ガイドコメント
グラミー8冠を誇る人気R&Bシンガーのブルーノート移籍第2弾。前作で10年ぶりとなる完全復帰を成し遂げた彼女が初のクリスマス・アルバムに挑戦。抜群の歌唱力による馴染みのナンバーばかりで、安心して聴ける。
収録曲
01FROSTY'S RAG
1951年にナット・キング・コールが歌ってヒットしたスタンダード曲。ここでは5人編成のコンボによるスウィング感たっぷりのラグタイム・ヴァージョンに仕上げられており、アニタの陽気でソウルフルなヴォーカルを聴くことができる。調子っぱずれのピアノとクラリネットがリラックスした雰囲気を醸す楽しいクリスマス・ソングだ。
02CHRISTMAS TIME IS HERE
冒頭からラリー・カールトンのいぶし銀のギターが光るスロー・バラード。アニタのシルキー・ヴォイスがビロードのような聖夜を演出。表現力豊かな彼女のヴォーカルをあらためて知らしめる名唱。ジョー・サンプルのピアノはきわめて繊細で、音もなく降り積もる雪を思わせる。メンバーの呼吸がピタリと一致した名バラードだ。
03I'LL BE HOME FOR CHRISTMAS
1943年にビング・クロスビーがヒットさせたクリスマス・ソング。アニタはコンテンポラリーなジャズに仕立て上げ、ミディアムの軽快なタッチで聴かせる。ジョージ・デューク(ピアノ)からラリー・カールトン(ギター)にバトンタッチされる流麗なソロは聴きモノ。歌入りフュージョンを好む向きには特にオススメ。
04CHRISTMAS FANTASY
アニタとプロデューサー兼キーボード奏者のバリー・イーストモンドによる書き下ろし楽曲。かなわぬ恋の願いをサンタクロースに伝える、ミドル・テンポの切ないラヴ・ソング。キーボード、ベース、ドラムをバックに洗練されたサウンドを展開する。スムース・ジャズにソウルフルなアニタのヴォーカルが乗り、心地よい空間を生み出している。
05GOD REST YE MERRY, GENTLEMEN
1827年頃に書かれた英国のトラディショナルなクリスマス・ソング。ビング・クロスビーやテイク6らがカヴァーする有名曲を、アニタはジャズ・テイストでアレンジ。歌詞の内容はキリスト教的な福音にまつわるもので、演奏からも凛としたテンションを感じることができる。見事なピアノ・ソロを披露しているのはバリー・イーストモンド。
06MOONLIGHT SLEIGHRIDE
スムース・ジャズ・テイストのアニタのオリジナル楽曲。無数の人々の祈りが交錯する、大都会の月夜のクリスマスのイメージさせるアーバンな曲調。幻想的にリピートされるヴォーカルを、ジョー・サンプルのピアノとバリー・イーストモンドのフェンダーローズが色彩豊かに彩る。ネーザン・イーストのベース・ソロも聴きどころ。
07O COME, ALL YE FAITHFUL
1750年頃に書かれたというトラディショナルなクリスマス・ソング。厳かな讃美歌をスケールの大きなジャズにアレンジし、伸びやかなアニタのヴォーカルを最大限にフィーチャー。夜空のオーロラのように美しい演奏はイエロージャケッツの面々によるもの。クリスマスの聖なるイメージを見事なサウンドで具現化した一曲だ。
08FAMILY OF MAN
R&Bを基調とした美しいミドル・バラード。ゴスペルの要素とアーバンなサウンドを融合した、アニタ・ベイカーならでは魅力を詰め込んだ一曲。彼女のソウルフルなヴォーカルは、ブラック・コンテンポラリーの極みともいえるスタイル。アコースティック・ピアノのジョー・サンプルをはじめ、バックのサポート陣も強力だ。
09MY FAVORITE THINGS
ミュージカル『ザ・サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌で、ジャズでは頻繁に取り上げられるスタンダード・ソング。アニタはスキャットを交えたダイナミックなヴォーカルに挑戦、強烈なグルーヴを生む鉄壁のバンド・アンサンブルも聴きごたえ十分だ。底知れぬ魅力を放つ名曲を彼女なりの解釈で歌う意欲的な楽曲に仕上がっている。