ミニ・レビュー
艶ロックを奏でることに定評のある、椿屋四重奏の2作目。妖しく腰に絡みついてくるような詞とメロディが、クセになる魅力を放つ。清涼なようでやや毒を含んだ配音が巧妙。ロマンティックな郷愁風をひゅるり吹かせる憎いカッコよさも併せ持つ。つわもの。
ガイドコメント
甘美で妖艶なメロディが満載された2ndアルバム。ロックのダイナミズムをハードかつロマンティックに進化させた本作は、“光と影”の対比をこれまで以上に大きなスケールで描き出している。
収録曲
01プロローグ
和風なコード進行が特徴的な前作までとは趣をガラッと変え、新境地を開拓したアルバム『薔薇とダイヤモンド』のオープニング曲。「身支度は軽く済ませ」新たな旅路へと向かおうとする心境を綴った詞やギターやスネアの爽快なサウンドが、背中を後押しするように勇気を与えてくれる。
02手つかずの世界
哀愁を感じさせるコード感と歌詞に彼ららしさが表われている1曲。まだ見ぬ幸せや次の迎えを待つのも野暮と思いながらも、他に望みがないほどいとおしい彼。誰もいない場所へ連れ出して欲しいと願う切ない気持ちを、女性の目線で歌っている。
03砂の薔薇
「燃え移るほどそばにいて」という情熱的な歌詞に、唸るベース、歯切れいいギター、ヘヴィなドラムと、グルーヴ感あふれるサウンドが絡み合う妖艶なナンバー。背中に負った薔薇の傷を見せに来る彼女を、ただただ抱きしめてしまう、危うげな男女の関係を描いている。
04螺旋階段
ライヴで盛り上がりそうな、イントロからアッパーなラテン調ファンク・ナンバー。だが、そんな曲調とはうらはらな歌詞が心に突き刺さる。「毎夜彼女を抱くだけで恋とは呼べないかもしれない」という救われない気持ちが渦巻くさまを、“螺旋階段”にたとえて描いている。
05紫陽花
椿屋四重奏らしい、しっとりとした艶っぽいナンバー。去っていった「君」を「紫陽花」にたとえた詞を、ピアノとギターを中心にした音の数が少ないシンプルなサウンドで表現。雨の情景と雫のついた紫陽花が浮かぶような世界観が魅力。
06熱病
シンコペーションを織り交ぜたリズムに自然と体が動き出すナンバー。アップ・テンポではないが、聴いているうちにじわじわと熱くなるようなサウンドが特徴だ。熱帯夜もしくは蜃気楼のような空間と互いを求める彼と彼女の物語を描いている。
07踊り子
シャッフル気味のビートが刻まれる、アップ・テンポなナンバーで、タイトルよろしく、リスナーを踊り子のようにダンスさせてしまう。憎たらしくも惹かれてしまう「君」への切ない気持ちを引きずる、男の心情を巧みに描き出している詞にも注目。
08朱い鳥
女性からの目線で綴られた、彼への報われない愛について歌われた楽曲。「飛んでゆくために 目一杯触れた」という詞が印象的で、相手を愛しく思う心情を曝け出した詞により、迷いと未練に苦しむ彼女の想いをストレートに伝えている。
09君無しじゃいられない
弾むようなリズムについ手拍子で応えたくなるノリノリのナンバー。そこで歌われるタイトルや「ただ無性に君が好きで」という詞は、本来は重みがある言葉ゆえ、かえって軽い感じとらえられそうだが、「君」を「運命」として手に入れたい、というしたたかな願望が見え隠れしている。
10陽炎
アコースティック・ギターでの弾き語りナンバー。過去の自分を思い出し、今現在の自分とどう変わったのだろうかと歌う、中田裕二の心情をストレートに歌っている。ヴァイオリンの音色が哀愁をより漂わせていて、胸にグッと突き刺さる。
仕様
初回のみDVD付内容:紫陽花 (Music Video)