ミニ・レビュー
今度は“伊”というわけでもないだろうが、ハングルが聴こえてくるかと思うほど、“韓”流的なロマンティック・メロディとサウンド。全世界でのセールスに、海外の一般的音楽嗜好を垣間見る。日本が捨て去りかけている、豊穣な声と濃厚な歌が復権する予兆かも。
ガイドコメント
アメリカ、フランス、スペイン、スイス出身の男性4人からなる実力派ヴォーカル・グループのデビュー・アルバム。フル・オーケストラをバックにゴージャスでエレガントなポップ・ミュージックを楽しませてくれる。
収録曲
01UNBREAK MY HEART (REGRESA A MI)
アメリカを代表するヒットメイカーであるダイアン・ウォーレン作で、女性R&Bシンガーのトニ・ブラクストンが歌って96年に全米No.1となった名バラードのカヴァー。歌詞はスペイン語で、イル・ディーヴォらしい優雅さの中にも、エキゾチックな味わいを加味している点が魅力。
02MAMA
バックストリート・ボーイズやイン・シンクなどを手がけた実績を持つスウェーデンの精鋭たちにより制作されたトラック。ヨーロッパ的な雄大なメロディに、流麗なストリングスの調べを乗せ、包容力たっぷりに歌い上げている。
03NELLA FANTASIA
イタリアが生んだ映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネが映画『ミッション』用に書き上げた名曲をカヴァー。オペラの素養があるイル・ディーヴォならではのエレガントな歌唱は、ホンモノのオペラを観劇しているような錯覚に襲われる。
04パセラ- PASSERタ -
原曲は、イタリアの盲目のカンタウトーレ、アレアンドロ・バルディ。イタリア語によるヴォーカル&ハーモニーが非常によく似合うメロディを持った、力強い名曲だ。特に後半部におけるドラマティックな盛り上がりは最大の聴きどころといえるだろう。
05EVERYTIME I LOOK AT YOU
80年代にピーター・セテラやボニー・タイラーらに楽曲提供していたというアンディ・ヒルとジョン・リードによる作品。そういわれれば、どことなく80年代っぽい、ちょっぴり懐かしい感じのするバラードだ。そんな曲を、イル・ディーヴォはセンシティヴに表現している。
06君を愛して- TI AMERメ -
イタリア語によるドラマティックなナンバーで、雄大なヴォーカル&ハーモニーが、よりいっそう曲調を盛り立てているのが印象深い。4人の声の力が合わさったときのパワーを最も感じさせる作品といえる。
07DENTRO UN ALTRO SI
マイケル・ジャクソンの「ベン」などを書いたイギリスのベテラン・ソングライターによる楽曲をイタリア語でレコーディングした、国際色豊かな作品。イタリア語で歌っていても、メロディからは英米のポップス特有のスムースな魅力が感じられる。
08THE MAN YOU LOVE
スパニッシュ・ギターの伴奏による情感たっぷりの導入部がスペイン語で、サビで英語に変わるという構成の作品。特に、サビのドラマティックなメロディが印象的で、ヒット・ポテンシャルもかなり高い、アルバムのハイライト・チューンのひとつといえる作品。
09FEELINGS
曲を書いているのは、ブリトニー・スピアーズやウエストライフなどでおなじみのヒット・メイカー、ヨルゲン・エロフソン。イタリア語で歌われているせいか、余計にドラマティックなムードを醸し出しているのが印象的だ。
10HOY QUE YA NO ESTAS AQUI
「フィーリング」同様、ヨルゲン・エロフソンのペンによるナンバーだが、こちらはスペイン語で歌われている。静かな前半部から、徐々に熱を帯びていき、後半部ではドラマティックに盛り上がる構成が見事だ。
11SEI PARTE ORMAI DI ME
アトミック・キトゥンやステップスなどで知られるクイズ&ジョセフ・ラロシによるオリジナルで、ストリングスをバックに、朗々と歌われている。こうした荘厳なムードがピタリとはまるのも、イル・ディーヴォならではの魅力といえるだろう。
12MY WAY (A MI MANERA)
ご存じフランク・シナトラの名唱で知られるポピュラー・スタンダードだが、原曲はシャンソン。ここでは、その原曲の良さを活かし、イル・ディーヴォならではの持ち味を存分に発揮したヴァージョンに仕上げている。