ガイドコメント
1976年発表の2枚組アルバム。フィル・スペクターのプロデュースによる独特の分厚いサウンドのスタジオ録音と、ジョージ・ハリスンやクラプトン、キース・ムーンらが参加したライヴ音源を収録。
収録曲
01WOMAN IS THE NIGGER OF THE WORLD
1972年4月に発表されたシングルで、邦題は「女は世界の奴隷か!」。ジョンいわく「世界最初のウーマン・リヴの歌」だが、ニガーという差別用語を使用しアメリカでは放送禁止に。ミディアム・テンポのR&Bで、ジョンの力強い歌を聴ける佳曲。フィル・スペクターのアレンジによる後半のストリングスも印象的。
02SISTERS, O SISTERS
1972年発表のシングル「Woman Is The Nigger Of The World」のカップリング曲。ヨーコの作詞、作曲、ヴォーカルによる作品で、レゲエのリズムで50〜60'sを感じさせるノリのいいポップな曲。フィル・スペクターによる絶妙なストリング・アレンジも聴き逃せない。
03ATTICA STATE
1971年、ニューヨークのアッティカ刑務所で起きた囚人の暴動に対し、9月13日ロックフェラー知事の判断で警察と州兵が非武装の囚人に発砲。この際、32人の囚人と11人の人質となった警備員が死亡。この事件への怒りを綴ったロック・ナンバーで、ヨーコをメイン・ヴォーカルにしたジョンとのデュエット・ソング。
04BORN IN A PRISON
「私たちは監獄で生まれ、監獄で育てられ……」と、人は生まれながら監獄生活を送っているようなものと歌うヨーコの作品。リード・ヴォーカルも彼女だが、ジョンの途中のハモリで楽曲の幅をさらに広げたワルツ調バラード。サックスは、スタン・ブロンステイン。
05NEW YORK CITY
ジョンは1971年9月、永住を決意してイギリスからニューヨークへと渡った。しかし、アメリカ政府は政治的な影響力を恐れ、国外退去を命じることに。そんなニューヨークでのさまざまなエピソードを織り交ぜながら熱い思いを込めたジョンの作品。彼らしい力強いロックンロール。
06SUNDAY BLOODY SUNDAY
「カム・トゥゲザー」にも少し似たこの曲の邦題は「血まみれの日曜日」。1972年1月、英国政府の北アイルランド政策に反対するデモ隊に向けて英国軍が発砲し、13人の市民が死亡。この事件を題材に、政府を痛烈に批判したジョンとヨーコの作品。ジョンのエネルギーに満ちあふれた歌が聴きどころ。
07THE LUCK OF THE IRISH
美しいバラードだが、英国政府の北アイルランド政策を強烈に批判した曲。アイルランドの屈辱の歴史とそれに続いてきた苦痛、また卑劣な英国政府の政策を、ジョンがアイルランドの美しい風景を織り交ぜながら、さらに未来への希望をヨーコが、それぞれに歌うデュエット曲。アイリッシュの血を引くジョンの歌声が心に響く。
08JOHN SINCLAIR
ジョン・シンクレアは、詩人でありロック・バンドのマネージャーだが、若者の思想的ブレーンとしてマークされていたため、2本のマリファナを所持していただけで通常2年のところ、10年の刑を言い渡され投獄。そこで彼の救出支援コンサート用に書き下ろされたのがこの作品。ドブロ・ギターが聴きどころの軽快な曲。
09ANGELA
1970年、元UCLAの助教授で黒人解放運動の女性指導者であるアンジェラ・デイヴィスが逮捕。その彼女に対する不当な弾圧を告発した作品で、緩急が活かされた美しいメロディを持つデュエット曲。ちなみにボブ・ディランとローリング・ストーンズもこの事件をテーマにした作品がある。
10WE'RE ALL WATER
毛沢東、ニクソン大統領、マリリン・モンローら当時の有名人の名前が歌詞に登場。「有名人もお偉いさんも所詮あなたと大した違いはない。我々は川の水であり、巨大な大洋の水。いずれは一緒に蒸発してしまう」のだから、「無駄な争いはやめよう」という反戦歌。ツイン・ドラムによるノリのいいブギウギの作品。
11COLD TURKY
1969年12月、ロンドンのライセアムで行なわれたユニセフのチャリティ・コンサートのライヴ。ジョンの凄いエネルギーを感じる音源で、バンドはヨーコのほか、ジョージ・ハリスン、エリック・クラプトンほか。なお、スタジオ盤は1969年にシングル盤として発表されている。
12DON'T WORRY KYOKO
1969年12月、ロンドンのライセアムで行なわれたユニセフのチャリティ・コンサートのライヴ。ヨーコの独壇場で、前衛的な彼女の世界とロックが融合してまさにヨーコ・ワールド。バンドは、ジョンのほかに、ジョージ・ハリスン、エリック・クラプトンなど。
13WELL (BABY PLEASE DON'T GO)
1971年6月6日、ニューヨークのフィルモア・イーストのフランク・ザッパのライヴにジョンとヨーコが飛び入りした時の曲。リヴァプール時代によく演奏していたというだけありしっかりと歌っているが、そこにオブリガードを入れるザッパのギターも聴きどころ。ヨーコはここでも奇声をあげて盛り上げる。
14LISTEN THE SNOW IS FALLING
ヨーコの作品で、ヴォーカルも彼女。1971年(英1972年)発表のシングル「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」のB面曲でもある。ジョンがギターを務め、ピアノにはニッキー・ホプキンス、ドラムスにジム・ケルトナー、ベースにクラウス・ヴーアマンが参加。雪の降る様子が目に浮かぶような歌詞と心が温まるメロディがいい。
15HAPPY XMAS (WAR IS OVER)
世界中で愛されるクリスマス・ソングの一つ。しかし、他のクリスマス・ソングとの大きな違いは、「君が望めば戦争は終わるよ」というメッセージ。1971年12月に日米で発表。英では楽曲管理会社が“ジョン&ヨーコ”のヨーコをクレジットすることを拒否したため、翌年の発表に。