ミニ・レビュー
お得意の昭和歌謡メロディを、スウィートなソウルからファンク、ラテン、ロックンロールなど、曲ごとに変わる多彩なアプローチで聴かせる。特にタイトルにもあるソウル・フィーリングがグッと濃厚になった。本編約72分にDVDも付いて、お腹いっぱいの一枚。
ガイドコメント
ジャンルの垣根もなんのその、ますますなんでもありの7thアルバム(2005年発表)。TVドラマの主題歌『タイガー&ドラゴン』やTOKIOへの提供曲のセルフ・カヴァーなど多彩なヒット曲を収録。
収録曲
[Disc 1]
01男の滑走路
CKB得意の4ビート、ストリングスとホーンが盛り上げるアップ・テンポ・チューン。横山剣の人生観? が歌われているこの曲。この手の詞でもクサくならないのがCKBのカッコ良さ。想像では書けない、心から湧き出てきた詞だろう。
02本牧パレード-eye catch-
「本牧は作曲家ではない部分の俺のパンクな気持ちを掻きたててくれた街」とは横山剣の弁。ヒットは出しても自分たちのスタイルは崩さない、そんな衝動を与えてくれるのが本牧という街。CKBならではのインタールードだ。
03魂拳-Soul Punch-
スクラッチと80年代のブラック・ミュージックを思わせるイントロから一転、津軽三味線のようなリズムへ。夜な夜な繰り広げられるフロアの夜遊び嬢と男たちの闘いは壮絶だ。海千山千のファイトが楽しめる。
04逆輸入ツイスト
ビリー・アイドルが出てきそうなロックンロールだ。ツイストは横浜生まれといわんばかりに「逆輸入」を連発する。ヴォーカルの“湾田釈尊、アズ・ノウン・アズCK”というクレジットが臭うが、深い詮索は無粋だろう。
05京浜狂走曲
クラヴィネットがアレンジの要になっているシャッフル・ナンバー。安定感のあるコーラス・ワークもCKBの懐の深さを感じさせる。開発が続き、変わり続ける京浜地域を見守る横山剣の目はどこまでも寛容だ。
06Sweet Seoul Tripper
バリー・ホワイトが出てきそうな甘いソウルだが、洋楽からたくさんいただきながらも、決してくみしないCKB。韓国旅行の後の心地よい疲れが音にも詞にもよく出ている。CKBはソウルの街にもよく似合う?
0737℃
CKBのディーヴァ・菅原愛子の面目躍如、スローな16ビートのセクシー・ソング。とかくセクシュアルな表現が不得意な日本の作詞家さんたち、CKBを聴くべし。この歌のように日常から、官能的でありたい。
08Loco Loco Sunset Cruise
男のうたた寝を鋭い視点で綴る湘南サウンド。男なら誰しもニヤニヤした寝顔でみるこの手の夢。この曲を聴けば寝なくても、CKBが泡沫の悦楽に導いてくれる。起きた後のフォローも秀逸、やさしくオルガンがスロー・ダウンさせてくれる。
09American Dream
8分音符を打つピアノがたたき出すリズムと、随所に出てくるヴォコーダーが楽しい。アメリカへの憧れとも、失望ともとれる内容。アイロニーもさわやかに感じる、80年代のAORを思わせるワクワクするような曲だ。
10横山自動車
コール&レスポンスのロックンロールで、横山剣のクルマ賛歌。実際の販売店(横山自動車)でのやりとりのような詞も絶好調で、ギターの歪みもエンジン音のようだ。ウィルソン・ピケットの「ナーナナナナー」も聴ける。
11Almond Jerry
速い8ビートで男の苦悩がほとばしる。「山の手野郎」や「猫」よりも手ごわいのは、きっと「透き通る肌」なんだろう。フルートの後ろでバイクが疾走する、シタールも負けていない。CKBが歌う日常は切なくてファンキーだ。
12ロドリゲス兄弟
日本人の琴線に触れやすいスパニッシュ・ナンバー。そこに行かずして世界の音楽を聴かせてくれるCKBは、ワールド・ミュージック・ストアといったところか。連呼される「ロドリゲス様」に感化され、日本の鈴木様、佐藤様も胸を張ろう。
13フジヤマ・キャラバン
CKBの守備範囲の広さを感じて欲しいこの曲、後半は小野瀬雅生のファイアー・バードがうなる。サウンドは拝啓サンタナ様、ブラック・マジック・CKBとでもいったところか。「こんなのもやるんだぜ」と言いたげな曲だ。
14本牧通りのCKB-eye catch-
妙なうめきから始まるインタールード。「すべてのジャンルをこなすぜ」と歌っているが、その通りこの曲はカントリー風。ここまでくるともはやどんなジャンルも黙らせてしまう、最強のポピュラー・バンドといっても過言ではないだろう。
15Transistor Glamour Girl
「カモン」の数を数えたくなる告白ソングだ。「小柄でグラマーな女の子」とは欧米人から見たアジアの女性に対する比喩。サウンドはストレイ・キャッツも真っ青のロカビリーだが、ブロンドよりも黒髪を愛するという横山剣の宣言か?
16Summer Freeze
CKBの失恋ソングは不思議と悲しくない。横山剣の詞は明け透けで無垢だ。だからこそ、サマーにフリーズしてもこのサウンドが気持ちを晴れやかにしてくれるはず。情景が明確に浮かんでくるトロピカル・チューン。
17Chatango Cha Cha Cha
CKBは「チャタンゴ」と称するが、スカ・ビートともいえる和みサウンド。中間部の「ウッ」からシャッフル・リズムに余裕の展開。まじめにふざける大人たちはどこまでも素敵で、「ちゃらんぽらん」も才能だ。
18タイガー&ドラゴン-完全版-
男の友情が歌われている曲。友情なしではここまで来れなかったであろう横山剣の言葉が、聴く者の心を突き刺す。言葉とサウンドは辛らつかもしれないが、ハートはどこまでも優しい。湧き出るヴィブラートが感じさせる包容力は壮大だ。
19本牧埠頭にクルマを捨てないで!-eye catch-
難解なインタールードだ。酔っ払っての録音だろうか? それでも、これだけ崩して弾けるのは、テクニシャンだからこそ。あくまで良い意味でリスナーを裏切りつづけるCKBのたしなみだろう。よれよれでも叫びたかった郷土愛ともいえる。
20流星ドライヴ
小西康陽サウンドにのせてのフェアウェル・ソング。明るく振る舞う様子が描かれるが、切ない思いが込み上げてくるような内容だ。「粋な別れ」とは別れ方としては超ハイ・レヴェル。CKBにしか歌えないだろう。
21California Roll
ひなびたミュート・サックスが癒してくれるシャッフル。ヒューイ・ルイスもよく好んだアレンジだ。故郷を離れてがんばる人たちへ、紆余曲折の中、夢を実現したCKBが贈る応援歌だ。きっとおいしいカリフォルニア巻きなんだろう。
[Disc 2]〈DVD〉
01Honmoku Life Style
02My Standard (PV)