ミニ・レビュー
90年代のポップ・パンク・ブームの中心的存在だったオフスプリングの新曲を1曲含んだベスト・アルバム。3作目の『スマッシュ』から7作目の『スプリンター』までバランスよくピックアップされており、キャッチーで勢いのある曲はどれも絶品だ。
ガイドコメント
オフスプリングの初ベスト盤。3rdアルバム『スマッシュ』から『スプリンター』に至る5作品から厳選された名曲の数々に、新曲も追加収録。まさにファン必携の超強力アイテムといえよう。
収録曲
01CAN'T REPEAT
2005年の『グレイテスト・ヒッツ』に収録された“新曲”。しかしながら、イントロにせよ、サビにせよ、どうにも「ザ・キッズ・アーント・オールライト」を再利用しただけのようなデジャ・ヴ感覚に襲われてしまう曲だ。
02COME OUT AND PLAY (KEEP 'EM SEPARATED)
学校に巣食う暴力を歌ったパンキッシュなナンバー。サーフ・ミュージックを思わせるギター・リフ、ファンクやヒップホップを吸収したリズム感覚など、彼らの定型に固執しない雑食性を象徴したヴァラエティ豊かな曲調だ。
03SELF ESTEEM
自分の友人とも寝てしまう恋人に別れようと言えずにいる主人公が、「自分は馬鹿ではない、自尊心がないだけだ」と、虚しく歌い上げる。冒頭のやけっぱちなコーラスや、ギターを抑えたベース・リフが中心の曲調などが新鮮なナンバーだ。
04GOTTA GET AWAY
パラノイアックな主人公の誇大妄想的独白による歌詞がユニークなロック・ナンバー。イントロの彼の強迫観念を投影するような迫りくる雰囲気のドラミングが秀逸で、その後も不安を掻き立てるようなリフが数珠つなぎに展開していく。
05ALL I WANT
超速のツービートを叩き出すパワフルなドラムと攻撃的なギター・プレイで一気に駆け抜ける2分間。自分らしく生きることへのフラストレーションを爆発させたハードなメロコア。コピーしたバンド・キッズも多いはず。
06GONE AWAY
愛する人の喪失をテーマにしたエモーショナルなナンバーで、自動車事故で失ったデクスターの前妻を歌ったともいわれている。ノリや勢いではなくメロディに比重を置いた伸びやかな曲調は、彼らの活動における転機となった。
07PRETTY FLY (FOR A WHITE GUY)
世界にオフスプの名を轟かせたメガ・ヒット・シングル。ふざけたラップ風の歌い方、黒人ラッパー気取りの白人少年をモチーフにしたユーモラスな歌詞の裏側には、“自分のスタイルを持て”という熱いメッセージが。
08WHY DON'T YOU GET A JOB?
09THE KIDS AREN'T ALRIGHT
気付け薬の効いたような高揚感を備えた、ハイ・テンションで疾走するナンバー。歌詞には生まれ育った土地の惨状を描き、そこで生まれ育つ子供の未来を憂いながら熱唱。ザ・フー「キッズ・アー・オールライト」をもじったタイトルも意味深だ。
10ORIGINAL PRANKSTER
「プリティ・フライ」が反ヒップホップ・ソングだとの誤解を解くためか、ウォーの「ロー・ライダー」を引用するなど、ギャングスタな雰囲気を加味。パーカッシヴなサウンドにフックを満載したエモ・ポップ・ナンバー。
11WANT YOU BAD
開放的でコマーシャルなメロディをストレートなバンド・サウンドで聴かせるポップ・ナンバー。タイトになったサウンドに、彼らの自信もみなぎっている。自分の恋人に成人指定の悪い女になってくれと歌う詞が面白い。
12DEFY YOU
彼らの地元、カリフォルニアを描いた映画『オレンジ・カウンティ』(2002年)のサントラとして提供した曲。どっしりとヘヴィなバンド・サウンドの魅力を押し出した曲調は、後戻りしないことを表明した歌詞ともどもに力強い。
13HIT THAT
いきなり脱力系フレーズで始まるアナログ・シンセが意外。全体的にはエッジの効いたハード・ロックだが、マニアも思わずニヤリとしてしまう遊び心はさすが。“パンク”の範疇でヴァリエーションの広いロックを鳴らしている。
14(CAN'T GET MY) HEAD AROUND YOU
2003年発表の7thアルバム『スプリンター』からのナンバー。メロディックな部分は健在だが、ファニーなエッセンスをいっさい削ぎ落としたシンプルかつ力強いサウンドは、ありそうでなかったオフスプリングの新境地。
15DA HUI
ハワイのプロ・サーファー集団“ダ・フイ”と接する際に注意すべきことを列挙した曲で、サウンドもいたってシンプル。まくし立てるような曲調は、勢いを重視したためか、メロディらしいメロディがないのが特徴的だ。