ガイドコメント
パンクとヒップホップを融合させ、ストリートに根ざしたサウンドで衝撃を与えたビースティー・ボーイズが、86年にリリースした記念すべき1stアルバム。名曲「ファイト・フォー・ユア・ライト」を収録。
収録曲
01ライミン&スティーリン
ブラック・サバスのギター・リフとレッド・ツェッペリンのドラミングを合わせ技で使ったハードコア・ラップ。「アリババと四十人の盗賊!!」と連呼するだけのパートは、シンプルゆえに直に響いて、そこから最高の高揚感をもたらす。
02ザ・ニュー・スタイル
ハードコア・パンクとラップをミックスした文字どおり“新しいスタイル”は、自ら新しいと宣言してしまうところも含めて新しい。銃をチラつかせるギャングスタなリリックに、銃社会を糾弾する数年後の姿は皆無。
03シーズ・クラフティ
レッド・ツェッペリン「オーシャン」を使ったロック色の強いナンバー。ツェッペリンのブルージィな演奏をバックに展開されるラップは、色あせることなく興趣の新鮮味を保持。シャッフル・リズム、ブレイクなどの技巧も効果的だ。
04ポッセ・イン・エフェクト
ロックとヒップホップが融け合い損ねたサウンドは、むやみに使われたエフェクトも含めてミッシング・リンク的な面白さがある。必要以上に悪ぶってみせるリリックのとりとめのなさは、全部計算だったのかも。
05スロウ・ライド
ウォー「ロー・ライダー」からブラスを拝借して作ったホワイト・トラッシュ流ラテン・ヒップホップ。土台にはオールドスクール・スタイルがあれど、チープなTR-808サウンドが加わることで、別種の脱力系グルーヴが誕生した。
06ガールズ
モータウン・ポップスのようなコーラスが楽しめるラップ・ナンバー。曲調そのものはユーモラスだが、性差別全開のリリックは当時からすでに不評。朝から晩まで女のコのことだけを考えて過ごす非モテ男子の妄想が満載だ。
07ファイト・フォー・ユア・ライト
08ノー・スリープ・ティル・ブルックリン
09ポール・リヴィアー
TR-808ドラム・マシンによるビートを逆回転させたトラックが画期的なナンバーで、ストーリーはなぜか西部劇の設定。「ファイト・フォー・ユア・ライト」とは異なる形で、彼らの先鋭性の一端が発揮されている作品。
10ホールド・イット・ナウ、ヒット・イット
クール&ザ・ギャングやジミー・キャスター・バンチなどの定番素材を使った完成度の高いラップ・ナンバー。トラックは作り込まれ、リリックも言いたい放題だが、彼ららしい“はっちゃけた”魅力はやや抑え気味か。
11プラス・モンキー
酒と女の子の話に終始する、うわばみパーティ・ラップ。冒頭からすでに千鳥足なサウンドや三バカ大将ぶりが炸裂のリリックに惑わされるが、楽曲の土台部分には純正ヒップホップの要素が丁寧に据えつけられている。
12スロウ・アンド・ロウ
13タイム・トゥ・ゲット・イル
CCR「ダウン・オン・ザ・コーナー」の使い方が絶妙なオールド・スクール・ナンバー。他にもバリー・ホワイトやレッド・ツェッペリンなどの曲をコラージュ感覚豊かに使い、ジャンルレスな音楽性を鮮明に表出させている。