ガイドコメント
前作『ミッドナイト・ヴァルチャー』で見せたファンクネスから一転、フォーキーなアプローチでシーンを驚かせた2002年発表の5thアルバム。ストリングスを大胆にフィーチャーしたアコースティック&ダウンビートな音のファンタジー。
収録曲
01ザ・ゴールデン・エイジ
アコースティック・ギターの柔らかい旋律を軸とした、カントリー・テイストを漂わせたスロー・ナンバー。効果的に響く鉄琴の美しい音色と、詩的な世界観をメロウに歌うベックのオーガニックなヴォーカルが心地よい。
02ペイパー・タイガー
つぶやくように淡々と歌うベックのハスキー・ヴォーカルと、ダイナミックなストリングス・アレンジが強い存在感を放つブルージィなナンバー。ギターとストリングスがドラマティックに交錯する終盤の展開は圧巻だ。
03ゲス・アイム・ドゥーイング・ファイン
ダウン・テンポなビートに乗って、アコースティック・ギターの瑞々しい旋律とベックのメロディアスで叙情的なヴォーカルが揺れる美しいナンバー。涼しげなスライド・ギターの音色が華麗さを演出している。
04ロンサム・ティアーズ
冒頭からダイナミックに響く重厚なストリングスとメロウで温かいベックのヴォーカルが織りなす、荘厳なムードが漂うナンバー。変化に富んだストリングス・アレンジは圧巻で、諦念と希望に揺れる心情を巧みに描いている。
05ロスト・コーズ
実験的に作り上げたアコースティックな音楽性でファンを驚かせたアルバム『シー・チェンジ』に収録。アコギを中心としたオーガニックなサウンドのなかに、音響的な試みをもったサイケデリック・フレイヴァーな楽曲。
06エンド・オブ・ザ・デイ
ゆったりとしたビートを刻む硬質なドラムに、優美なメロディを奏でる鍵盤楽器の旋律が折り重なり、“一日の終わり”という穏やかなムードを的確に描写したナンバー。低音を効かせたベックのヴォーカルが力強く響く。
07イッツ・オール・イン・ユア・マインド
「全部きみの思い過ごしさ」と語りかけるように歌う、ベックの穏やかで美しいヴォーカルと静かなアコースティック・ギターの旋律を軸としたナンバー。中盤から重厚なストリングス・アレンジが重なる展開は秀逸。
08ラウンド・ザ・ベンド
ベックの父、デヴィッド・キャンベルによるダイナミックなストリングス・アレンジが神秘的なムードを醸し出すナンバー。ベックの優美かつ叙情的なヴォーカルと相まって、「ここが正念場」という強い精神を的確に表現している。
09オールレディ・デッド
マイナー・コードを多用した美しくも物憂げなアコースティック・ギターのアルペジオと、たおやかでセンシティヴなヴォーカルが織りなす切ないバラード。失った恋への募る想いと深い哀しみがリアルに伝わってくる。
10サンデイ・サン
柔らかくリズムを刻む打楽器音に、軽やかなギターや厳かなピアノのバッキング、きらびやかな鉄琴など、多彩な音色で構成された明るいポスト・ロック・チューン。ベックのたおやかで幻想的な歌声が心に響く。
11リトル・ワン
日々移ろう海に漂う船乗りの姿に自分の人生観を重ね合わせた、叙情詩的な楽曲。ギターとヴォーカルが重苦しい情景を描き出す冒頭から、次第に音数が増えていき、終盤で一気にメロウに転じる劇的な曲展開は圧巻。
12サイド・オブ・ザ・ロード
「過ぎてゆくに任せよう、道の傍らで」というベックらしい諦観を綴った、静謐感漂うフォーキーなナンバー。アコースティック・ギターとエレピの柔らかな音色、ベックの優しく包み込むような歌声が胸に染み入る。
13シップ・イン・ザ・ボトル