほのかに苦み走ったミディアム・ナンバー。切ないメロディが哀楽を、リズム隊が生み出す力強いサウンドが喜怒を体現している。
10A BELL WILL RING
ゲム・アーチャーがソングライターとしての本領を発揮したロッキンなナンバーは、ビートルズ『リボルバー』からの影響色が濃い凝ったサウンド。これまでのオアシスの曲がたじろいでしまうほどにポジティヴな歌詞だ。
11LET THERE BE LOVE
ロック・クラシックの風味をあれこれ混合した、オアシス得意の名曲再構築メロウ・ナンバー。ノエルとリアムが一曲を分担して歌うパターンは、オアシス史上、久々の快挙。大げさ紙一重のアレンジが、いかにも彼ら。
12CAN Y'SEE IT NOW? (I CAN SEE IT NOW!!)
センチなメロディを得意とするソングライター、ノエルの裏サイドを全面に出したスペーシーなインスト。これを聴けば、彼がケミカル・ブラザーズやデス・イン・ヴェガスを支持する理由もよく分かる。妙な高揚感が◎。
13SITTING HERE IN SILENCE (ON MY OWN)
おなじみのビートルズ風イントロ……も何も、これは「セクシー・セディ」でしょ、なメランコリック・ナンバー。2分足らずの短い曲ながら、鉄琴を鳴らすなどアレンジ面でひと工夫。でも「セクシー・セディ」だ。