ミニ・レビュー
くるりといえば“変態+ポップ”な脱力系バンドであったが、この6枚目のアルバムでは、ポップな部分が前面に出ていて、ドロドロした部分は影を潜めている。先行シングルとしてリリースされた(2)(3)(6)(9)は、どれも心に響く。いかにもイギリス録音っぽいサウンド。
ガイドコメント
「Superstar」「赤い電車」などシングル計4曲を収録。レコーディングはロンドンとマサチューセッツで敢行。心弾む、そしてちょっと泣けちゃう、ロックンロール・アルバム。
収録曲
[Disc 1]
01Bus To Finsbury
60年代ブリティッシュ・ビートを踏襲したサウンドから、創造に彩られた時代への情景を感じさせるロックンロール。抑揚が少なく、どこか淡々とした岸田繁の声は、抗うことなく“音を楽しむ”姿勢が見えてくる。
02Baby I Love You
誰もが持つ心の片隅で色褪せない、青春時代の淡い恋が蘇る。流麗で繊細なメロディに乗せて、「Baby I Love You」というストレートな言葉が、純粋で一途な十代の不器用さのようで、甘酸っぱく切ないラブ・ソングだ。
03Superstar (Album Edit)
ごちゃごちゃしたストレスで弱った心に効く特効薬がここに。さらっと深い部分まで染み入るヴォーカルとギターのアンサンブルの精妙さ、躍動的でドラマチックなリズムが爽快感を起こし、この上なく気持ちいい。
04雨上がり
どこかへいってしまった君を想う切ない抒情詩を、哀愁漂うアコースティックの繊細なメロディに乗せて綴っていく。「ずいぶん前を歩いている」という、君との間にできてしまった距離感を示す歌詞には、心情の辛さがひしひしと伝わってくる。
05Tonight Is The Night
ひとりぼっちの夜を歌ったナンバー。「洗剤の匂い 出しっ放しのブラウス 濃紺の世界」という歌詞が、何気ないものから襲われる深い孤独感を見事に表わしている。終盤、ギターの高鳴りが悲痛の叫びのようで痛々しいほどリアルだ。
06Birthday
ステレオから色彩豊かな幸福感が飛び出してくる。軽快なドラム、跳ね回るベース、煌くギター、温かみのあるアコーディオン、透き通ったヴォーカル。どこを切り取っても、鮮明な輝きを見せる珠玉のナンバーだ。
07お祭りわっしょい
くるり流和洋折衷ロックンロール。「わっしょいわっしょい!!」という日本が誇る和の祭り魂に、ハードにうねるエッジの尖ったダイナミックなギターはアメリカン・ハード・ロック・サウンド。このコントラストがユニークなナンバー。
08冬の亡霊
くるりが持つ、音楽への深い探究心をうかがえる1曲。バンジョーやヴァイオリン、オルガンがなすカントリー・サウンドの下敷きにギターが上品に添えられている。カントリーの持つオーガニックな温もりが堪らなく心地よい。
09赤い電車
くるり×京急、夢のコラボが生み出した16thシングル。エレクトロニカ・サウンドのリフレインが、どこまでも続く線路の上を、心地よい揺れとともに走る電車のようだ。聴けば聴くほど味が出る、クセになるナンバー。
10Long Tall Sally
自由奔放なドラムが飛び跳ねる。緩やかに伸びるベース・ラインに、バンジョーとギターが印象的に鳴っている。すべてがバランスよく絡み、濃厚なグルーヴが包み込む。異次元へトリップしそうな感覚に!
11虹色の天使
アグレッシヴなギターが壮絶な疾走感を、弾け飛ぶドラムが身体を躍動させる。理屈なんてない、ありのままの感情を吐き出し、楽器にぶつけ掻き鳴らす2分間のロックンロールは、瞬間の衝動で凝縮されている。
12Ring Ring Ring!
ささくれ立ったロックンロールが鼓膜を刺激する。キンクスのようなギター・サウンドが尖ったリフを突きつけ、ブルース・ハープが鼓動を昂らせる。ラフでストレート、原石のようなロック魂が、堪らなくかっこいい。
13 (It's Only)R'n R Workshop!
美しいコーラス・ワーク、タンバリンやカスタネットが舞う緩やかなリズムは、オールディーズ・ソングを想わせる甘美なメロディに仕上がっている。深みのある包容力を持ち、夢心地の気分にしてくれる。
[Disc 2]〈DVD〉〈QURULI VIDEO CLIPS 2005〉
01Birthday
02Superstar
03赤い電車
04Baby I Love You